花澤香菜が手にした“楽曲の新たな解釈” 佐橋佳幸率いる豪華バンドとの一夜を振り返る

花澤香菜が手にした“楽曲の新たな解釈”

 別の角度から驚かされたのは、J-POPの名曲をカバーするコーナーが用意されていたこと。しかも選んだ曲は槇原敬之の「もう恋なんてしない」。毛利が槇原のサポートをしていたり、佐橋が原曲のギターを演奏していたりと、この日の演奏陣にも縁のある楽曲だ。花澤による歌唱は、楽曲により柔らかさと優しさをもたらしていたように思う。

 本編終盤は「25 Hours a Day」、「CALL ME EVERYDAY」、「あたらしいうた」ともう一度ギアを上げる。ここまで聴いてきて、白根と高桑による“初期GREAT3リズム隊”のロックバンド的なアプローチと、堀江の攻めたピアノも、これまでの“ディスティネーションズ”とは違った解釈をもたらした要因であることに気づかされた。

 そして、アンコールはレア曲の目白押し。1曲目の「flattery?」(2ndアルバム『25』収録)は演奏すること自体も稀だが、編成も佐橋がアコギ、堀江がマンドリン、高桑がウッドベースという変則スタイル。定番曲「星空☆ディスティネーション」も、今回のバンドでは各楽器の音が攻めたアレンジに変化していたし、最後はこれまた驚きの「おやすみ、また明日」。フルバンドで盛り上げて終わりではなく、花澤と佐橋の2人でパフォーマンスし、緩やかに幕を閉じるというのも、遊び心の効いた演出だった。

 このように“ディスティネーションズ”とはまた違った形で花澤の魅力を引き出した、豪華演奏陣による一夜限りのコンサートは大成功に終わった。もう一度今回のスーパーバンドを集めるのは、なかなかに骨の折れることだろう。が、やはり一夜限りは勿体ない。できればまたどこかでもう一度、この表現を味わいたいものだ。

(取材・文=中村拓海/撮影=LUCKMAN)

■セットリスト
『花澤香菜 Concert 2018"Spring will come soon"』
1.バースデイ
2.Silent Snow
3.happy endings
4.透明な女の子
5.初恋ノオト
6.ざらざら
7.君がいなくちゃだめなんだ(Acoustic ver.)
8.Trace(Acoustic ver.)
9.ひなたのしらべ
10.夜は伸びる
11.春に愛されるひとに わたしはなりたい
12.もう恋なんてしない [槇原敬之カバー]
13.25 Hours a Day
14.CALL ME EVERYDAY
15.あたらしいうた
En1.flattery?
En2.星空☆ディスティネーション
En3.おやすみ、また明日

■リリース情報
『春に愛されるひとに わたしはなりたい』
発売:2018年2月7日(水)
価格:初回生産限定盤(CD+DVD)¥1,600+税
通常盤(CDのみ)¥1,200+税

<CD収録曲> (全形態共通)
M1:春に愛されるひとに わたしはなりたい
作詞・作曲:水野良樹 編曲:佐橋佳幸
M2:ひなたのしらべ
作詞:花澤香菜 作曲・編曲:佐橋佳幸
M3:夜は伸びる
作詞:花澤香菜 作曲・編曲:佐橋佳幸
M4:春に愛されるひとに わたしはなりたい(Instrumental)

<DVD収録内容>(初回生産限定盤にのみ収録)
M1:春に愛されるひとに わたしはなりたい(Music Clip)

■関連リンク
花澤香菜 オフィシャルサイト

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