星野源が“国民的歌手”となる日ーーNHK朝ドラ『半分、青い。』主題歌起用から探る
家族が一つのテレビの前に集まって番組を楽しむ。その風景が日常だった時代、ヒット曲とテレビの関係性は現代よりも密接に結びついていた。番組主題歌のヒットはもちろんのこと、ゴールデンタイムに放送されていた数々の音楽番組が最新の流行歌を伝える機会として存在し、歌手たちに楽曲披露の機会を与えていた。また、テレビ全盛期には歌だけでなく俳優やタレントとしてマルチに活躍するスターたちが一世を風靡。幅広い世代が楽曲とそれを歌う人物を知る、いわゆる“国民的”な人気や知名度はテレビというメディアが作り上げたものとも言える。
テレビの視聴率低迷や音楽番組の減少が叫ばれる昨今だが、ヒット曲が生まれなくなったというわけではない。動画やSNSなど、インターネットから波及した楽曲も数多く存在する。また、ヒット映画・ドラマ作品の内容とリンクしたタイアップを超えた主題歌が根強い人気を誇るという例も増えてきた。しかし、それらが楽曲単位や局地的な盛り上がりであることも少なくない。国民的人気のある歌手・アーティストであると証明することは、以前にも増して難しくなっていることは間違いないだろう。
そのような中で順調にスターダムをのし上がっているのが星野源だ。自身も出演したドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)ブームから派生した主題歌「恋」の爆発的なヒットを口火に、エッセイ集『いのちの車窓から』の刊行、ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)の主題歌「Family Song」のリリース、ドラマ『コウノドリ』(TBS系)への出演など、様々な分野のヒット作に歌手・文筆家・俳優として関わり、マルチな才能を発揮している。2018年2月には長年愛され続けるアニメ『ドラえもん』を大胆にテーマにしたポップソング「ドラえもん」を発表。『映画 ドラえもん のび太の宝島』の主題歌として書き下されたこの楽曲で、小さな子供を含めたファミリー層にもさらにその名を轟かせることに成功した。
そして、星野源が次に挑むのが 4月2日スタートのNHK連続テレビ小説『半分、青い。』(毎週月~土曜朝8時)の書き下ろし主題歌だ。脚本を北川悦吏子が務めることでも話題の同ドラマは、永野芽郁演じるヒロイン・鈴愛の成長を描いた物語で、人生に立ちはだかるあらゆる壁を持ち前の明るさ・ユニークな発想で乗り越えていくストーリーとのこと。主題歌となる新曲「アイデア」について星野は「オファーを頂き、胸が躍りました。この『アイデア』という曲が、力強く生きる主人公・鈴愛と、いまを生きる皆様の毎朝を支える一曲になればと思います」とコメントしている。
1961年から放送されているNHK連続テレビ小説は「朝ドラ」という一つのブランドを確立し、往年のファンも多い人気ドラマ枠。2000年代以降の作品も最高視聴率20%以上が大半を占めており、朝ドラのヒロイン経験が“国民的女優”と称される上での一つの指標ともされている。その主題歌を務めることもまた、“国民的歌手”であることの一つの到達点と言えるのではないだろうか。
オープニング曲は作品によって歌唱入り・インストゥルメンタルと分かれているが、1990年代以降は歌唱入りの主題歌起用が増加。1990年代のDREAMS COME TRUE(『ひらり』)、井上陽水(『かりん』)、松任谷由実(『春よ、来い』)、山下達郎(『ひまわり』)などからはじまり、2000年代は倉木麻衣(『オードリー』)、Kiroro(『ちゅらさん』)、福山雅治(『わかば』)、森山直太朗(『風のハルカ』)、小田和正(『どんど晴れ』)、竹内まりや(『だんだん』)、アンジェラ・アキ(『つばさ』)、aiko(『ウェルかめ』)、2010年代は平原綾香(『おひさま』)、いきものがかり(『ゲゲゲの女房』)、椎名林檎(『カーネーション』)、SMAP(『梅ちゃん先生』)、HY(『純と愛』)、ゆず(『ごちそうさん』)、絢香(『花子とアン』)、中島みゆき(『マッサン』)、AKB48(『あさが来た』)、宇多田ヒカル(『とと姉ちゃん』)、Mr.Children(『べっぴんさん』)、桑田佳祐(『ひよっこ』)、松たか子(『わろてんか』)など錚々たる顔ぶれが朝ドラ主題歌を飾ってきた。