ASIAN KUNG-FU GENERATION、『BONES & YAMS』ツアーの音から感じた“揺るぎない自信”

アジカンから感じる“揺るぎない自信”

 ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)が7月11日、東京・新木場STUDIO COASTでライブを行った。

 本公演は、東京・Zepp DiverCityを皮切りに、今年6月からスタートしたツアー『BONES & YAMS』のひとつ。本ツアーは、今年3月にフロントマンの後藤正文(Vo/Gt)選曲でリリースされた、2枚のベストアルバム『BEST HIT AKG Official Bootleg』(通称『骨盤』、『芋盤』)を引っさげてのものである。本公演のセットリストは、この2枚のベストからさらに選りすぐった楽曲で構成されており、最近アジカンを知ったファンが代表曲を網羅する意味でも、コアなファンが後藤の“個人的な思い入れ”を共有する意味でも楽しめる内容となった。

 なお、バンドは宮城や大阪、愛知などを巡り、このSTUDIO COASTで2DAYSを行ったあと、兵庫や静岡を経て7月20日に京都・KBSホールでツアーファイナルを行なっている。

 今回のツアーは、全公演にオープニングアクトとしてニック・ムーン(KYTE)が出演。電飾で覆われたキーボードを操りながら、どこかオリエンタルな風味を感じさせるエレクトロサウンドと、懐かしさと哀愁ただようメロディを披露した。

 ニック・ムーンの演奏が終わり、いよいよアジカンの登場。まずは2016年にリリースされた通算21枚目のシングル表題曲「Right Now」からスタート。セクションごとにリズムが倍になったり半分になったりするドラマティックな展開によって、一気に彼らの世界へと引き込まれる。続く「エントランス」は、1stシングル『未来の破片』(2003年)に収録された、アルバム未収録ながらメンバーお気に入りの楽曲。ファンにとっても特別な曲であり、イントロが奏でられた途端に大きな歓声が上がった。「白に染めろ」(2009年、13thシングル『新世紀のラブソング』収録曲)では、伊地知潔(Dr)のタイトなリズムの上で繰り広げられる、後藤と喜多建介(Gt)の掛け合いによるギターと、その合間を縫うような山田貴洋(Ba)のベースラインが印象的。同期の類いを一切使わず、サポートキーボードのシモリョー(the chef cooks me)と5人で作り上げる鉄壁のアンサンブルからは、バンドの揺るぎない自信をひしひしと感じた。

 アジカンの楽曲は、後藤の伸びやかで朗々としたボーカルと、The BeatlesやOasis、奥田民生の系譜に連なる力強いメロディがまず耳に飛び込んでくるのだが、実は喜多のコーラスワークがかなり重要な役割を担っていることを、ライブを観ながら改めて確信した。特にサビのオクターブユニゾンや、3度、5度を中心としたハモリがメロディのスケールをさらに広げる。たとえば「極楽寺ハートブレイク」(2008年、5thアルバム『サーフ ブンガク カマクラ』収録曲)や「マイクロフォン」(2010年、6thフルアルバム『マジックディスク』収録曲)では、後藤と喜多の声質の違いによるコントラスト(陰影)が、楽曲にさらなる深みを与えていた。

後藤正文
喜多建介
山田貴洋
伊地知潔
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後藤正文
喜多建介
山田貴洋
伊地知潔
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 MCタイムになると、会場のあちこちから声援が飛び交う。見渡すと女性客が多い印象だが、中には熱狂的な男性ファンも混じっているようだ。和気藹々とした雰囲気の中、サーモンピンクのTシャツにグレーのスウェットという、まるで部屋着のような後藤のファッションにもツッコミが入る。

「これ、パジャマではないよ(笑)? でも、上下スウェットとかさ、昔はおじさんぽくてイヤだと思ってたんだけど、やっぱり楽だよね」

 そんな、和やかなやり取りで場をさらに温めたあと、ライブは中盤戦へ突入。プログレッシブなイントロから、幻想的なサウンドスケープへと展開していく16ビートのミドルチューン「サイレン」(2004年、3rdシングル『サイレン』表題曲)は、分数コードを多用したベースラインがつかみどころのない浮遊感を醸し出す。続く「無限グライダー」(2003年、1stフルアルバム『君繋ファイブエム』収録曲)は、タムとスネアを交互に連打するアブストラクトなリズムや、まるで点描画のように音を配置するギターフレーズが印象的。アルペジオの掛け合いからヘビーなリフへと展開していくギターと、引きずるような重たいビートが印象的な「永遠に」(2006年、8thシングル『ワールドアパート』収録曲)や、リズムのアクセントをずらした変則的なベースライン、細かいハットワークが心地よい違和感をかもす「未だ見ぬ明日に」(2008年、2ndミニアルバム『未だ見ぬ明日に』表題曲)など、ギターバンドというフォーマットを用いてポップミュージックを奏でながらも、随所に実験的なアプローチを取り入れる姿勢に痺れた。

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