滝沢秀明はなぜ『クレイジージャーニー』出演した? 太田省一『テレビとジャニーズ』一部公開
社会学者・文筆家の太田省一が、書籍『テレビとジャニーズ 〜メディアは「アイドルの時代」をどう築いたか?〜』を2月21日に発売した。
『中居正広という生き方』、『SMAPと平成ニッポン』などを著書に持つ同氏の最新刊は、タイトルとおり「テレビとジャニーズ」がテーマ。長きにわたり共に歩んできた「テレビ」と「ジャニーズ」2つの軌跡を追った、現代メディア・アイドル論の最新版となる。
リアルサウンドでは刊行を記念し、同書の「はじめに」パートを公開。滝沢秀明が先日世間を賑わせた「火山探検家」としての一面を最初に取り上げた、『クレイジージャーニー』出演についても触れられている。
はじめに
本書には、WEBメディア「リアルサウンド」で連載のコラム「ジャニーズとテレビ史」の2015年9月から2017年12月分までが収められている。
ジャニーズのテレビ出演の話題をテレビの歴史と絡めながら書いたもので、その時々のテレビとジャニーズの空気感を味わってもらえればと思う。掲載は時系列順になっているが、順番に読んでもらっても、興味の赴くままピックアップして読んでもらっても構わない。さらに書籍化するにあたり、「テレビとジャニーズの55年史」と題した総論を新たに書き下ろし、過去から現在にいたる歴史が一望できるようにした。
テレビとジャニーズの関係は、ますます緊密に、そして興味深いものになっている。それを象徴するような出来事が、今年2018年早々にもあった。『クレイジージャーニー正月SP』(TBS系)にタッキーこと滝沢秀明が出演したことである(2018年1月2日放送)。
『クレイジージャーニー』は、世界各地の極め付きの秘境や危険な地域をわざわざ好んで訪れる「クレイジー」な旅人に密着する紀行バラエティである。深夜の番組でコアなファンも多く、テレビ好きには人気の高い番組である。ただ内容が内容なので、これまで芸能人の旅人はいない。その番組に、滝沢秀明が登場したのだ。しかもただのゲストではなく旅人として。
滝沢は「溶岩湖」と呼ばれるマグマが煮えたぎる火口に魅せられて以来、しばしば世界の火山を訪れている。それはまったくのプライベートなので、周囲の人には知らせてこなかった。この日の番組では、「火山探検家」の肩書がついた滝沢が、バヌアツ共和国の火山を探検する様子に密着していた。
番組の内容は、とにかく面白いものだった。崖がそそり立ち、ガスが充満する危険な場所を超えた果てにたどりついた巨大な溶岩湖。そのすぐ傍に立つ滝沢秀明の映像の迫力もさることながら、周到に準備を重ね、随所で冷静な判断を下す彼の堂に入った姿はとても印象的で、まさに探検家の名にふさわしいものだった。
だが一方で、「あのタッキーが『クレイジージャーニー』に?」と思う人もやはりいるだろう。
滝沢秀明と言えば、2000年前後のジャニーズJr.黄金期の中心的存在であり、2005年のNHK大河ドラマ『義経』では、当時史上最年少で主役を務めた。そしてミュージカル『滝沢歌 舞伎』の主演・演出として、いわばジャニーズの王道を継承するひとりだ。その滝沢が、同じバラ エティでもトーク番組などならまだしも、『クレイジージャーニー』のようなきわめてマニアックな番組に出演することを不思議に感じる人がいてもおかしくない。
しかしそれは、テレビとジャニーズの長い歴史から見れば、実は必然的なことでもある。なぜ、滝沢秀明が『クレイジージャーニー』のようなジャニーズと一見縁のなさそうな番組に出るのか?
その答えは、まずこのすぐ後の総論「テレビとジャニーズの55年史」を読めば、きっとわかってもらえるはずだ。(続きは書籍にて)
■書籍情報
『テレビとジャニーズ 〜メディアは「アイドルの時代」をどう築いたか?〜』
発売:2018年2月21日(水)
価格:¥1,600+税
判型・頁:四六判・248頁
全国書店/Amazonにて発売
<著者プロフィール>
太田省一(おおた・しょういち)/1960年生まれ。社会学者、文筆家。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。専攻は社会学、メディア論、テレビ論。著書に『木村拓哉という生き方』『中居正広という生き方』『社会は笑う・増補版』(ともに青弓社)、『SMAPと平成ニッポン』(光文社)、『ジャニーズの正体』(双葉社)、『芸人最強社会ニッポン』(朝日新聞出版)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(ともに筑摩書房)など。WEBメディア「Real Sound」ではコラム『ジャニーズとテレビ史』を連載。