『高校生RAP選手権』が映し出す、国内ラップシーンの変化 G-HOPEや$ph1Nを例に考える

『高校生RAP選手権』に見るラップの変化

 その傾向は、出場者の操る“フロウ”の変化にも表れている。決勝バトル後にLicaxxxが「日本語ラップのバトルでは、“日本語ラップバトルっぽさ”をいつも感じるものの、今回はUSラップの(国内普及による)影響などで、皆のスタイルがバラバラだったのが面白かった」と振り返ったように、今大会ではトラップ流行後の滑らかなフロウが用いられている場面を確認できた。その一例として、第1ラウンドより「$ph1N vs LITO戦」における1ラインを紹介したい。

$ph1N

 爽やかだけどBoujee “さわやか”あるの富士 俺はレペゼンしてるMt.Fuji まるでMigosみたく“My b**ch is bad and boujee” みたいな感じ お前、俺とバトル後(あと)は無事に帰れない

 この試合のビートに、JP THE WAVY「Cho Wavy De Gomenne」が選ばれたことより$ph1Nは、SALUの<爽やかだけどBoujee>というラインをサンプリング。さらに、地元静岡のチェーン飲食店「さわやか」をピックアップし、Migosの有名なパンチライン<My b**ch is bad and boujee>に繋げた。この一連の流れだけでも目を見張るのだが、ここで特に印象に残ったのが$ph1Nの操る、滑らかで自在なフロウだ。「Cho Wavy De Gomenne」が、トラップ特有のゆったりとしたビートだったことより、JP THE WAVYのフロウにも似たUSラップ寄りの歌い回しを$ph1Nは披露。KOHHやJinmenusagi、さらには清水翔太らが、海外トレンドの吸収に力を注ぐ昨今のHIPHOPシーンだが、その影響力の強さを、今大会における$ph1Nの登場が物語っているのではないだろうか。

 そんな同大会の卒業生であるT-PablowとYZERRを擁し、破竹の勢いを見せているBAD HOPは、昨年9月に初の全国流通作『Mobb Life』をリリース。4月6日にはZepp Tokyoにて、クルー最大規模のワンマンライブ『BAD HOP HOUSE』を開催する。また、第9回大会に出場したちゃんみなも、昨年11月にリリースした2ndアルバム『CHOCOLATE』がヒットを飾るなど、大会出場者の立て続きの音楽リリースとその成功を目にする機会が増えている。

 大会後のインタビューでG-HOPEが、「(出場前に)フリースタイルの練習はせず、音源制作をしていた」と明かし、今後はバトルには出ずに、「現在制作しているEPを4月にリリースするので、そこからは音源制作やライブ活動に力を入れていきたい」と語っていたように、音源のリリースとその成功こそが、ラッパーとして目指すべき目標なのだろう。その橋掛りのひとつに『高校生RAP選手権』への出場があるのだと伺える。今後の『高校生RAP選手権』を経て、どんな若手ラッパーが登場するのか楽しみだ。

(取材・文=青木皓太 / 写真=(C)BSスカパー! BAZOOKA!!! 第13回高校生RAP選手権 in TOKYO)

■放送情報
『BAZOOKA!!! #227』
放送日時:4月16日(月)21:00〜
出演者:【MC】小籔千豊、やべきょうすけ【レギュラーメンバー】くっきー(野性爆弾)、千鳥、Licaxxx、紗蘭
チャンネル:BS スカパー!(BS241/プレミアムサービス 579)
※今大会の模様を放送予定

■関連リンク
『BAZOOKA!!!』公式サイト
『BAZOOKA!!!』公式Twitter

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