ゆるふわギャング、88rising、YonYon & SIRUP…日本とアジアのラップミュージック新展開
CIRRRCLE「Talk Too Much」
当たり前に国境を超えているグループという意味で言えば、東京発の国際派ヒップホップクルー、CIRRRCLEも見逃せない。
彼らは神戸出身のシンガー/ラッパー Amiide、アメリカ出身のラッパーJyodan、新潟出身のビートメイカーA.G.Oの3人組。もともとそれぞれ別の形で活動していた3人が出会い、2017年から東京とLAを拠点に活動している。新曲の「Talk Too Much」も2つの拠点で制作された楽曲で、夏らしいリラクシンなサウンドになっている。
ミュージックビデオのダンスも小憎い。「Watch」や「PETTY」など既発曲もミュージックビデオ含めとてもクールな仕上がりになっている。個人的にはリリックの強度がもっとあれば化けると思う。
Yaffle「Summer feat. Linying」
Tokyo Recordings所属のプロデューサー小島裕規によるプロジェクトYaffleの第3弾作品「Summer feat. Linying」もいい。
各国のシンガーやラッパーを迎えているプロジェクトだが、今回の楽曲はシンガポールの女性シンガーソングライターLinying(リンイン)をフィーチャー。00年代のUKガラージや2ステップ、いわば「プレ・ダブステップ」のビートを洒脱にアップデートさせている。
どちらかというとチル方面のEDMのトレンドを取り込んだサウンドだし、Linyingのボーカルもラップと言うより歌に近いので「ラップミュージック」にくくるのはちょっと違うかもしれないけれど、でもやはり東京とアジアのクリエイティブの同時代性という意味では、Tokyo Recordings周辺の動きもやはり刺激的だ。
MOM『クラフトヒップホップCD』
21歳の「ラッパーでもバンドでもない」アーティストMom(マム)も素晴らしい。今年1月に<Ano(t)raks>より1stアルバム『BABY LIKE A PAPERDRIVER』をリリース、先日には文字通り自主制作のCD『クラフトヒップホップCD』をライブ会場と店舗限定でリリースするもあっという間に完売。徐々に注目を集めつつある。
彼のSoundcloudのプロフィール欄には「A$AP MobやOdd Futureなどの若いクルーに強い影響を受ける。インドカレーと小沢健二が好き」とあるのだけれど、たしかに「スカート」や「That Girl」のような曲を聴くと、フューチャーファンク以降のビート、トラップ以降のフロウをベースにしつつ、鋭い日本語のリリシズムを持った表現にトライしていることが伝わってくる。
もしくはヴェイパーウェイヴとシティポップを通過した新しいJ-POP×ラップミュージックの可能性を追求している、と言えるかも。注目すべきセンスだと思う。
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば」/Twitter