クレイジーケンバンドの豊かで奥深い音楽世界を堪能 20年の軌跡辿ったスペシャルなライブ振り返る

CKB、スペシャルライブを振り返る

 ライブ後半からはデビュー20周年にふさわしく、人気曲、ヒット曲、記念碑的な曲が並べられた。まずは「シャリマール」「ドリームランド入口」「中古車」という“車”メドレーでライブ全体のドライブ感をアップさせる。さらにCKBにとって初めてのシングル「せぷてんばぁ」、剣さんが手がけた西原商会(業務用食品卸会社/本公演の協賛会社)のCMをつなげ、「Let’s Go CKB」のジングルを鳴らした後、名曲「タイガー&ドラゴン」を熱唱。永ちゃん(矢沢永吉)&アッコさん(和田アキ子)リスペクトが感じられるボーカルに感じ入っていると、今度は「ルパン三世のテーマ」のカバーで盛り上げる。この節操のなさも最高だ。

 ライブ中盤でもっとも印象に残ったのは、「スージー・ウォンの世界」だった。1970年代のソウルミュージック、1980年代のアシッドジャズがクロスオーバーしたサウンド、東洋的エキゾチズムを感じさせるメロディがひとつになったこの曲が書かれたのは1989年。ロンドンから香港に飛行機で移動しているときにメロディが生まれ、CKBの前身バンド・CK'Sでも演奏していた。当時の剣さんは「音楽をやめて、作曲家に専念しよう」と思っていた時期だったのだが、廣石に「ジムで汗流すのもバンドで歌うのも同じでしょ」と誘われてバンドに参加、そこから紆余曲折がありCKBにつながったのだのだという。剣さんの「この曲は今が完成形。こんなにたくさんの人に聴いてもらって、ちょっと泣きそうになりました」という言葉も心に残った。

 リズム歌謡とフレンチポップとロックンロールが一つになった初期の楽曲「葉山ツイスト」からライブは後半へ。華麗に登場した渚ようことともに昭和歌謡の粋とエレガンスを凝縮させた「かっこいいブーガルー」を披露。観客からのリクエストによる「太陽のモンテカルロ」の後、野宮真貴、m-floがステージに現れ、「Cosmic Night Run」(m-flo loves 野宮真貴&CRAZY KEN BAND)をコラボレーション。そして「GT」「木彫りの龍」という人気曲で本編は終了。剣さんはバイクでステージを走り回り、エンジンをバリバリと鳴らしながらバックヤードへと走り去った。

 アンコールも見どころテンコ盛り。総勢20名以上のストリングス&ホーンセクションともにCKB流の「マイ・ウェイ」と呼ぶべき「男の滑走路」を高らかに歌い上げる。続いて「16、7才のときからバンドやってるんだけど、頭の中にある曲にはいつもオーケストラがいつも鳴っていて。いろいろやってきたんだけど、やっと実現しました!」という剣さんの言葉とともに「横顔」を披露。バート・バカラック、バリー・ホワイトなどを想起させるゴージャスなサウンドとともに響く〈大人になって逢える時まで/わたしを探さないで〉というフレーズは、この日のライブの大きなハイライトだった。

 2度目のアンコールの1曲目はニューアルバムの収録曲「MIDNIGHT BLACK CADILLAC」。実はこの曲、1stアルバム『PUNCH! PUNCH! PUNCH!』の頃から存在していて、剣さん曰く「もっとよくなるだろうと思って取っておいたんですよね。20年前に録ったドラム、ベース、ギター、歌はそのまま残して、ホーン、キーボードをトッピングして完成しました!」というロックンロールナンバー。過去と現在を結びつけるこの曲もまた、この記念すべきライブを象徴していたと思う。

 フルートのリフを軸にしたグルーヴチューン「発光!深夜族」、The Miraclesのカバーから、そのままのコード進行で「空っぽの街角」、そして「Punch!Punch!Punch!」でライブは幕を閉じた。ステージで「音楽やっててよかった!」と叫んだ剣さん。CKBの豊かで奥深い音楽世界をお腹いっぱい味わえた、大充実の3時間40分だった。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

(写真=小河俊哉/岡田友貴/本多亨光)

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