butajiが潜在的に持つ表現力ーーゲストに七尾旅人を迎えたTSUTAYA O-nest公演

butajiの“表現力”にライブでふれた

 シンガーソングライターのbutajiが、8月29日に渋谷・TSUTAYA O-nestにて『「告白」リリースパーティー』を開催した。ゲストには、butajiが事あるたびに敬愛するアーティストとして名を上げていた七尾旅人が出演。七尾もまた、『告白』に数パターンのユニークなコメントを寄せており、互いに敬愛し合う2人の共演が実現した。 

 本公演でのbutajiのライブは、バンドセットによるパフォーマンスだ。メンバーとして、ギターに樺山太地(Taiko Super Kicks)、ベースに山本慶幸(トリプルファイヤー)、キーボードに坂口光央、ドラムに岸田佳也という強力なメンツが揃った。1曲目「I LOVE YOU」では、山本と岸田による芯のある硬質なリズム隊の上をジャジーな坂口のピアノが舞う。さらに、切り込むように樺山の先鋭的なギターが入り、深みのあるサウンドを展開していった。続いてスローなテンポで始まった「奇跡」では、グルーヴィで艶のある演奏を聴かせる。アルバムとは異なるそのアレンジは新鮮で、2曲目にして驚かされるばかり。こうしたバンドならではのアレンジは、ライブに足を運んだ観客へのbutajiなりのサプライズにも思えた。

 アルバムの曲順通りにライブが進み、続いては「秘匿」が披露される。『告白』では、同曲からアルバムの空気が一変するのだが、本公演でもそれは同じだった。琴線に触れるような憂いを帯びたメロディラインとbutajiの絞りだすようなファルセットに、思わず息を飲む。先ほどまで体を揺らしながら聴いていた観客も、動きを止めてじっと演奏に耳を澄ましている。また、butajiの凄さは、歌声だけでなく、彼自身に目を見張るほどの存在感があるところだろう。ステージに立って歌い始めると、まるで一人の男の生々しい独白を聞いているかのような感覚にさえ陥ってしまう。彼が潜在的に持つその表現力は、楽曲の奥行きをより立体的に浮かび上がらせていくのだ。続けて「someday」、「花」、「あかね空の彼方」と珠玉のバラードを披露。会場の空気は緊迫しており、観客はbutajiのパフォーマンスにすっかり呑まれているようだった。

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