SCREEN mode×畑亜貴が考える、等身大の表現「何もないと感じたらそれをそのまま出していい」

スクモ×畑亜貴が考える“等身大の表現”

「役者の時は“勇さん”、素の時は“勇くん”」(畑)

畑:この前、幕張メッセの『「夢色キャスト」DREAM SHOW 2017』のステージで勇くんを見た時に、スクモと違う意味で感動したのね。「あ、ここに役者の勇くんがいるんだ」と思って。ステージを作り上げている勇くんの、演じるという部分にすごく感動したんです。

勇-YOU-:ありがとうございます。

畑:ちゃんと役を演じきって、それでもやっぱりこぼれてくる個性があって、それがスクモにつながっていって、スクモで爆発しているところをまた見たい! と思って、その流れがすごくいいなと。

勇-YOU-:キャラクターを演じて舞台に立つと、SCREEN modeのほうにもいいフィードバックがあるというか、学べる点があるんですよ。僕は自分自身にブランドをつけることがすごく苦手で、SCREEN modeは良くも悪くも素の自分で出ていることが事実としてあって。でも雅友さんと話していて、もうちょっと自分自身にキャラ付けしていくと、ライブに出る時に楽になる……という言い方はおかしいけれど、SCREEN modeとしてのブランドがもっと高まるんじゃないかという話をついこの間していたところです。

雅友:生まれながらにしてのスターというものは、稀にはいるかもしれないけど、ほぼ存在しなくて。スターはなるもの、なんですよね。よく等身大のアーティストっていうけれど、実際に話を聞いたりすると、そういう人たちも意外と等身大じゃないんですよ。だから勇さんはその等身大という言葉に、逆サイドから縛られてるというか。

畑:ふふふふ。

雅友:等身大=本当の自分を出さなきゃいけないという思いが強すぎて、畑さんがいまおっしゃっていたようなことを、僕も思うんですよね。勇は、演じている時のほうが明らかに、オーラからして違うんですよ。

畑:言いたいこと言ってるね(笑)。

雅友:僕が一番イケてないと思うのは……。

勇-YOU-:イケてないとか言うなよ!(笑)。

雅友:ライブのMCで、「勇がやってる○○っていうキャラやってよ」って言うと、ゾーンに入ってないから、びっくりするぐらい似てないんですよ(笑)。そこがもっと結びついてくる必要性があると思うんですよね。まだコントロールできないんですよ。そこが出ると、すごいことになると思うんだけど。

勇-YOU-:うーん、僕のエゴなんですかね。わがままというか。

雅友:だから声優としての勇を見てると、「やっぱり林勇ってちゃんとしてるんだな」と思うんですけど、俺はまだそれを生で見たことがない。

勇-YOU-:はははは!

畑:確かに、役者の時は“勇さん”と呼びたくなって、素の時は“勇くん”みたいな感じになるかも。

雅友:役者としての勇と、等身大の林勇がもっと近づいた時に、君は変わると思う。

勇-YOU-:なるほど。勉強になります。

雅友:『ドラゴンボール』でさ、悟空は最初、どうやって巨大化するかがわかんないじゃん? 今の勇ちゃんはそういう感じだよね。やり方を知らないから、ちっちゃいままみたいな。ベジータはさ、自分の意思ででかくなれるじゃん。ああいう力を持つといいよね。いつでも役者の勇くんのオーラを出せるようになれば。

――それは非常にわかりやすい比喩です(笑)。話をアルバムのほうに戻しますけど、たとえばビッグバンド・ジャズっぽいアレンジの「Tuberose」で<♪シャバダバ~>ってスキャットを歌うのも、今までになかったことじゃないですか。勇さんからすると、あれは演じてるという感覚なんですか?

勇-YOU-:そうですね。この曲は演じてるというか、そっちの意識が強いかもしれない。曲を聴いて「どういうテーマにしようか?」と話し合った時に、最初は「女性口調で女性視点の歌を歌ったらどうだろう?」ということになって。でも、「それだとライブで表現するのが難しいんじゃないか」と議論になって、結局は「誰かに翻弄される恋の歌だったら自分らしく歌えるんじゃないか?」というところに落ち着きました。

――スキャットのところはアドリブですか。

勇-YOU-:アドリブですね。僕、初めて買ったCDがスキャットマン・ジョンなんですよ。<♪ピーパッパッパラッポ>って。

雅友:世代を感じるな。よりによってそこなんだ(笑)。

勇-YOU-:小学校4年生ぐらいだったんですけど、ようやくそれが役に立った(笑)。

畑:(爆笑)このエピソードは出していいの?

雅友:いいと思いますよ(笑)。それは一応知ってたけど、全然関係ないところで<シャバダバ~>って歌ってて、いざ最後のくだりを録ろうとしたら<イエーイ>って歌い出したから、「いや、さっきのシャバダバがいいんじゃない?」とお願いして。

勇-YOU-:そうそう。

――これかっこいいですよ。アダルトでお洒落で。今回、アルバム用の新曲はオールディーズポップスとか、ロックンロール系の曲が多いと思うんです。それがすごくハマってるというか。

雅友:SCREEN modeになってからは、作品との兼ね合いもあるんですけど、かっこいい曲を作るということが多いんですよ。でも僕の作曲家としての資質は、スカっぽい曲(「Jumpin’Now!!」)とか、モータウンぽいロックンロール風(「哀しみRouge」)とか、畑さんと一緒にやる時はむしろそういう曲の方が多いので。ここ何年か、自分の中でもずいぶん偏ってるなということに最近気がついて、今回はタイアップの曲に激しいものが多いので、今後のライブのことも踏まえて、ちょっと可愛いというか明るい曲も入れたいなと思って書きました。必然的に、曲調に合わせて歌詞がドラマチックになっていった部分もあると思うので、勇も演じるというスタンスで歌いやすかったかもしれないですね。今までだと、自分の内面について説明するみたいな曲がアルバム曲には多かったんですけど、今回は振り切れたというか、内容がはっきりしている曲が多いので。

勇-YOU-:そうかもね。

――アルバムのラストを飾る壮大なソウルバラードの「Time Over」も、素晴らしかったです。

雅友:これは、スタッフを説得するのが大変でしたね。SCREEN mode=ロックという意識が強かったみたいで、「こういう曲はまた今度でいいんじゃないですか」と言われて。

畑:そうなの? とてもいいと思うけど。

雅友:何年か前にもこういう感じのブルージーな曲を出したことがあって、その時も「またの機会でいいんじゃないですか」って言われたんですよ。なので、それは永久に「またの機会に」なるんじゃないのか? と思って(笑)。俺は絶対に、これは勇が歌ったらいい感じになるという確信があったので、スタジオで♪ラララ~って一回歌ってもらって、それを聴いたスタッフが「これで行こう」と言ってくれたんですけど。そこまでが長かったですね。

畑:アルバムに好きな曲を入れられなかったら、いつ入れるの? という感じだよね。

勇-YOU-:普通のロックやってる人は、こういう曲調は選ばないですよね、きっと。前に『SOUL』を出したからOKラインがゆるくなったのかもしれませんけど。昔の俺はR&Bやブラックミュージックが好きで、こういうブルージーな曲も聴いてたから、体に入っているというか、歌ってみたかったんで。願いが叶ってよかったですね。

雅友:「Time Over」と「Tuberose」は、スタッフを説得するのに時間がかかりました。なかなかOKがもらえず、「Tuberose」は最後に録ったし。

勇-YOU-:これは時間かかりましたね。

雅友:作曲家のキャリアの中で一番大きい仕事は、オーケストラを書くことなんですね。その次に複雑なのはビッグバンドのジャズを書くことなんですけど、レコーディングに参加するミュージシャンが多いからやっぱりお金もかかるんですよ。なかなかハードルが高いんですけど、今回は<ランティス>さんが「いいよ」と言ってくれて、全ナマ(演奏)でできたんで、僕にとっても思い出に残る曲になりましたね。

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