あいみょんのラブソングはなぜ多くの共感を呼ぶ? 新曲「マリーゴールド」から紐解く
あいみょんが、8月8日に『マリーゴールド』を発売した。本作表題曲は夏らしいラブソングであり、まだ発売してから間もないが、すでに名曲だという呼び声も高い。
彼女のラブソングにおける表現力の幅広さには驚かされる。好きな人のことを考え鬱屈とする主人公を描いた「愛を伝えたいだとか」や満月の夜に溶け合う二人を官能的に表現した「満月の夜なら」など、これまで様々な視点から恋模様を歌っており、毎度新しい一面を見せてくれるのだ。「マリーゴールド」も、かつて経験した恋を思い出し懐かしむという新たな視点から描いた楽曲となっている。
ストレートなラブソングとも言われることが多い本作。だが、夏の強い日差しを想起させるギターイントロからAメロの爽やかなメロディへと移る曲の流れや、〈風の強さがちょっと/心を揺さぶりすぎて〉という冒頭では、夏の情景を描きながら大事な思い出を蘇らせる様子を情緒的に表しており、サウンドや歌詞の表現力はこれまでよりさらに洗練されている。また、サビにある〈麦わらの帽子の君が/揺れたマリーゴールドに似てる〉というフレーズからも、冒頭と同様に“風”を感じることができる。主人公にとっての“風”は、“君”との思い出を喚起するもので、そこには切ない感情が渦巻いているのだ。季節の風やその匂いから、なにかを思い出した経験は、きっと誰しもが持ちうるものだろう。そういった情景を鮮明に描くことで、聴き手それぞれが様々な思いを馳せながら聴くことができるのだ。
その他にも、幸せな恋模様のなかに〈本当の気持ち全部/吐き出せるほど強くはない〉と不安を吐露したフレーズを忍ばせ、恋愛における陰と陽の要素を歌詞に入れ込んでいるところも見逃せない。誰もが共感し自分に当てはめたくなるような歌詞の普遍性は、彼女の卓越した才能のひとつだろう。