スカート澤部渡が語る、メジャーデビューまでの音楽史「同じようにやり続けられるのは価値がある」

スカート澤部渡が語る、メジャーデビューまでの音楽史「同じようにやり続けられるのは価値がある」

矛盾を抱え込むのが好き

ーー作詞は昭和音楽大学(澤部の出身校)で習ってたんですか?

澤部:これが習ってないんですよ。作曲はたくさん講座があるんですけど……。でも大学で作詞について勉強してハッとしたのは、大瀧詠一さんが三ツ矢サイダーのCM曲で、<あなたがジンとくる時は、私もジンとくるんです/サイダー/二人の中にサイダー>って歌詞を書かれてるんですけど、メロディがいいところの母音が全部「あ」と「お」なんですよ。それを知ってから、好きな曲を聴き直してみたらメロディのいいところに「あ」と「お」が使われてたんです。

ーーそれって澤部さんが作詞する時には、自分のメロディと声に合う母音って違ったりするんですか。

澤部:やっぱり「あ」と「お」が耳を引くんですよね。母音が「い」とか「う」だと開けた感じがしないんですよ。逆に少し音を閉じたい時には、「い」や「う」を使います。

ーー作詞の理論と自分の書きたかった歌詞が合致した時って、技術が上がった感覚がして嬉しいですよね。3曲目の「パラシュート」はどうでしたか。

澤部:かなり細かくデモを作ったので、この次の「手の鳴る方へ急げ」と同じで、たくさん仕掛けがある曲です。

ーーデモを細かく作る……?

澤部:ざっくりギターで弾き語りすることもあるんですけど、自分の頭の中で鳴っているサウンドを提示できるようにつくります。

ーーギターのカッティングとか。

澤部:そうですね。ベースの感じとか、ドラムのパターンも指定したり。

ーーそうだ、澤部さんはどの楽器もできるんだった。すごい。

澤部:どれも大成しないままこうなっておりますが……。

ーーいやいや、澤部さんにはあの特徴的な“澤部カッティング”があるじゃないですか。あのギターのカッティングはどうやって習得されたんですか?

澤部:僕がすごい好きなバンドのyes,mama ok?が、レア音源でThe Beatlesの「Drive My Car」をカバーしてるんですけど、その中にああいう速いカッティングをするところがあるんですよ。「かっこいー!」って思って練習したらできるようになりました。

ーー澤部カッティングに元ネタがあったとは……! 澤部さんはバレーコードの押さえ方も特徴的ですよね。一本指じゃなくて、親指で一番上の弦も押さえる形の。新しいアーティスト写真もその押さえ方で撮っていたのが、またいいなと思いました。

(写真=宇壽山貴久子)

澤部:えっ、あっ、本当だ! 気づかなかった!

ーーあっ、気づいてなかったんですね! この押さえ方が澤部カッティングの秘密になってるのかと思っていたのですが……。

澤部:カッティングの秘密は親指じゃなくて左手のミュート具合なんです。楽器で大事なのは右手よりも左手なんですよね。左手の感じでコードの質感とか調整できます。ーー澤部さんはなんでも話してくれるなあ。

澤部:ちなみにこの写真を撮ってくれたのは我らが宇壽山貴久子さんです。

ーー僕とジョルジュ(註・金子麻友美、佐藤優介、姫乃たまの音楽ユニット。澤部も何度かサポートメンバーとして参加している)の写真も撮ってくださっている……!

澤部:町田、いつでしたっけ?

ーーあー、町田! 5曲目の「オータムリーヴス」は僕とジョルジュが町田市でワンマンライブをする時に書いてくださって、私が「ふと」ってタイトルで作詞をして一度だけ演奏したんですよね。

澤部:町田のライブは……2015年11月29日! もう2年も前なのか……。ちょうど「CALL」の録音が落ち着き始めた時期だ。

ーーそうだ。あの頃「CALL」ができて澤部さんが、「自分が作りたかったものを作れてしまった」って呆然としてたのを思い出します。それって幸福で怖いことで、それでもまた『20/20』を作った澤部さんは本当にすごいと思います。

澤部:いやいやいや……。でもまだやれるなって思えました。

ーー私は「ふと」を物寂しい秋をイメージして作詞したのですが、「オータムリーヴス」には私の書きたかった歌詞が書かれていました。鼻歌とギターの音だけがデモで送られてきて、お互いに歌詞の印象は共有していませんでしたが、曲のコードだけで世界観が通じることもあるんだと知って驚いてます。

澤部:僕、「ふと」の歌詞もすごくいいな、と思っていたんですよ。曲もいいの書けたなあって思ってたんですけど、僕とジョルジュのCDに収録されないことになったので、こっちに入れていいですかってレーベルに連絡しました。

ーーこれ最初にゆずっぽい曲を書いてって頼まれて書き始めたの覚えてますか? 当時は澤部さんがゆずを好きだって知らなかったんですけど、もしかして、「ゆずっぽい曲」って言われたのが曲を書く気合いになったのかなと後から思いました。

澤部:わっ、そうでしたっけ。全然ゆずじゃないですよね、ははは。でもゆず好きなんですよ。岩沢厚治さんの書く曲って内省的で、いい曲がたくさんあるんです。

ーー澤部さんの音楽も耳触りはお洒落で爽やかだけど、拭きれない闇みたいなものがありますよね。

澤部:小さい頃から、ひねくれ者なんですよ。戦隊モノとか見なかったくらい。

ーーにゃはは! でも漫画は好きだったんですね。

澤部:母親の影響なんですけど、最初期に読んだ漫画が『伝染るんです。』で。

ーーあっ、吉田戦車さんの。

澤部:あと藤子・F・不二雄のSF短編とか。

ーーあー。

澤部:産湯がサブカル! 母親曰く、自発性に任せてたらしいんですけど……おかげで漫画大好きです。

ーー自発性に任されても、最初にあんな面白いもの読んだら、自発的になるしかないですよね。でも、スカートはすごく漫画的だと思います。えーっと、なんでだろう。ちょっと考えます。七曲目の「さよなら!さよなら!」は斉藤由貴さんの「さよなら.さよなら!」とは関係ない……?

澤部:あっ、ないです! これは最初に「さよなら東京」ってタイトルを思いついたんですけど。

ーーあっ、良い! 良いー。

澤部:良いんですよ。でもアルバムタイトルを『20/20』に決めてたので、2020年の東京オリンピックで東京が変わっちゃう……っていう誤解が出るかなと思って迷ってやめたんです。実際、東京オリンピックとは関係なく、時代が過ぎて街が変わっていくことへの恐怖心を歌う曲だったので。

ーーほああ、なるほど。

澤部:詩は一行も書けていないくせに「さよなら東京」ってタイトル案はずっと頭にあったんですけど、ある日、勤めてた本屋が潰れてるのを知って、めちゃくちゃ落ち込んだんですよ。そこで、「ああああ!!!」ってなってパッと書けちゃって。

ーー澤部さんは割と歌詞にも感嘆符を使いますけど、タイトルに感嘆符を入れるのは難しそうです。絶妙に使えているのはなんでなのかなあ……?

澤部:「さよなら!さよなら!」は勇気いりました。感嘆符を使っているのは、歌詞と歌は100%合致していないことを逆手に取った表現なんですよ。「またいつか」って歌った感じと、歌詞に書かれた「またいつか!」の感じの違いを楽しんでいます。

ーー歌詞の内容的には「さよなら!さよなら!」と「私の好きな青」、それから次の「ランプトン」も、ないものについて書かれていますよね。ここの3曲は同じテーマが続いているなと思っていて、「さよなら!さよなら!」でいうと本屋さんはなくなったけど、澤部さんの中に永遠にあるわけじゃないですか。

澤部:そうそうそう。矛盾を抱え込むのが好きなんですよ。ないのにあるというか、あるのにないというか、そういうものにすごい惹かれますね。

ーーそれを踏まえた上でスカートの音源を聴き直すと、また面白そうです。

澤部:面白いと思ってもらえるか、面倒くさいと思われるか(笑)。

ーーだって、「私の好きな青」とか、完璧にないものじゃないですか(笑)!

澤部:まだ見たことのない世界をどうしてくれようっていう歌詞ですからね。でも耳触りは良くしました(笑)。

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