森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.73
ノーナ・リーヴス、SHISHAMO、CHAI……新作でポップミュージックをどう表現した?
メンバーが脱退してもメジャーレーベルとの契約が切れても数年間リリースが出来ない時期があってもGOING UNDER GROUND・松本素生(Vo / Gt)はいつも変わらず楽しそうで、たまに取材の場で会ったときも「久しぶりじゃないですか! 元気ですか? 渋谷で飲み屋やってるから飲みに来てくださいよ」などと笑顔で話しかけてくれるのだが、本作『真夏の目撃者』でもGOING UNDER GROUNDは切なくてキラキラしていてグッとくるポップミュージックをしっかりと体現している。両A面シングル『超新星/よそもの』を含む本作のテーマは“夏”。何度も通り過ぎていった夏の記憶をモチーフにした楽曲は抒情性と高揚感と後悔と希望をオムニバス映画のように映し出し、リスナーの心の中にある“あの夏の感じ”を呼び起こす。そう、GOING UNDER GROUNDのポップの魔法はいまもしっかりと存在している。
“全員アフロヘア”という出オチ上等のインパクトともにシーンに登場した3ピースバンド・鶴の結成15周年企画第一弾は、11曲入りのニューアルバム『僕ナリ』。ソウルミュージックとロックがぶつかり合うアンサンブルの中でドラマティックなメロディラインが広がる「低気圧ボーイ」、グルーヴィーなバンドサウンドが気持ちいい「Keep On Music」、軽快なギターカッティングを軸にしたシティポップ風ナンバー「グッドデイ バッドデイ どんとこい」、青春と呼ばれる時期をとっくに過ぎた男たちの心情を描いたミディアムバラード「バカな夢を見ようぜ」などルーツミュージックと日本語のポップスをナチュラルにつないだ楽曲からは、14年のキャリアの中で培ってきた円熟の技が確かに感じられる。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。