BAD HOPに続くスターは現れるか? 渡辺志保が注目の若手ヒップホップクルーを解説
South Cat
さらに南へと目を向けると、沖縄にはSouth Catと呼ばれるクルーが。すでにKANDYTOWNのIOやKEIJU、DONY JOINTらを送り出したヒップホッププロデュース集団のBCDMGに所属し、第一弾シングル『I think she is』も話題になったYo-Sea、さらに、Yo-Seaとの「Dejavu」や、KANDYTOWNのRyohuが参加した「Purple Rain」といったシングル群も話題の3houseらが所属しており、つい最近もGENKI AMAZINGがMV「TAKE OFF feat. WIT」を発表したばかりだ。
South Catもまた、ラッパーからプロデューサー、映像ディレクターと言った多様な才能を擁するクルーで、名前を挙げた3アーティストともに、アトモスフェリックな雰囲気や、メロディアスな曲調など共通する魅力に溢れており、日本のヒップホップシーンに新たなスタンダードを作り上げそうな勢いである。
HIBRID ENTERTAINMENT
そして、関西には、東京都内での活躍も目覚ましいJIN DOGGを始め、YOUNG YUJIROやDJ BULLSETらによって構成されるHIBRID ENTERTAINMENTがいる。Jin Doggの他にYoung Coco、そしてCz TIGERといった関西出身のMCらのスタイルを、アメリカのサウスにルーツを持つトラップスタイルになぞらえた「Kansai Trap」と呼ぶ向きもあり、これからも西の熱気はもっと全国を覆い尽くしていきそうだ。
個人的なエピソードだが、以前、筆者がアトランタを訪れた際、現地の映像カメラクルーが教えてくれたエピソードがある。彼らが仕事で来日した時に、大阪の路上でたまたま彼らが声をかけたのがYoung Cocoだったそう。そのままYoung Cocoに着いていったら地元のクラブでとんでもなくエネルギッシュな彼のライブパフォーマンスを見ることができて、思わずカメラを回してしまった、と教えてくれた。その映像クルーはMotion Familyといい、普段はレイ・シュリマー「Black Beatles」や2Chainz「Watch Out」のMV、グッチ・メインとのタッグで知られるプロデューサーのゼイトーヴェンのドキュメンタリー映像を撮っているクルーだ。本場のトラップシーンのど真ん中で活躍しているアメリカ人も感嘆する迫力があるのかと、その話を聞いていたく感銘を受けたのだった。
他、HIYADAMやJP THE WAVYらが中心となり結成されたのがMOLTというプロジェクト。彼らはクルーよりもさらに広義の意味を持つコレクティブだと自分たちを分類しており、彼らもコンピレーション的なアルバムを発表したばかり。
前述したNormcore Boyzに直近の目標は? と問うと「自分たちにとってプラスになることや楽しそうなことを前向きにやる。地元お台場のZepp TokyoとZepp Diver Cityを使って、2デイズのワンマンライブがしたいです」と答えてくれた。今年の11月13日にはシーンの先輩格でもあるBAD HOPが初となる武道館公演を予定しており、なんと7,000枚のチケットが発売初日にほぼ売り切れるという日本のヒップホップシーンにおいては前代未聞の記録を打ち立てた。今後も、BAD HOPに続くスターたちが続々と輩出されそうな予感である。
■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
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