ケイシー・マスグレイヴス、Soccer Mommy、 Caroline Says……心洗われる“歌モノ”新譜5選
エマ・フランク『Ocean AV』

ボーカルの味わいを言葉で表すのは難しいものですが、エマの可憐でしなやかな歌声は、「満たされない」感じがいいですね。淡いピンクを基調とした、哀愁漂うジャケットもそんなイメージを膨らませます。詩情溢れたバックバンドの演奏も秀逸で、とりわけ目を見張るのがアーロン・パークスの奏でる鍵盤と、ジム・ブラックが叩くドラム。メロウな響きと緩急自在なリズムパターンが、楽曲に豊かな表情をもたらしています。リード曲の「Best Friend」に至ってはジャズというより、ドリームポップとか人力エレクトロニカのほうが近い気もしてきますね。
ブルーノ・メジャー『A Song For Every Moon』

さらにアルバム中では、ギタリストとしても味わい深いプレイを披露し、チェット・ベイカーからビョークまで取り上げてきたスタンダード「Like Someone In Love」に斬新な解釈を施すばかりか、心鎮めるピアノバラード「Places We Won’t Walk」まで披露。フォーキーかつソウルフルで、おまけにどの曲もよくできている。このデビュー作にして隙のない感じも、実に今っぽい気がします。ジャズな素養とプロデューサー的資質を兼ね備えているという点では、話題の新鋭トム・ミッシュと並べて語るべき逸材でしょう。最近はUKが熱いですね。
■小熊俊哉
1986年新潟県生まれ。ライター、編集者。洋楽誌『クロスビート』編集部を経て、現在は音楽サイト『Mikiki』に所属。編書に『Jazz The New Chapter』『クワイエット・コーナー 心を静める音楽集』『ポストロック・ディスク・ガイド』など。






















