Hi-STANDARDが見せたパンクロックバンドしてのタフさ 『THE GIFT TOUR 2017』総括レポ

ハイスタ『THE GIFT TOUR 2017』総括レポ

 ライブ後半になっても、バンドとオーディエンスの熱量は一切下がることを知らない。「Fighting Fists, Angry Soul」冒頭では難波の歌い出しに続いて、観客の盛大なシンガロングが発生。「Starry Night」では観客が携帯電話のライトを点灯させ、会場一面を星空に見立てる自発的な演出もあった。そんな最高のオーディエンスを前に、難波は「Hi-STANDARD、生きてます!」と宣言し、続いて横山も「そして、これからも生き続けます。こうなったら誰かがくたばるまで(バンドを)畳まねえぞ!」と言い放ち、会場は盛大な拍手に包まれた。

 そんな横山がライブ終盤、お約束となったミニー・リパートン「Lovin' You」のギター弾き語りカバーを披露したかと思うと、続く「The Sound Of Secret Minds」でもリードボーカルを務め会場を沸かせる。同曲を終えると横山は「今日『歌わせてくれ!』って、メンバーに頼んだんだよ」と語り、これを受けて難波も「一番は楽しい。バンドっていいね!」と嬉しそうに話す。その2人を、後方から笑顔で見守る恒岡。この関係性こそが今のハイスタ最大の武器であり、90年代との大きな違いなのかもしれない。活動休止やさまざまな困難、そして個々の音楽活動を経験することで得た自信、いろんなものが糧になり、再び3人が集まったとき、90年代とは比べものにならないくらいにタフなハイスタがそこにいた。そのタフさは2011〜12年の『AIR JAM』とは比べものにならないほどに……改めて、今回のツアーはものすごい“奇跡”を目にすることができた、貴重な機会だったのかもしれない。

 そんなことを考えていると、ライブは「Stay Gold」でついにクライマックスに。さらに「Free」の冒頭では横山の合図に続いて、オーディエンスが「Wo〜」とシンガロングして曲に花を添える。しかも「下北のほうがパンチあったぞ?」と煽り、さらに大きな声で歌うことを要求。当然のように、観客はさらに大きな声でシンガロングを続けた。この頃になると、ツアーの疲れからか難波は高音が出にくくなっていたが、そんな彼をサポートするかのようにオーディエンスは一段と大きな声で歌声を響かせる。この一体感こそがハイスタのライブ、そう思わずにはいられない瞬間だった。最後は横山の「みなさんが思っている以上に、Hi-STANDARDでいることを楽しめました」、難波の「また会おうぜ!」の挨拶に続いて「Brand New Sunset」でライブ本編を締めくくり。終了後にはメンバー同士で握手をしたり抱き合ったりして喜びを表現してから、ステージを降りた。

写真=Yuji Honda

 アンコールでは、この日〈PIZZA OF DEATH RECORDS〉のTシャツを着用していた難波がレーベルやスタッフに対し、そして「また集まってやろうね。健くん、ツネちゃん、どうもありがとう!」とメンバーに対して感謝の言葉を述べた。そこから「また始めよう!」を合図に、ハイスタの新たなアンセム「Another Starting Line」を奏で、一瞬にして会場を掌握する。さらに「Teenagers Are All Assholes」でフロアの熱気をさらに加熱させたかと思うと、この季節ならではのカバー「Happy Xmas (War Is Over)」をプレゼント。難波はまたも「ハイスタが始まって良かった!」と喜びを口にすると、今度は「Can't Help Falling In Love」を繰り出し会場の一体感をさらに高めていった。3人はこのツアー以降、バンドの予定は一切決まっていないと言いながらも、「来年もまた何か思いついたらやるよ」(横山)、「曲をまた作りたいな。ライブもやりたい。やりたいこと、いっぱいあるよ!」(難波)と笑顔で話し、そのピースフルな空気のまま「Mosh Under The Rainbow」でツアーファイナルを盛大に締めくくった。

 2時間以上にわたる熱演を終え、ステージから去るのが名残惜しそうな3人。記念撮影などを終えステージを降りてしばらくすると、突然3人がステージに姿を現した。すでに観客が半分以下となった状況にもかかわらず、彼らは最後の最後に「My Heart Feels So Free」「Turning Back」の2曲をプレゼント。この思わぬサプライズに、その場に残っていたファンはシンガロングやモッシュ&サーフといったアクションで喜びを表現した。この思わぬサプライズはすべての来場者が体験することができなかったものの、こういったところにもメンバー3人のHi-STANDARDに対する愛情、そして応援してくれる“All Generations”に対する愛情がにじみ出ているのではないだろうか。だとすると、あのダブルアンコールはこのツアーが終わってしまうことの名残惜しさに対する3人からの答えだったと受け取れる。

 ライブ中の言葉をそのまま信じれば、2018年は今のところHi-STANDARDとしての活動は白紙であり、3人はそれぞれの活動に戻っていくことになる。横山の発言どおり、2017年はハイスタに集中するためKen Bandとしての活動が停滞してしまったので、2018年はKen Bandのライブも活発化することだろう。しかし、こんなツアーを見せられてしまったら、それでもハイスタの次のアクションに期待してしまう。こんなに絶好調で「今が最高」なバンドの姿を見せられてしまったのだから、すぐに新曲を作ってツアーをすることは現実的に難しいとしても、3人が「今だ」と思うタイミングに再び集まり、その瞬間のベストを新曲やライブで表現してくれたら……それこそが我々にとって、新たな“奇跡”以外の何ものでもないのだから。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■セットリスト
Hi-STANDARD『THE GIFT TOUR 2017』
2017年12月14日(木)さいたまスーパーアリーナ

マキシマム ザ ホルモン
01. 握れっっっっっっっっ!!
02. What's up, people?!
03. 「F」
04. ロック番狂わせ
05. ロッキンポ殺し
06. パトカー燃やす~卒業~
07. セフィーロ・レディオ・カムバック~青春最下位~
08. 恋のスペルマ

Hi-STANDARD
01. The Gift
02. Growing Up
03. All Generations
04. Summer Of Love
05. I Know You Love Me
06. Dear My Friend
07. Hello My Junior
08. Glory
09. Close To Me
10. Pink Panther Theme
11. Nothing
12. Going Crazy
13. We’re All Grown Up
14. Pacific Sun
15. California Dreamin'
16. Fighting Fists, Angry Soul
17. Starry Night
18. The Sound Of Secret Minds
19. Stop The Time
20. Stay Gold
21. Free
22. Maximum Overdrive
23. Brand New Sunset
<アンコール>
24. Another Starting Line
25. Teenagers Are All Assholes
26. Happy Xmas (War Is Over)
27. Can't Help Falling In Love
28. Mosh Under The Rainbow
<アンコール>
29. My Heart Feels So Free
30. Turning Back

Hi-STANDARD オフィシャルサイト
マキシマム ザ ホルモン オフィシャルサイト

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