Uru、ドラマ『コウノドリ』の物語にどう寄り添う? 主題歌「奇蹟」で描いた“光と影”
毎クール、新ドラマが始まるたびに話題となるのが主題歌。特に今年は、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系)のBeverly「I need your love」や『あなたのことはそれほど』(TBS系)の神様、僕は気づいてしまった「CQCQ」のように新人ながら主題歌に抜擢されるケースが相次いだ。一昔前まで、ドラマの主題歌といえば、必ずと言っていいほど知名度のあるアーティストに任せるのが常だったが、ここにきてトレンドにも変化が見て取れる。その理由のひとつと考えられるのがストーリーとの親和性を重視する傾向だ。
例えば、『CRISIS』の「I need your love」は一見してラブソングのように思えるが、ドラマのチーフ・プロデューサーの笠置高弘氏は、「国家の危機に対して、苦悩しながらも決して諦めずに立ち向かう特捜班の姿を表現している」と語っているし(参考:『CRISIS』オフィシャルサイト)、『あなそれ』の「CQCQ」に至っては、タイトル(無線通信で遭難を知らせる合図に使われることも)やひいてはバンド名も、ドラマで描かれたスキャンダラスなW不倫を想起させる。
また、ストーリーとの関連性という意味で言えば、キャスト陣による歌唱が注目された『カルテット』(TBS系)のDoughnuts Hole「おとなの掟」や、血が繋がっている/一緒に暮らしているだけではない“家族”についての歌となった『過保護のカホコ』(日本テレビ系)の星野源「Family Song」も同様と言えるだろう。
今期放映されている産科医療に携わる医者たちを描いた『コウノドリ』(TBS系)の主題歌、Uruによる「奇蹟」もその流れを踏襲している。Uruは昨年デビューしたばかりの女性シンガー。2013年より自身で立ち上げたYouTubeチャンネルで、数々の名曲カバー動画をアップ。聴く者を包み込むような歌声と、神秘的な存在感が注目を集め、デビュー時点で総再生回数は4400万回以上、チャンネル登録者は 14万人越えという異例の記録を打ち立てた。
本作「奇蹟」はそんな彼女の早くも5枚目となるシングル。“ポップマエストロ”冨田恵一がアレンジを施したピアノが彩る中、Uruの透き通るような歌声が伸びやかに響き、心の琴線にそっと触れるような楽曲に仕上がっている。歌詞もUru本人がドラマのために書き下ろしたもの。<溢れ出す 愛おしさで/包みたい そっとその全てを/この世界でたった一つだけの/輝ける 奇蹟がある>というサビの一節しかり、聴き込むほどにかけがえのない存在への讃歌であることが伝わってくる。また、今作の『コウノドリ』では、出産のみならず、“産後うつ”や出産にまつわる医療システムなど、社会問題にも切り込んでいる点も見どころのひとつ。歌詞ではそのあたりにも言及し、<迷い立ち止まっては/弱さに溺れていた/私が今 強くなれるのは/あなたに出会えたから>と子育てへの悩みを抱えた母親たちの思いを代弁するかのようなフレーズも。新たな命へ向けた歓びの歌であると同時に、すべての母親たちへの応援歌でもあるところも、ドラマが描こうとするテーマと合致している。
この起用を受け、主演の綾野剛は「Uruの唄には命が寄り添っている。ドラマ『コウノドリ』を照らす光です」とコメント(参考:Uruオフィシャルサイト)。ストーリーに寄り添った楽曲が主題歌となることは、演じ手にとってもモチベーションのひとつとなるようだ。