デビューシングル『それでも僕は生きている』インタビュー
NormCore Fümiが語る、ソロとバンド活動の違い 「“芸術”と区切って活動できたら」
「足し算でなく掛け算でアニメに関われるように」
――この曲のMVは、Fümiさんみずから監督もされてるとのことですが。
Fümi:はい。アイデア出し全般からロケーションやシチュエーションも全部自分で決めて、スイッチカッティングや素材の連結の編集も自分でやってます。色調補正やタイポライトの演出はプロの方にやってもらって。今回、三木(フルネーム)さんという映像作家の方とどうしても一緒に仕事をしたくてお願いしたら、「やれるところまで一緒にやろう」とおっしゃっていただいて、最終的な完パケ作業も2人で漫喫に入って5時間ぐらいずっとラップトップで作業して完成させたんです(笑)。
――それはすごいですね(笑)。どのようなコンセプトで作られたのでしょうか?
Fümi:MVも『EVIL OR LIVE』の世界観とリンクさせていて、アニメの第1話は主人公が自殺しようとするところから物語が始まるんですけど、MVも僕がビルの屋上から飛び降りようとしてるドラマ風のパートから始まって。なるべく足し算でなく掛け算でアニメに関われるように考えて撮りました。
――普段から動画共有サイトに動画を投稿されてますが、そういった制作経験も活きましたか?
Fümi:そうですね。YouTubeは自分ひとりでやってるので、時間と予算をどれだけ削っておもしろいものを撮るかというアイデアがいっぱい増えてくるんですよ。なので今回みたいに会社から制作費用が出る場合は「何でもできるじゃん!」って思えるんですよ(笑)。ビルのシーンはここ(ビーイング本社)の屋上で撮ったんですけど、それだと予算はいらないし時間の制限もないですからね(笑)。
――カップリングの「天空の涙」は一転して感傷的なバラードですが、どのようなイメージで作られたのでしょうか?
Fümi:僕は基本的に曲の作り置きをしないタイプなんですけど、この曲はちょうど3~4年前にフラッと作ってた曲で、「それでも僕は生きている」が仕上がった段階でカップリングをどうしようかと思ったときに、何故かピンポイントでこの曲のことを思い出してしまったんです。僕が自分でピアノを弾きながら作ったデモを、田尻(尋一)さんというすごく音にこだわりを持たれてるマニアックなアレンジャーの方にお願いしたまま止まってた曲だったんですけど、今回改めてブラッシュアップして、2人の演奏を加えて仕上げました。
――なぜこの曲がカップリングにはまると直感したんでしょうか?
Fümi:僕の中で「それでも僕は生きている」は“絶望寄りの絶望”という感じなんですけど、「天空の涙」は“希望寄りの絶望”みたいなイメージで、憂いの質感としては似てるなと思いまして。あとは、お決まりではあるんですけど、アップテンポのカップリングはゆったりしてた方がバランスがいいかなというところです。
――歌詞の詩的な表現や、最終的に希望が見える終わり方は、表題曲とも対照的な内容になってますよね。
Fümi:この曲を作った頃は大学を卒業して、若造から少しは成長して、世の中とか音楽業界のことをいろいろ知るようになった時期で。みんな辛いけど、その部分は表に出さずになんとか人生を歩んでいってることが見えてきて、辛いけどいい結果があればいいよなあっていう、ちょっとブルージーな気持ちで作った曲なんです。もちろん僕もそうですけど、誰しも生きるならポジティブでいたいと思うだろうし、常々は無理だとしてもいつか未来があると思って、いまを楽しめたらいいというマインドですかね。
――アレンジ的にはオーボエのような音も入っていて、よりクラシック音楽の雰囲気に近い意味でのシンフォニックなサウンドになってますね。
Fümi:ひと口にシンフォニックといっても定義が広いと思うので、そのフィールドのなかではこの曲も表現のひとつとして許容範囲なのかなと思って。NormCoreで曲を作る時はシンフォニックというテーマから絶対外れないようにしてるんですけど、とはいえ足回りにEDMの要素を入れることもあるかもしれないですし、Clean Banditの「Rather Be」もストリングスが入っていてシンフォニックなものだと僕は思ってるので。
――そういう解釈であれば、本当に幅広い音楽性に挑戦できますね。
Fümi:まあ「ウワモノでストリングスが鳴ってればいいんかい!」ってなっちゃいますけど(笑)。
「映像と関わる形で音楽をやっていきたい」
――おもしろければ何でもアリだと思います。今回のシングルでNormCoreが本格始動したわけですが、ユニットとしてこの先どのようなビジョンを思い描いていますか?
Fümi:僕はアニメが好きなので、まずは今回のようにアニメ作品の楽曲で印象を残して、いろんな人に知っていただきたいというのがいちばんのところです。それにもっと映像やアニメーションとの化学反応というところで音楽をやっていきたいというのはありますね。例えばRADWIMPSさんが『君の名は。』でやっていたみたいに、映像を作っている方と協議して作品を作っていくのはすごいことだと思うので。劇伴じゃなくても、インストとかアニメのなかで使われるようなトラックも作れたらと思ってるんです。映像と関わる形で音楽をやっていきたいので。
――『EVIL OR LIVE』では声優にも初挑戦されたとのことで、ひとりの表現者としてもますます幅広い領域に足を踏み入れてますものね。
Fümi:あまりどういう風になりたいとかはなくて、とにかくみんなと楽しい時間を共有できたらという思いでやってるだけなんですけどね。子どもの頃は指揮者になりたいと思ってたんですけど、先生に無理って言われて諦めて(笑)。次は『もののけ姫』を観て久石譲さんみたいになりたいと思って、音大を目指してピアノを弾いてたんですけど、それも無理って言われて。でも声楽であれば、男性の場合は声変わりもするので高校生から学び始めても間に合うと知って、勉強して音大に入ったんです。そこからいまの人生の道筋に入り始めたので、やっぱり最初は音楽だったんですよね。
――声楽を学ばれたことが歌手への道に繋がって、その音大で出会った人たちと新たにユニットを組むことになって。音楽愛がいろいろな可能性に広がっていってるわけですね。
Fümi:NormCoreも「アーティスティックなことにも挑戦してみたら?」という助言もあって、そんなに深いところまで考えずに始めたユニットだったんですけど、いざやってみたら、僕はこういうことをやりたかったんだなっていうことに気付いて。もちろんみんなと楽しい時間を共有するのが好きでいろんなことをやってきたんですけど、やっぱりそもそもは音楽が好きなので、NormCoreでは自分のルーツに向き合う作業もできますし、本当に楽しみながら活動してます。
(取材・文=北野創)
■リリース情報
『それでも僕は生きている』
11月22日(水)リリース
初回限定盤(CD+DVD)¥1,389+税
※アニメイラストステッカージャケット仕様、特典DVD
通常盤(CD)¥926+税
<収録楽曲>
1. それでも僕は生きている
2. 天空の涙
<DVD収録内容>
「それでも僕は生きている」MV
「それでも僕は生きている」MVオフショット
■タイアップ番組情報
『EVIL OR LIVE NIGHT』
放送局:TOKYO MX
放送日:毎週火曜25:41~放送中
■関連リンク
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『EVIL OR LIVE』オフィシャルサイト
『EVIL OR LIVE』Twitter(@evilorlive)
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