NormCore×まふまふは『名探偵コナン』に新風を吹き込む? OP曲「カウントダウン」を分析
週刊少年サンデーの看板作品として、世代を問わず人気を集める青山剛昌原作の推理コミック『名探偵コナン』。TVアニメの放送も今年で23年目を迎え、現在公開中の劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』は興行収入72億円を突破してシリーズ歴代最高記録を塗り替えるなど、いまや国民的アニメの地位を獲得している。それだけにアニメのオープニングおよびエンディングを彩る主題歌も毎回注目を集めるわけだが、この5月よりテレビアニメ版の新オープニングテーマを担当するのが、ボーカリストのFümiを中心とする音楽プロジェクトのNormCoreだ。
NormCoreは、歌唱はもちろん楽曲制作もみずから行うFümi、バイオリニストのTatsu、クラシックギター担当のNatsuからなる3人組。メンバー全員が音楽大学出身というキャリアの持ち主で、声楽やそれぞれの担当楽器のエキスパートが揃うばかりでなく、それらクラシックの素養とアグレッシブなロックの要素を融合させる自由な感性も有している。2017年に本格始動した彼らは、同年11月にTVアニメ『EVIL OR LIVE』(TOKYO MX)のオープニングテーマ「それでも僕は生きている」を発表してメジャーデビュー。今年4月には早くも2ndシングル『傷だらけの僕ら』をリリースし、こちらの表題曲はTVアニメ『一人之下 羅天大ショウ篇』(TOKYO MX)のオープニングテーマに起用されている。
それら2作のアニメ主題歌において、Fümiの超絶ハイトーンボイスを軸にした独自のシンフォニックロックを紡ぎあげてきた彼ら。そのドラマティックかつ激情感溢れる作風は、絶望的な環境でのサバイバルを描いた『EVIL OR LIVE』、登場キャラたちがそれぞれの命運を背負って熱いバトルを繰り広げる『一人之下 羅天大ショウ篇』という両作品の世界観にしっかりと寄り添うものだった。また、それらのアニメ作品が中国原作という縁で制作された「傷だらけの僕ら」の中国語歌唱バージョンMVが、テンセントビデオやビリビリ動画ほか7つの動画配信サイトで公開されて累計約600万回の再生数を記録。中国・杭州で開催されたアニメ音楽イベント『野声季アニメコンサート』に出演するなど、アニメの需要が急激に高まっている中華圏でも着実に支持を広げている。
そのようにアニメ作品とのタイアップ実績を積んできた彼らが、『名探偵コナン』という歴史ある作品のために制作したのが、5月26日放送回より新オープニングテーマとしてオンエアされる新曲「カウントダウン」。しかもこの楽曲、とある注目クリエイターが参加していることでも話題となっている。そのクリエイターの名前は“まふまふ”。動画サイトのシーンから登場し、歌唱から作詞・作曲・編曲・演奏・エンジニアリングまでをひとりでこなすマルチアーティストだ。いわゆるボカロPとして数々の楽曲を制作するほか、自身も歌い手として活動する彼は、昨年10月に発表したメジャーソロアルバム『明日色ワールドエンド』が発売初週にオリコン週間アルバムランキングで2位を獲得するなど、若者を中心に絶大な支持を得ている存在。ソロ以外にも、歌い手のそらると結成したユニット、After the Rainで活動するほか、A応P、風男塾、工藤静香といったアーティストに楽曲を提供するなど、その活躍ぶりは今やネットシーンに留まらないものとなっている。
だが、今回の「カウントダウン」におけるまふまふの起用は、何も話題性を優先したものではない。Fümiとまふまふにはいくつかの共通項があり、それが「カウントダウン」という楽曲を特別なものたらしめているのだ。ひとつめは“高低差のある歌声”。ネットシーンで人気の歌い手には、いわゆる“高音系”と呼ばれる、ハイトーンボイスを特徴に持つ男性が多く存在している。まふまふはその中でもとりわけ高い声の持ち主として知られており、楽曲制作においてもその魅力を引き出すような仕掛け作りを得意としている(特にAfter the Rainの楽曲はイケボ系のそらるとの対照的なデュオが魅力だ)。一方のFümiも、音大時代にバリトン、テノール、ソプラノ、カウンターテナーと、あらゆるパートの声を学んだ逸話を持っており、特に高音域の力強い伸びは絶対的な武器となっている。「カウントダウン」はその持ち味を活かすキー設定がなされており、特にサビ後半の突き抜けるような高音パートは、Fümiだからこそ歌いこなせるものと言えるだろう。