w-inds. 橘慶太×KREVA対談【前編】 トラックメイカー視点で語り合う、楽曲制作のテクニック

橘慶太×KREVA対談

KICK THE CAN CREW「千%」はどう作られた?

慶太:ビートはどうやって作ることが多いですか?

KREVA:最近はまずはマシン(Native Instruments Maschine)だね。それで納得いかない時にMPCを通すと、それこそミックス的な観点でも腑に落ちることが多くて。

慶太:なるほど。じゃあマシンのプリセットの音を作って。

KREVA:プリセットからスネアだけ変えたい時はMPC3000に取り込んだり、ちょっとグルーヴが欲しいなって時はまったく同じパターンをMPC3000で組み直して録り直したりとか。そういうのが多いかな。

慶太:じゃあサンプル(既存曲の一部のフレーズ)から音を作ったりはしないんですね。

KREVA:最近はないね。

慶太:前はあったんですか?

KREVA:前はもちろん。でも最近だといわゆるドラムマシンのプリセットの中のフレーズとかコード展開とかから作ってみたり。あとはコード進行集とかループ集とかを買ったり。

慶太:やりやすいし、イメージが湧きやすいですしね。

KREVA:うん。楽しいし、早い。そこから自分で変えていって。

慶太:Pro Toolsで作曲もしてるんですよね。

KREVA:してる。でもMPCを使ってた人からAbleton Live(DAWの一種)がいいよって話をよくされてたから、Pro ToolsからAbleton Liveに移行していこうと思ってたんだけど。俺の制作ペースからすると、Liveの使い方を覚えてる時間があったら6曲はできるなと思って、そのままPro Toolsを使ってる。Studio One(DAWの一種)も買ったけど、同じで。結局早く形にしたいっていうのが大きくてそのままだね。

慶太:ミックスまでされたりもします?

KREVA:俺がミックスまでして世の中に出た曲はほとんどないね。何曲かあるけど、すごい初期のものだから。ソロデビュー曲の「希望の炎」がそうなんだけど、MPCで音を流しながらブースに入って一発録りしたやつだったから、もうそれしか残ってなくて。それをまだデビューが決まってない時にレコード会社の人を呼び止めて聞いてもらったんだよね。だからミックスも何もない、直の音。それが出てるぐらいで、あとはしっかりミックスしてもらってるかな。

慶太:ずっと同じエンジニアさんなんですか?

KREVA:そうだね。KICK THE CAN CREWの時は違う人とやってたけど、最近はずっと同じ人だね。マスタリングのエンジニアさんは結構いろいろ試して。海外に行ったりもしてるね。

慶太:KICK THE CAN CREWといえば、僕、実はずっと聞きたかったことがあったんですけど……「千%」が神がかりすぎていて、聞いた瞬間に衝撃を受けたんです。

KICK THE CAN CREW「千%」MUSIC VIDEO

KREVA:ありがとうございます。嬉しいね。

慶太:曲の中で使われてるあの印象的なサウンドって、サンプリングですか?

KREVA:あれは大元の、こんな感じの曲を作りたいっていうのを先にサンプリングで作ってたわけ。それから、そのサンプリングの元ネタと同じBPMで別の曲を作ってまたサンプリングしたんだよね。

慶太:じゃああれはサンプリングっていっても「千%」のために作った曲でのサンプリングなんですね。

KREVA:自分たちで作った曲のサンプリング。だから自由に使える。

慶太:なるほど。絶対普通のサンプリングでは出ない感じが出ているのにサンプリングっぽくて、なんでこうなるんだろうとずっと思ってました!

KREVA:全部バラバラにパーツごとに曲を録ってるんだよね。

慶太:どうやって作ったか聞いてもいいですか?

KREVA:もちろん。あれはまずサンプルネタの曲から近しいコード進行、本当に欲しいコード進行を導き出して、それに伴って柿崎洋一郎さんに新たに曲を作ってもらった。例えばティンパニーみたいな音が入ってるね、じゃあティンパニーも入れてみようとか。でもティンパニー1発のために生じゃなくてもいいからって、柿崎さんが選んだ素材の音が入ってたりとか。楽器の編成をサンプリングしたって感じかな。なかでも大事にしたのは、そのコード進行の中で柿崎さんに納得がいくメロディのストリングスが出てくるまで作ってもらったこと。そうやって出来上がったストリングスの主なメロディラインに対して女性コーラスに歌を歌ってもらったんだけど、ソウルフルな歌が得意な子だったからフェイクもたくさん録ってそのテイクを残しておいて。それをイントロとか途中にちょっとずつはめていったんだよね。昔のソウルを作ってるみたいな感じだったな。

慶太:めちゃくちゃ手が込んでますね。

KREVA:すごい手がかかってる。ドラムは生ドラムっぽい音が出るStrikeっていうプラグインがあるんだけど、Strikeのフィルだけ使って、キックスネアはそれこそMPCで入れていったりして。なかなか多重的な作業だったね。ベースは最後に直して。

慶太:その作り方はかなりすごいです。

KREVA:一回これができるといろんなことができるし、面白いんじゃないかなって。

慶太:確かに面白い。

KREVA:あと、ピッチを上げた時に出るなんとも言えない高揚感みたいなのがあるじゃん。それが欲しいからオリジナルのBPMを計算して78ぐらいで作って、一気に90くらいまで上げるとあの感じになる。

慶太:そういうことなんですね。天才ですね。

KREVA:あはは。

慶太:僕は今日この話を聞けただけでもう満足です(笑)。

KREVA:そう言ってくれるのもそうだけど、気づいてくれたのがやっぱりすごい嬉しいね。

(※後編に続く)

■KREVA

国民的人気を誇るHIP HOPアーティスト。HIP HOPの殿堂「B-BOY PARK」のMCバトルで3年連続日本一の栄冠に輝く実績を持ち、現在に至るまでその記録は未だに塗り替えられていない。2004年9月08日(クレバの日)に「音色」でソロメジャーデビュー。
2ndアルバム「愛・自分博」でHIP HOPソロアーティストとして史上初のオリコンチャート初登場1位を獲得。リリースされる楽曲は常にチャート上位にランクイン。9月08日は”クレバの日”と日本記念日協会に正式認定される。これまでに23枚のシングルと7枚のオリジナルアルバムをリリース。2018年、新作『存在感』 が8月22日に発売。そして、今年のKREVA主催の”音楽の祭り”『908 FESTIVAL 2018』は、8月31日日本武道館で開催。HIP HOPシーンのみならず、日本の音楽界最重要人物のひとり。

■橘慶太(w-inds.)

1985年12月16日生まれ。福岡県出身。
3人組ダンスボーカルユニットw-inds.のメインボーカリストとして、2001年にシングル『Forever Memories』でデビュー。同年、第43回日本レコード大賞最優秀新人賞に輝く。その17年の活動において、いままでにw-inds.として12枚のオリジナルアルバムと40枚のシングルをリリース。
国内外でそのアーティスト性、パフォーマンス、そしてセールスは高く評価され、デビュー当初より日本のみならずアジア各国で数々の賞を受賞。その活躍は、台湾・香港・韓国・中国・ベトナム・タイ・マレーシアなど東南アジア全域に拡がっている。
2017年、「We Don't Need To Talk Anymore」からは、橘慶太が作詞・作曲・編曲をセルフプロデュースするなど、世界の音楽のトレンドをいち早く取り入れながら、グループ独自の音楽を追求し、常に進化を遂げている。

(構成=久蔵千恵/写真=下屋敷和文)

KREVA『存在感』

■KREVA リリース情報
『存在感』
8月22日(水)発売
【初回限定盤(CD+DVD)】¥2,300(税抜)
【通常盤(CD)】¥1,500(税抜)
※初回限定盤はスペシャルパッケージ(デジパック仕様)
<CD収録曲>
1. INTRO
2. 存在感
3. 俺の好きは狭い
4. 健康
5. 百人一瞬
<DVD収録曲>
1. 存在感 (Music Video)
2. 存在感 (Making)

『存在感』特設サイト

■KREVA ライブ情報
『クレバの日 スペシャルライブ 〜大阪編〜』
9月08日(土) Zepp Osaka Bayside
開場17:45/18:30
1Fスタンディング(スペシャルプレゼント付)¥9,080(税込)
2F指定席(スペシャルプレゼント付)¥9,580(税込)
一般公演チケット発売日:9月1日(土)
お問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00〜18:00)
クレバの日〜大阪編〜特設サイト

KREVAオフィシャルサイト

■KICK THE CAN CREW リリース情報
『住所 feat. 岡村靖幸』
8月29日(水)発売
初回限定盤(2CD)¥2000+税
通常盤(CD)¥1000+税 

<CD収録曲>
1.住所 feat. 岡村靖幸
2.Keep It Up 
3.住所 feat. 岡村靖幸 (Inst.)
4.Keep It Up (Inst.)

<BONUS CD> ※初回限定盤のみ付属
昨年発表した最新アルバム『KICK!』ライブ音源を全曲収録
01. 全員集合
02. 千%
03. 今もSing-along
04. SummerSpot
05. なんでもないDays
06. 完全チェンジTHEワールド
07. また戻っておいで
08. また波を見てる
09. I Hope You Miss Me a Little
10. タコアゲ

KICK THE CAN CREW HP
KICK THE CAN CREW New Single「住所 feat. 岡村靖幸」スペシャルサイト

■w-inds.リリース情報
13th Album『100』(読み方:ワンハンドレッド)
7月4日(水)発売
シングル「Dirty Talk」「Time Has Gone」他を収録

●初回盤 [CD+Blu-ray+スペシャルフォトブックレット(76P予定)]¥4,630+税(税込¥5,000)
※封入特典…「個別サイン会参加券(メンバー事前登録制)」 or 「プレゼント応募券」
※Blu-ray…「Time Has Gone」「Dirty Talk」Music Videoの他、本アルバムに収録する新曲のMusic Videoや撮り下ろしの特典映像を収録予定
●通常盤 [CD Only]¥2,778+税(税込¥3,000)

■w-inds. ライブ情報
『w-inds. LIVE TOUR 2018 “100”』
※終了公演は割愛
9月2日(日)埼⽟・ ⼤宮ソニックホール ⼤ホール OPEN17:00/START18:00
9月7日(金)東京・ 東京国際フォーラム ホールA OPEN17:30/START18:30

w-inds.オフィシャルHP & MOBILE SITE
w-inds."100" Official Instagram

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