小田和正の真摯で誠実な姿勢こそが最大の醍醐味に 『ENCORE!!』ツアー東京公演
自分の音楽が望まれる限り、できるだけ多くの土地を訪れ、できるだけ多くの人に歌を届ける。この日のコンサートから伝わってきたのは、ファンのことを第一に考える、あまりにも真摯な姿勢だった。
小田和正(70)の全国アリーナツアー『明治安田生命 Presents Kazumasa Oda Tour 2018「ENCORE!!」』。5月4日、熊本・グランメッセ熊本でスタートした今回のツアーは21会場48公演で約40万人を動員。ツアーの半ばとなる東京公演(武蔵野の森総合スポーツプラザ)でも彼は、新旧の名曲を惜しげもなく披露。すべての年代のファンを心から満足させる、充実のステージを繰り広げた。
『ENCORE!!』というツアータイトル通り、基本的な構成は2016年のツアー(ベストアルバム『あの日 あの時』を携えた『明治安田生命Presents 「KAZUMASA ODA TOUR2016 君住む街へ」』)を踏襲。さらに約5年ぶりのシングル『この道を / 会いに行く / 坂道を上って / 小さな風景』が加わり、“現在進行形の小田和正”も同時に体感できる内容となっていた。オープニング映像で前回ツアーのMCをふんだんに引用しながら“もう一度会いに行く”という思いをしっかり伝えた後、1曲目は「会いに行く」。〈会いに行く どこにでも その笑顔に会うために〉というフレーズを持つこの曲は、明らかにファンに向けられたものだ。自分自身の表現欲求がなくなったわけではないだろうが、現在の小田のモチベーションはおそらく、“自分の音楽を聴いてくれる人に対して、何ができるか?”というところにある。そのことを端的に示しているのが、「会いに行く」という楽曲なのだ。
アリーナには8の字型に花道が置かれ、小田はその上を移動、楽曲によって歌う位置を変える。つまり、どの席に座っていても小田の姿を間近に感じられるというわけだ。セットリストはまさにオールタイムベスト。ソロとしての代表作「こころ」「たしかなこと」からオフコース時代の名曲「愛を止めないで」「Yes-No」、そしてニューシングルの収録曲まで、ライブ前半からファンが望む楽曲を次々と披露していく。あらゆる時代の楽曲が自然に馴染み、懐かしさ、新しさを越え、すべてが“2018年の小田和正”の表現に集約されていくのだ。おなじみのバンドメンバー(稲葉政裕/Gt、有賀啓雄/Ba、木村万作/Dr、栗尾直樹/Key)と、金原千恵子(Vn)を中心としたカルテットによる演奏も絶品。歌に込められた物語、メッセージに寄り添う演奏はもちろん、卓越したコーラスワーク(メンバー全員、めちゃくちゃ歌が上手い)も大きな聴きどころだ。「今日は長崎の原爆の日。子供の頃、藤山一郎さんの『長崎の鐘』をよく歌っていて(と、実際に『長崎の鐘』の一節を歌ってみせる)」というMCも印象的だった。