村尾泰郎の新譜キュレーション 第17回
StarcrawlerからSuperchunkまで……寒い季節にこそ聞きたいロックンロール新譜5選
ロックンロールは寒風摩擦みたいなものだと思う。気合いとやせ我慢。寒い季節だからこそ、寒い時代だからこそ、アツいロックンロールを聴くべき。というわけで、今回は欧米のインディーシーンから、ロックンロールのエナジーに満ちた新作を集めてみた。
まずはLAから登場した話題のニューカマー、Starcrawlerのデビューアルバム『Starcrawler』。ギラギラしたギターとドタバタしたドラムは、70年代ロックのハッタリ感を現代に甦らせてグラマラスでパンキッシュ。さらに、バブルガムなポップセンスも持ち合わせている。そんな彼らに惚れ込んでプロデュースを手掛けたのはライアン・アダムス。紅一点のボーカル、アロウ・デ・ワイルドが、蜘蛛のようにひょろりと長い手足を動かしてシャウトする姿もインパクトあり。3月の初来日公演が楽しみだ。
そして3月には、カリフォルニアのローファイ番長、タイ・セガールも来日。今年ソロデビュー10年目を迎えるなかでリリースされた『Freedom’s Goblin』は、ガレージ、サイケ、グラムなど、ロックンロールの旨味がてんこ盛り。好き勝手にやっているようで、ポップに聴かせるワザをしっかりと心得ているのが天才肌を感じさせるところ。マーク・ボランを彷彿させる歌声やコーラスもばっちりキマっていて、StarcrawlerやThe Lemon Twigsの兄貴分的存在としての貫禄を感じさせる快作だ。
ボビー・ギレスピー(Primal Scream)が太鼓判を押すThe Liminanasは、南仏出身の夫婦デュオ。『Shadow People』には、アントン・ニューコム(The Brian Jonestown Massacre)、ピーター・フック(New Order)といった英米のロック勢や、ベルトラン・ベラン、女優のエマニュエル・セニエなどフランス勢がゲストで参加。リバーブを効かせたガレージロックと、フレンチポップ風のアンニュイな女性ボーカルが融合したサウンドはサイケデリックで官能的だ。