寿美菜子、大原ゆい子、堤博明、rionos、『アイマス』新曲……声優・アニメ音楽の多様性示す新譜5選

『THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 03 エンジェルスターズ』

 その『クジラの子らは砂上に歌う』のエンディングテーマ「ハシタイロ」でメジャーデビューしたrionosは、ぜひここで紹介しておきたい気鋭の音楽家です。2013年にミニアルバム『read me.』でシンガーソングライターとしてCDデビューした彼女ですが、その後は寺嶋由芙やLittle Glee Monsterへの楽曲提供といった裏方仕事が目立っていたため、作曲家・編曲家としてその名を記憶している人が多いかもしれません。実際このところはアニメ/声優ソング界隈での楽曲提供も増えており、なかでもアプリゲーム『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』用に書き下ろした『THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 03 エンジェルスターズ』収録の楽曲「Angelic Parade♪」は、Machico、夏川椎菜、麻倉ももらソロ活動も行う声優陣が演じるユニット=エンジェルスターズのハーモニーが可憐に舞う、甘やかなアイドルソングとなっています。rionosはその他にも、声優の上田麗奈による初シングル「sleepland」(新アニメ『メルヘン・メドヘン』のエンディングテーマ)では優雅な室内楽ポップを贈り、やなぎなぎのニューアルバム『ナッテ』には透明感あるミディアム「目覚めの岸辺」を提供するなど、良作を連発。脚本家の岡田麿里による初監督作品として注目のアニメ映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』では主題歌「ウィアートル」を歌っており、今後もアーティストとクリエイターの両面で活躍の場を広げることは間違いないでしょう。

高垣楓(CV:早見沙織)『THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER こいかぜ -彩-』

 最後は『アイドルマスター』繋がりでもう1曲キャラソンを紹介。『アイドルマスター シンデレラガールズ』シリーズにおいてトップクラスの人気を誇るキャラクター、高垣楓(CV:早見沙織)のソロCD『THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER こいかぜ -彩-』がとんでもないことになっているのです。「こいかぜ」という楽曲はもともと高垣楓の初ソロ曲として2012年に発表された壮大なバラードなのですが、2017年に行われた楽曲総選挙において同曲がソロ曲部門1位を獲得、そして同時開催の「第6回シンデレラガール総選挙(=キャラ人気投票)」で楓が首位に輝いたことを記念して新たに録音することに。これがフタを開けてみると「こいかぜ -序章-」「こいかぜ -花葉-」「こいかぜ -紺碧-」の3部構成から成る楽曲に生まれ変わっていて、「こいかぜ -花葉-」に至ってはメロディも完全に別物となっています。さらに海外の合唱コーラス隊を起用して、終盤ではゴスペル仕立てのエモーショナルな掛け合いを聴かせるという、もはや宇宙レベルの神秘を感じさせる、過剰なまでの豪奢さ。しかしながら早見の歌唱力の高さをとことんまで引き立てたという意味においても、エポックメイキングたる作品になったのではないでしょうか。時に常識を凌駕する突き抜けた発想の楽曲が生まれるからこそ、アニメ音楽の世界はおもしろいのです。

■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。

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