SCREEN mode×畑亜貴が考える、等身大の表現「何もないと感じたらそれをそのまま出していい」

スクモ×畑亜貴が考える“等身大の表現”

 デビュー5周年に突入するSCREEN modeが、ついに本性を現してきた。いや、これまでも何も隠してはいなかったのだが、太田雅友と林勇という二つの強力な個性が時間をかけて有機的に結合し、本格的に機能し始めたと言うべきか。その最新証拠物件としてリリースされる2ndアルバム『1/1』(イチブンノイチ)は、雅友の作曲家としての力量の広さと深さを示すバラエティに富んだ曲調と、林勇のドラマチックで表情豊かな歌唱ががっちりとかみ合った痛快な一撃だ。アニソンシーンの枠を超えた曲調と思考を持ち、独自の活動を続けるSCREEN mode。その過去、現在、未来について、2人の歩みをずっと見続けてきた作詞家・畑亜貴を特別ゲストに招いたスペシャルインタビューをお届けしよう。(宮本英夫)

「自分の愚直さを引き出していただいてる」(勇-YOU-)

――2013年11月デビューですから、いよいよ5周年に突入するということで。

雅友:恐ろしいですね(笑)。

勇-YOU-:あっという間ですね。

畑亜貴(以下、畑):ついこの前デビューしたみたいな気がするのに!雅友さんがずっと「男性ユニットをやりたい」と言ってたから、「おめでとう、夢がかなったじゃない」って盛り上がってたら、あっと言う間に5年。どういうこと?(笑)

勇-YOU-:どういうことですかね(笑)。感覚的にはまだ1、2年しか経ってないぐらいのスピードですけど。

左から、畑亜貴、太田雅友、林勇。

――コンスタントに作品をリリースしてますからね。ライブもしっかり、ステップアップしながらやり続けている。雅友さん、ここまではけっこう想像通りですか? それとも想定外のことも多々あったり?

雅友:一番最初に『ぎんぎつね』というアニメのED主題歌が決まっていて、もし僕がボーカリストを見つけられたら「ユニットとしてデビューできるかもよ」と<ランティス>の方に言っていただいて。そこからオーディションを開催して、その結果SCREEN modeが始まった。いわばお見合いで出会った夫婦みたいなスタートだったんですよね。

勇-YOU-:「はじめまして」からすぐに「よろしくお願いします」だもんね。

雅友:実は子供の頃に親同士がいいなずけを決めてて、高校生ぐらいになったら急に奥さんができるみたいな設定のラブコメとか、あるじゃないですか。あれみたいな感じ。だからほぼほぼ何もわかってないまま始まって、『ぎんぎつね』があって、そのあとも『LOVE STAGE!!』や『ガンダムビルドファイターズトライ』という話をいただいて、アニメを表現していく作業をする中で……たとえば自分たちはどういう夫婦になりたいか? とか、子供は何人ほしいとか、そういうことを決めなくても話は進んでいくんですよ。それでどんどん活動が進んで行ってしまった部分がすごく大きくて。

――なるほど。

雅友:もちろんそれは素晴らしいことで、悪い意味で言ってるんじゃないですけど。幸か不幸か、何も考えなくても進むことができたんですね。それでダーッと走ってきて……2017年2月リリースの『SOUL』というノンタイアップのコンセプトミニアルバムを作らせていただいた時に、初めて「何をやるか?」という話を二人でしたと思うんですよ。今から思うと、それまでは話し合っているようで話し合っていなかったところはある気がする。それはアニソン業界あるあるかもしれないけど。

畑:あるある! そうかもしれないね。

雅友:俺らだけじゃなくて、そういうところはある気がする。「走りながら考えよう」ってスタッフからも言われていて、来た球だけを打ち返すことをひたすらやってきて、それが『SOUL』を経て今回のアルバムで“じゃあ何を作る?”というところにようやく頭が追いついたんで。だからあんまり、5周年やってきた奴の発想じゃないなという気がする。

――まるで新人バンドのような。

雅友:そうなんですよ。恥ずかしいぐらいなんですけど、それが正直なところですね。

――今の雅友さんの発言で、このアルバムの背景がすごくわかりますよ。実際すごく瑞々しいアルバムで、ロックンロールあり、オールディーズ・ポップスあり、スカあり、スウィング・ジャズあり、ソウル・バラードあり……この広がりはすごいですよ。

勇-YOU-:幅広いですね。

雅友:シングルの「MYSTERIUM」と、カップリングの「無限と零」という曲を畑さんが書いてくれたんですけど、何て言うのか、行き先も見えてないくせに来た球だけを打っている俺をディスるような歌詞を書いてきたんですよ。

畑:おおっと(笑)。ディスってはいないけど、ひそかなメッセージ伝わっちゃった?

雅友:畑さんはね、仕事に織り込んでくるんですよ。ほかのアーティストのやつでも。

畑:今のあなたについてお手紙書きました、みたいな感じでね。

――それ、まさに聞こうと思ってたんですよね。かつて「START LINE」の歌詞を畑さんが書いた時に、雅友さんが「畑さんの歌詞は手紙のようだ。行間にメッセージがある」と言ってるんですよね。

雅友:ああ、そうでしたね。

畑:だって曲が来たら、私も全力で今感じてることを、魂込めて返さなきゃいけないじゃないですか。

勇-YOU-:「無限と零」は、歌ってるうちに感情を引き出されるところがすごくあって。今の自分にすごく重なるフレーズが多くて、本当に好きな歌詞なんですよね。

畑:ありがとうございます。そう、たぶんもっと素の心というか、裸の個性を見せてほしいという願望があって、「これを歌って感じたことを、隠さずにみんなに伝えてほしい」みたいなメッセージを込めてるんです、書いてる時に。なのでそれを歌ってくれて、聴いた時に感動しました。「あ、これ、よく伝わってるな」と思って。

勇-YOU-:ありがたいです。『1/1』というタイトルはその感覚から生まれた言葉でもあるんですよね。1/1は等身大という意味なんですけど、裸の心で、今の自分たちの立ち位置の中で100%歌えるものを出したいと思った時に、「無限と零」の歌詞が自分に投影できる部分がすごく多いので、アルバム曲も畑さんにお願いできないかなという僕のわがままで。

畑:だからもし私からのメッセージに対して、返すものが何もないと感じたら、それをそのまま出していいと思うんですよ。今自分の中に何があって何がないのか、それを見せることが勇くんはできるんじゃないかなと思ったので。何もない時でも恥ずかしがらずに、「今の俺には何もない」ということを歌えるんじゃないかな? というふうに、私は勇くんのアーティスト性を解釈してます。

勇-YOU-:なるほど。ありがとうございます。雅友さん、なんか隣で意味ありげにうなずいてますけど……どうですか?(笑)。

雅友:畑さんが書いてくれた「DISTANT GOAL」は、すごくいい歌詞ですよね。いろんなところが勇っぽい。<頑張りたいけど頑張れない気分にBye-Bye>とか、<いつも運が悪いとか言ってるだけなんてNo Good>とか、言いそう。

勇-YOU-:言いそうって(笑)。

雅友:それでもやっぱり諦めずに、遠いゴールでもそこに向かって行くぞって書いてくれてるんで、すごい優しさも感じるし。それで最後に<正直なところ諦めたくはないよ>って、勇が書くよりも勇っぽい。

勇-YOU-:確かに。<もっと、だ!>って何回も言うところもね。自分の愚直さを引き出していただいてるなと思います。

畑:「MYSTERIUM」では、この世界観を演じる勇くんのかっこよさを表現できたかなと思っているので、今度は裸の心を見せる勇くんもアルバムの中にほしいなと思ったんだけど。大丈夫だった?

雅友:大丈夫です。

畑:そこから「いま勇くんが何を考えてるんだろう?」「何に悩んで、何に喜んで、どこに向かいたいんだろう?」ということをすごく考えて。「うれしい時もいっぱいあるだろうけど、ふてくされたくなる時もあるだろうな」とか、「でも、さらにそれを超えるエネルギーが眠ってるんじゃないか?」とか。

勇-YOU-:4年間での成長はすごく感じているので、5年目はまさにそのエネルギーを解放する一年だと思っています。あとはライブでのバランスも大事だとあらためて考えていて。カチッと決めるところはちゃんと決めて、100%で出していかないといけない、ということをすごく感じてるんですよね。僕は感覚的な人間すぎるので、もうちょっとロジックで考えるものもうまく取り込みながらやっていくことが、さらなる成長につながるんじゃないかなと思ったり。

畑:ロジック担当は雅友さんがいるからね。いいコンビだよね、そういう意味で。

雅友:まあ、確かに。

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