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BRAHMANが見せたバンドの本質 小野島大が武道館公演の意義を解く

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 BRAHMANの武道館である。結成23年目にして初の武道館。

 日本武道館と言えば1966年のビートルズ来日公演以来、「聖地」として、ロックファンには特別なハコである。会場の大きさや収容人員からすれば、もっと規模の大きなホールはいくらでもある。費用面の負担や厳しく制定された使用条件もある。禁止事項も多い。会場は古く使い勝手だってよくはない。だがそれでもこのハコでやることが多くのロックバンドにとって目標なのは、歴史と伝統からくる格式の高さがあるからだ。

 とはいえ、苦節何十年で花も嵐も踏み越えてやっと武道館に上り詰めました、みたいな浪花節にBRAHMANはまったく似つかわしくない。彼らは結成23年目にしてなお現在進行形で発展途上で、未来への楽しみと可能性しかない「若手バンド」だと、本サイトのインタビューでも言っていたではないか。これが終着点であるはずがない。公式サイトのBRAHMANのインタビューを読むと、武道館の「特別感」は認めているものの、そこでやることに大きな意味づけはしない(したくない)様子なのは、だから、当然と言えた。

 だが実際に武道館のステージに立ったTOSHI-LOWは、360度包囲の八角形ステージに立ち、深々と頭を下げて「ご来場ありがとうございます」と謝意を述べ「そういう気持ちにさせるんだよ、ここは」と言った。それまでさんざん突っ張ってきたけど、実際に立ったステージは、先輩たちが繋いできた歴史と伝統が折り重なった場所であり、自分たちはそのバトンを受け継いだ末裔であることに否応なく気づかされた、というわけだ。その伝統をここで途切れさせるわけにはいかない。

 先輩たちから伝統を受け継ぎ、次の世代に渡す。自分たちの役割はそれなんだと語っていたのはキース・リチャーズである。これは大衆音楽、大衆芸能というものの本質を突いた発言である。自分は繋ぐ者にすぎない。歳をとるとみなそれに気づくんですよと言ったのは細野晴臣だ。もちろんBRAHMANは彼らよりもずっと若い。だがこの日の最後の楽曲に、最新アルバム『梵唄 -bonbai-』のテーマを象徴する「真善美」を演奏し、観客にバトンを渡したのは、彼らが自らを「繋ぐ者」として規定したことにほかならない。「満月の夕」を、中川敬(ソウルフラワー・ユニオン)や山口洋(ヒートウエイヴ)から歌い継いできたのも同じである。その歌はいずれBRAHMANから後輩たちに歌い継がれていく。ある音楽家は「20年後30年後、自分という存在は忘れ去られても、曲が残って聞き継がれてくれれば本望だ」と言った。歌は死なない。歌とは魂だからだ。音楽家という個人は消えても、魂さえ死ななければ、その音楽の本質は消えずにずっと残り続ける。肉体は滅びても、それを記憶する者がいる限り魂は生きている。それが伝統である。

fhoto by Tsukasa Miyoshi (Showcase)

 多数のゲストを招いた、いわば企画ライブ。フロアの中央に八角形のステージを組み、その周りを12000人の観客が取り囲むコロシアム形式の舞台も、ステージの側面に映像が浮かび上がり、それがプロジェクション・マッピングで天井にも映し出される演出も、お祭り気分を盛り上げる。だがそこはBRAHMANだ。間断なくマシンガンのようにハードな曲が放たれ、終始張り詰めたテンションと爆発的なエネルギーが貫き、祭りの浮かれた緩みがまったくない。スカパラ・ホーンズが水際だったスタイリッシュな動きで湧かせた「怒涛の彼方」も、ハナレグミ・永積タカシが感動的なハーモニーを聴かせた「ナミノウタゲ」も、全体の性急でヒリヒリした緊張の中で違和感なく鳴らされ、ハードな流れは決して途切れなかった。なぜならBRAHMANの本質はレベル・ミュージックであり、それは同時にロックの本質でもあるからだ。それがBRAHMANが先輩から受け取り、後輩たちに渡そうとしているバトンである。

 ライブの最後、「真善美」で高揚しきった空気の中、ステージにひとり残ったTOSHI-LOW。「一度きりの意味をお前が問う番だ」と聴き手に投げかけた瞬間、マイクがステージに落下する音と共に会場が暗転する劇的なエンディング。最後までBRAHMANはかっこよすぎた。正しく、バトンは渡されたのである。

(文=小野島大/写真=Tetsuya Yamakawa(Showcase))

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