『妄想道中膝栗氣 〜moso traveling〜』インタビュー
妄想キャリブレーションが語る、47都道府県の旅で開いた新たな扉 話題の“5in1MV”にも迫る
「MVは『おしん』みたいなイメージで(笑)」(水城)
ーー妄キャリには照れ屋さんが多いですね(笑)。それとこの曲は「旅」をコンセプトにしたMVも制作されているとのことで。なんでもメンバーそれぞれ個別の縦型MVを作っていて、それを横一列に並べてもひとつのMVになると伺いましたが。
星野:そうなんですよ。みんな一人旅をしてるところを撮っていただいてMVにしてるんです。撮影が終わったのはまだ私だけなんですけど、頭からつま先まで自分でスタイリングを組むことに挑戦したので、そういう意味でもリアルに私が一人旅をしてるイメージになってると思います。
胡桃沢:推しの子ひとりだけをずっとスマホで見られるわけだから、完全に自分のものじゃないですか。だからファンにとってはうれしいMVだと思います。
星野:5回楽しめるもんね。
桜野:繋げたら一本のMVにもなるし。
星野:じゃあ6回だ! 1曲でこんなに楽しめるなんてすごいね。
ーーちなみに星野さんはどこに行かれたのですか?
星野:川越の小江戸に行ってきました。駄菓子屋さんに行きたいということで菓子屋横丁に行ったり、着物を着させていただいたりして。
ーーほかのみなさんはどんなリクエストをされたのですか?
桜野:私は花とか木のあるところですね。最初は樹海って言ってたんですけどダメって言われて(笑)。もう少しファンシーなところに行く予定です。
ーー樹海は危ないですから(笑)。
水城:私は農家です。おばあちゃんのうちに行って、郷土料理を一緒に食べたり、農作業を手伝ったりして、田舎娘みたいな感じで撮りたいなと思って。『おしん』みたいなイメージで(笑)。
雨宮:私は島みたいなところです。海がキレイなところがいいなあ、おいしいお魚料理が食べたいなあ、釣りがしたいなあって。ゆったり島生活がしたいですね。
胡桃沢:まひるは都心寄りで、神奈川のみなとみらいです。それとまひるの運転でドライブもしたいと言ってて。
星野:うちらもまひるが運転してるところは見たことないもんね。
雨宮:マリカー(「マリオカート」)でしか見たことない。
ーーそれはゲームじゃないですか(笑)。普段よく運転されるんですか?
胡桃沢:おばあちゃんの病院の行き帰りぐらいですね。
星野:やさしいかよ!
桜野:本当にやさしい子なんです(笑)。
胡桃沢:でも高速道路で走った経験はまだ一回しかないので、長旅は難しいかもしれないですけど。
ーー安全運転で気を付けてくださいね。ではここからは新曲について収録順に聞いていきます。まず「Hey Yo!」はシングル曲「激ヤバ∞ボッカーン!」を手掛けたヒゲドライバーさんとDJ'TEKINA//SOMETHINGさんの提供です。
胡桃沢:この曲はメンバーみんなで「次はどんな曲を作りたいか?」という話をしたときに、メンバー全員から「ゴリゴリのEDM」という意見が出たので、じゃあヒゲさんに作ってもらおうということで。
桜野:ヒゲさんの作る音楽が大好きなので、詞曲共にやっていただければということでお願いしました。最高のものができて幸せです!
ーーメジャー以降のEDM路線の集大成的な感じもしますね。
胡桃沢:これは本当にDJさんとかにかけてほしいですね。普通に『ULTRA JAPAN』で聴きたいです(笑)。
星野:それカッコイイなあ。
ーーむしろ妄キャリで『ULTRA JAPAN』に出たらいいじゃないですか。
胡桃沢:出たいですよー!
ーー5曲目の「熱情 '18」は歌謡ファンクみたいなノリがあって、今までとは趣きの異なる大人っぽい曲調です。
桜野:この曲はインディーの頃からお世話になってる利根川(貴之)さんに書いていただきました。利根川さんはいつも妄キャリのライブを見て、私たちに何が必要かを考えて曲を書いてくれるんですけど、今回は私たちの方から「この先もずっと歌っていけるような大人っぽい歌詞の曲」と「ファンのみんなと一緒に歌える曲」というリクエストをしたんですよ。そしたら自分たちが想像してたよりずっと大人っぽい歌詞が届いたのでビックリしました(笑)。
星野:私たちはまだ子供だったんだなと思って(笑)。きっと3年後とか4年後には私たちも熟成してイイ女になって、もっといい感じにお届けできるのかな?
ーーでも歌声にはセクシーさと大人の哀愁が何となく滲み出てますね。
星野:あらっ? 声には出てるみたいで(笑)。
桜野:今回の新曲はどれも難しかったんですけど、この曲は特に音階が細かいので苦労して。リズムの取り方も全体的に難しい曲で大変だったよね。
水城:うん。利根川さんに歌い方とか雰囲気とか細かくディレクションしていただいて。なのでインディー時代を思い出しながら、自由にやるのとはまた違った歌い方で苦戦しました。
ーーそして9曲目の「まじでもういや」はDECO*27さんの書き下ろしということでビックリしました。
桜野:そうですよね〜!
水城:この曲はタイトルからして可愛いよね。
胡桃沢:でもタイトルを発表した時、ファンの方から「何この鬱ソング?」って反応があって。
水城:(可愛らしい声音で)「マジでもうイヤっ!」って感じなのにね。
星野:曲名の最後にハートつけたいくらい!
ーー妄キャリがDECO*27さんに曲を書いてもらうのは今回が初ですね。
桜野:元々みんなDECO*27さんが大好きで、最初に「ボカロPさんに曲を書いてもらうことが決まりました」と知らされたときに「DECO*27さんですか?」って聞いたぐらい好きなんです。私たちDECO*27世代なので。
星野:アムロ世代みたい(笑)。でもわかる!
ーー曲調としては「桜色ダイアリー」でのカワイイ路線を引き継ぐようなキュート&ポップな恋愛ソングで、妄キャリとしては新鮮だったのでは?
桜野:「Hey Yo!」とかとは全然違うので、レコーディングが「まじでもういや」と思うぐらい可愛く歌うように頭を切り替えるのが大変でした(笑)。
胡桃沢:まひるはもともとこういう曲が歌いたかったんですよ。ボカロ曲もずっと聴いてたので、インディーズの頃は歌がボカロっぽくなってしまって、音取りはできても感情を上手く入れることができなかったぐらいで。そういう自分の根源の部分を落としこむことができて、歌録りもすごく気合いが入りました。
「only my railgun」は「妄キャリに所縁のある曲」(桜野)
ーーそして10曲目にはfripSide「only my railgun」のカバーが収録されてます。近年のアニメソングを代表する名曲にしてカバーの定番曲でもありますが、なぜこのタイミングで取り上げたのですか?
桜野:私たちはこれまでにClariSさんの「irony」もカバーさせてもらってるんですけど、海外でライブをやらせていただいた時にアニソンを歌うと盛り上がりがすごいんですよ。それでもう1曲何か歌いたいなと思って、今回みんなでどの曲がいいか候補を出したんです。そしたら3人が「only my railgun」を挙げてて、これはやるしかないということでカバーさせていただきました。
ーーちなみに「only my railgun」を挙げたのはどなたですか?
桜野、星野、胡桃沢:はい!
ーー残りのお二人は?
水城:私は挙げてません。
星野:夢子はまずアニソンを知らないからね(笑)。
水城:『ドラえもん』とか『サザエさん』の曲しかわからない。
胡桃沢:『サザエさん』の曲のEDMカバーとか(笑)。
星野:それはそれでちょっと見てみたいけどね(笑)。
ーー雨宮さんはどんな曲を候補に?
雨宮:私は男性ボーカルの曲を歌いたかったので(UNISON SQUARE GARDENの)「シュガーソングとビターステップ」とか。
胡桃沢:「オリオンをなぞる」とかも歌ってみたい! ユニゾンさんいいよね。
ーーそういう候補がある中で選ばれたのが「only my railgun」ということで。
桜野:この曲はディアステージがバックダンサーでお手伝いしたりしてたので、実は所縁のある曲でもあるんですよ。自分たち用の振り付けをつけてライブするのが楽しみだよね。
星野:個人的には歌詞の<能力(チカラ)>とかの表記もすごく妄キャリっぽいなと思ってて。そういうカッコイイ言葉を並べてみたり、可愛いだけじゃなくて強気なところは合ってる気がします。
ーー11曲目の「妄愛花吹雪」は作詞が利根川さん、作曲がDr.Usuiさんというインディー時代からお馴染みのコンビで、和風の儚いメロディーとドラムンベースが合わさったナンバーです。
桜野:この曲は前にいただいたので、いつ録ったのかも正確には覚えてないんですけど……録った時のこと、覚えてる?
胡桃沢:めっちゃ覚えてる。音階が難しすぎて最後まで探り探りで歌ってたから、レコーディングが終わった後も練習してた記憶がある。
桜野:偉いね。
胡桃沢:いや、みんなしてたじゃん!
桜野:タイトルを発表した時点でファンの方が「この曲利根川さんでしょ?」って言い当ててて。まだ内緒だったのでウフフとしか言えなかったんですけど。
星野:利根川さん節が滲み出てるよね。
ーーインディー時代からの軌跡を感じさせる意味では、ファンにとってうれしい楽曲になっていると思います。そして初回限定盤のCDは既発曲の「back stage」で締め括られますけど、通常盤のCDにはその後に「五線譜」という新曲が追加されてますね。この曲はマジで泣けます。
桜野:エヘヘ、この曲は「back stage」に続いて伊織が作ってくれました。
ーー雨宮さんはどのように作曲されたのですか?
雨宮:河原(健介)さんと一緒に作ったんですけど、私がピアノで河原さんがギターで、鼻歌を歌いながらずーっと長時間……。
雨宮:大変でしたけど何かを作ることは好きなので、また曲を作らせていただけることがうれしかったですし、すごく楽しかったです。
桜野:伊織が仮歌で口ずさんでる音源良かったよね。
雨宮:えっ! あれみんなに送ったっけ?
桜野:もらってないけど伊織に内緒で聴いたんだよ。
雨宮:え〜っ!
水城:伊織は恥ずかしいのか頑なに「みんなには聴かせないで」って言ってたんですけど、自分たちで歌詞を書くにあたってどうしても聴きたくて。それで伊織がインフルエンザで休んでた時にみんなで内緒で聴いたんです。
星野:よっしゃーみんなで聴くぞー! みたいな感じで(笑)。
ーーひどい(笑)。
雨宮:それを聴かれるのが嫌だったから、わざわざピアノのメロに差し替えてたのに……。
胡桃沢:でもその音源が良かったから、私たちもインスピレーションを受けてサビの歌詞とかを書けたので。
桜野:やっぱり肉声には機械では出せない思いが入ってるよね。
ーー作詞は妄想キャリブレーションのみなさんですが、ソロパートの部分は?
星野:ソロパートはそれぞれ自分の過去を自分の言葉で書いてます。
桜野:伊織に「自分の歌うパートは自分の言葉で書いてほしい」という思いがあったので、じゃあ自分のパーソナルなことを書いていこうということになって。自分が妄キャリに出会う前からどう変わっていったのかということを詞にしました。
ーーじゃあソロパートには個人個人の思いが詰まってるんですね。
桜野:こうやって見ると私たち本当に暗い人間なんだなあって思う(笑)。
星野:いやいや、今だから書けることだから。
水城:私はすごくポジティブな気持ちで歌えたけどなあ。
桜野:こないだの富山公演で初めて披露したんですけど、想像してたよりも落ち着いた気持ちで朗らかにパフォーマンスできたので、自分の中でまた印象が変わりましたね。まあ、その曲を歌う前にさんざん泣いたからというのもあると思いますけど(笑)。
ーーこの曲はそれぞれのソロパートがあって、タイトルも「五線譜」ですし、これからもこの5人で歌い続けていく決意みたいなものを感じさせますね。
桜野:うれしいー。この曲はまず「五線譜」というタイトルがベースにあって、ひとりひとり一音というイメージで作りたかったんです。
星野:「五」って入れられて良かったよね。
胡桃沢:しかもこの曲は妄キャリが終わったその先のことも書いてるんですよ。
桜野:別に悲しい話ではないですよ(笑)。
星野:普通に人生の中で、おばあちゃんになってもみたいなことですね。
胡桃沢:これからもこの曲は誰かのもとに残り続けるし、私たちの重なってる気持ちは妄キャリが繋いでくれてて、同じ夢を見れたことはすごく良いことだよっていうのを体現してる曲だと思うんです。この先も誰かがこの曲を聴いた時に妄キャリのことを思い出してくれて、みんなの人生が乗っかってるということが伝わったらいいなって思いますね。
ーー1曲目の「旅は君連れ世は情け」の「旅=人生」というお話にも繋がる素敵な締め括りですね。
星野:いいですよねー。私もいま良い締めだなあと思って、いい曲順だと思います(笑)。
桜野:しゃべればしゃべるほど気づけることがあっていいですね。