Linked Horizonが誘う『進撃の巨人』の世界 物語への“愛”と“熱量”伝えたツアー千秋楽

リンホラが誘った“進撃”の世界

 『Linked Horizon Live Tour 2017 「進撃の軌跡」』の千秋楽が11月10日、カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)にて行われた。Linked Horizonは、サウンドクリエイターRevoが率いる音楽集団・Sound Horizonの別プロジェクトだ。“物語音楽”をテーマに創作・表現活動を行っているSound Horizonが、既存の物語の世界観を表現する際に用いるのがLinked Horizonであり、その名を一躍世に広めたのは間違いなくアニメ『進撃の巨人』である。

(写真=佐藤祐介)

 圧倒的な力を持つ巨人の出現により、城壁の内側での生活を余儀なくされた人間たち。ある時扉が破壊され、巨人たちが壁内へ侵入。主人公エレンをはじめとする人間対巨人の戦いが繰り広げられていくというのが『進撃の巨人』の全体的なストーリーだ。Linked Horizonは「紅蓮の弓矢」でアニメ第1期オープニング主題歌を担当。同曲で『第64回NHK紅白歌合戦』(2013年)に異例の初出演を果たした際には、『進撃の巨人』の迫力あるアニメーションをバックにオーケストラを従えた圧巻のパフォーマンスを披露し、大きな話題を呼んだ。以降もLinked Horizonは劇場版主題歌、第2期オープニング主題歌を担当するなど、『進撃の巨人』の世界を表現する上では欠かせない存在として、多くのファンに愛され続けている。

(写真=佐藤祐介)

 Sound Horizonのファンはもちろん、『進撃の巨人』の原作ファンからも絶大な支持を集めているLinked Horizonの音楽。その最大の理由として挙げられるのが、Revoが『進撃の巨人』という作品を心から愛し、リスペクトしているということ。2017年5月に発売された2ndアルバム『進撃の軌跡』には、これまで発表してきた主題歌に加え、物語に登場するキャラクターの心情を描いた楽曲を収録。曲によっては『進撃の巨人』でキャラクターボイスを担当している声優に語りを担当してもらう徹底ぶりだ。Revoは主題歌には収まりきらない物語の奥行きをそれぞれの楽曲に託し、アルバムというかたちで表現してみせた。そして、それをさらにライブにまで発展させたのが今回のライブツアーである。アルバム『進撃の軌跡』で表現されたRevoが描く『進撃の巨人』の世界。本公演では1曲目を「二ヶ月後の君へ」からはじめ、アルバム同様「心臓を捧げよ!」で本編を終えるという再現性の高いセットリストが用意されていた。

(写真=阿部薫)

 『進撃の軌跡』のアートワークともリンクする紅蓮に染められたステージ上には、Revoのほかに、月香、福永実咲、MANAMI、松本英子、柳麻美といった5人の歌姫が登場。西山毅(Gt)、YUKI(Gt)、長谷川淳(Ba)、五十嵐宏治(key)、淳士(Dr)、弦一徹ストリングスらによるシンフォニックかつプログレッシブな演奏がホール全体に響き渡る中、川崎公演2日間にはゲストとしてコーラス隊のVoces Tokyoが参加した。クワイア的なハーモニーが加わることで、各曲の荘厳な雰囲気は一層の深まりをみせる。ダンサーチームの佐藤洋介、OBA、細木あゆ、矢島みなみの4名は、主にバトルシーンを表した楽曲で活躍。時に巨人と戦う兵士として、時に人々を脅かす巨人として、激しいサウンドに合わせ視覚的な激しさを加えた。

 本編セットリストの中には1曲だけ、『進撃の軌跡』に収録されていない楽曲があった。家族と平和な生活を送り、“壁の外”の世界に思いを馳せる幼少期のエレンと幼馴染のアルミンをイメージした「もしこの壁の中が一軒の家だとしたら」(2ndシングル『自由への進撃』に収録)だ。この曲が入ることで、巨人の侵入以前/以降の平和と絶望の濃淡がより明確に示されていたように思う。巨人に命を奪われた母・カルラから息子・エレンに向けた心情が歌われた「14文字の伝言」、物語に登場するウォール教のしきたりに倣い、観客たちが腕を組み“人間の鎖”を作った「神の御業」、翼モチーフのフライングV・Flying Freiheitを手にRevoが“未来の勝利”を高らかに歌った「自由の翼」、スピード感ある強いビートに乗せて巨人たちとの死闘を描いた「自由の代償」など、それぞれの楽曲のモチーフとなった名シーンの映像とともに鳴らされるサウンドが、音楽体験としての臨場感・躍動感を生み出していった。

(写真=阿部薫)

 本編ラストの「心臓を捧げよ!」ではRevoが観客に歌うことを求め、「音楽は目に見えないけど届いている。みなさんと、音楽を媒介して一つの空気でつながっている」と会場の一体感を噛みしめる場面も見られた。この日のライブの冒頭、Revoは「これだけの人数が揃うのは特別なこと。音楽でみなさんを楽しませたい。生きているこの瞬間が楽しい。今この瞬間、とにかく楽しいということを伝えたくて33公演やってきた。でも今日は君たちを楽しませるのを忘れます。自分が楽しんでやる。今日は自分が楽しいということを追求してみようと思います」と宣言していたが、その言葉のとおり、細部まで趣向をこらした『進撃の巨人』の世界に自らも浸り、観客とともに全力で楽しむ姿があった。

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