アーティスト キュレーション:早見沙織

Kool & The Gang、Rhye、フジファブリック……早見沙織が明かす“影響”を受けた楽曲

 当サイトの連載企画「新譜キュレーション」の特別編「アーティストキュレーション」では、様々な世代・ジャンルのアーティストたちが登場し、彼らが最近聴いている音楽やお気に入りの音楽を5作品セレクトして紹介。リアルなリスニング体験からは、自身の作品とは違った角度から、ルーツや趣向などが浮かび上がってくる。それらが、アーティストに対する理解や関心を深める一つのきっかけとなれば幸いだ。

 今回は様々な作品で活躍する声優でありながら、シンガーとしても高い評価を得ている早見沙織がキュレーターとして登場。彼女は幼少期から母親の影響で海外のジャズ・ファンク・ソウルミュージックを聴き、自身もジャズボーカルを会得。現在は先述のジャンルに加え、J-POPから海外インディーまで幅広くキャッチアップし、アーティストの来日公演には積極的に足を運ぶなど、音楽的偏差値の高いリスナーだ。そんな早見はジャンルや世代を縦横無尽に駆け巡りながら、自身の音楽観やライブ活動、歌に影響を与えた音楽たちをピックアップしてくれた。(編集部)

新作『夢の果てまで』へのインタビューはこちら

Kool & The Gang『Wild & Peaceful』

 まずはいまだに聴いている、自分のルーツといえる音楽からご紹介します。母がソウル・ファンクミュージックが好きということもあり、家では常にこれらの楽曲が掛かっていました。ほかにもサム・ムーアやイヴリン・キング、レイ・パーカー・ジュニア、ラリー・グラハム……挙げるとキリがないくらい。そのなかでも私が好きだったのが、Kool & The Gangの『Wild & Peaceful』です。曲単位だと「Celebration」「Get Down on It」なんかも好きで、中高生のころにはビルボードへ来日公演も見に行きました。こういうベースがしっかり効いた音楽が好きで、ZappやCon Funk Shunも母から教えてもらってずっと聴いているアーティストです。正直、ファンク・ミュージックって、若い女性が歌うには難しいところもあると思うんですけど、リズムやベースがズンズン響くような楽曲は好きなので、自分の声も活かしたアレンジや楽曲にしつつ、そういう要素を音楽やライブにはどんどん取り入れていきたいです。

Nouvelle Vague『Nouvelle Vague』

 ライブに取り入れているといえば、先日東京キネマ倶楽部で開催したコンベンションライブでは「やさしい希望」をボサノヴァ風のアレンジにしたんです。そのときは増田武史さんがミニー・リパートンの「Lovin' You」を挙げてくださって、その曲を踏まえてアレンジしていただいたんですけど、私自身も元々、カフェミュージックやボサノヴァが好きで。母と一緒に行ったビーズのお店でかかっていたのをきっかけに、Nouvelle Vagueの『Nouvelle Vague』を好きになりました。そのころは音声検索のアプリなんて知らなかったので、耳コピして必死に覚えて、家に帰ってから調べたりして(笑)。

Nouvelle Vague - Love Will Tear Us Apart (Full Track)

 Nouvelle Vagueは色んな名曲をボサノヴァ風にカバーする音楽プロジェクトなんですけど、リードシンガーのメラニー・ペインの持つ声の空気感が素敵なんです。前回ツアーの開場SEでは、私が選んだ40分から45分のくらいの音源を流していたんですが、その時は「Love Will Tear Us Apart」(Joy Divisionのカバー)を掛けました。コンベンションライブでは、「ESCORT」がベース一本から始まるという展開を組み込んだんですが、この時のパフォーマンスは、小さい時に母と通っていたジャズ教室がルーツになっています。発表会で、小さいライブハウスを使ってピアノ・トリオ編成で演奏されたフランク・シナトラの「You'd Be So Nice To Come Home To」がすごく印象に残っていて。それがベース1本から始まる展開だったので、その時に録った動画を渡して黒須克彦さんにアレンジしてもらいました。こうやって、ライブで楽曲をアレンジすることが、どんどん好きになっている自分がいます。

関連記事