村尾泰郎の新譜キュレーション 第17回
StarcrawlerからSuperchunkまで……寒い季節にこそ聞きたいロックンロール新譜5選
一方、No AgeはLAのアートスペース、The Smellを運営しながら活動する2人組。<Sub Pop>から<Drag City>に移籍してリリースする新作『Snares Like a Haircut』は、西海岸ハードコアパンクの遺伝子を受け継いだ轟音渦巻くロックンロールに、突然、アンビエントな音響が挿入されたりと、実験的な音作りで独自の化学反応を生み出していく。プリミティブな爆発力とクールな批評性が同居しているあたりは、Wireに通じるところも。
そして最後は、老舗インディレーベル、<Merge Records>を運営しながら、DIY精神を貫いてきたSuperchunkの4年ぶり新作『What a Time to Be Alive』。2016年の総選挙でトランプ政権になったアメリカに対する怒りや不安を原動力にして生まれた本作は、そうしたネガティブな題材を、パンキッシュで骨太なロックンロールに昇華させている。感情を叩きつけるような激しいビート、ラウドに響き渡るギター、胸が高まるメロディ。すべてがリアルで揺るぎない。USインディーのベテランが見せた底力に、あらためてロックンロールは死んでいないことを確認した。
■村尾泰郎
ロック/映画ライター。雑誌やライナーノート、パンフレットなどで音楽や映画について執筆中。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。