『Billboard Japan Hot100』チャート分析
DAOKO×米津玄師、テイラー・スウィフト、乃木坂46…複合チャートに反映された若年層の動向
【参照:ビルボードジャパン チャート・インサイト(2017年9月25日付)】
フィジカル作品の売り上げに加えてダウンロード/ストリーミング数、動画再生回数、Twitterのつぶやき数などを合算するビルボードジャパンチャート。9月25日付の1位はオリコンランキングと同じく福山雅治の「聖域」。とはいえ2位以下はこのチャートならではの結果になっている。中でも印象的な結果をいくつかまとめてみたい。
まずはランクイン6週目ながら先週と同じく2位になった、DAOKO×米津玄師の「打上花火」。この曲はオムニバスドラマ『If もしも』内で1993年に放送された岩井俊二監督の同名ドラマを原作にしたアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の主題歌で、動画再生回数で1位を記録したオリジナルアニメーションを使ったMVや、それぞれ1位となったダウンロード/ストリーミング数、DAOKOが『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に初出演したことも影響して1位となった、ネットでの話題性を可視化したBUZZチャートの順位が息の長い結果に繋がった。「打ち上げ花火は横から見ると平らなのか、丸いのか」――。それぞれの立場での真実があり、様々な選択肢で変化する運命の数奇さを描くという意味では原作に忠実ながら、この曲は男女デュエットによって複数の視点が盛り込まれたドラマ版主題歌にはない構成も魅力的で、10~20代に人気の高いポップアイコンがタッグを組んだ楽曲という意味でも印象的なチャートアクションと言えるだろう。
また、先週は31位だった山下達郎の「REBORN」も発売を受けて5位に急上昇。この楽曲は東野圭吾原作の映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の主題歌として書き下ろされた、再生をテーマにしたバラード。<あなたから私へと/私は誰かへと/想いを繋ぐために>という歌詞で時を超えて紡がれる物語が表現された、壮大なスケールの楽曲になっている。この結果を支えているのは、今週1位となったラジオでのオンエア回数。TVへの露出をほぼ控え、長年ツアーやラジオなどでの活動を続けてきた山下達郎のスタンスにも通じる結果となった。また、この曲には門脇麦が演じるセリによるバージョンも存在し、原曲とは異なるアコースティックギターとピアノを使ったたおやかな作風で魅力的なコントラストを描いている。
ビルボードジャパンチャートには、ストリーミングに積極的な洋楽リスナーや若年層の動向も反映されやすい。そうした意味では、先週の11位から順位を上げて9位になったテイラー・スウィフトの「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ~私にこんなマネ、させるなんて」にも注目を。この楽曲は「あなたが私にしたことに目を向けて」と誰かを痛烈にディスする内容の曲。全米で話題を呼ぶトラップの要素を上手くポップ化していて、今のアメリカの音楽シーンのムードが反映されている。歌詞は関係が泥沼化して久しいカニエ・ウェストやケイティ・ペリーに向けたものとの憶測も生まれているが、<ごめんね、前までのテイラーは電話に出られないの/なぜって?/彼女は死んだから>という歌詞は、確かに問題となったカニエ・ウェストとのやりとりになぞらえたものに聞こえる部分もある。
リリース前の楽曲では、乃木坂46の19thシングルで、彼女たちが出演する映画『あさひなぐ』の主題歌「いつかできるから今日できる」が、今週3位になったTwitterのつぶやき数とラジオオンエア回数のみで早くも61位に。これは映画&舞台版でそれぞれ主演を務めた西野七瀬と齋藤飛鳥がWセンターを務める楽曲で、斬新な構成が話題となった「逃げ水」から一転、メロディのよさをストレートに生かした楽曲となっている。20日に公開されたMVも執筆時点ですでに100万回再生を超えているが、この結果が反映されていない時点でのチャートインからは、引き続き彼女たちへの高い注目度がうかがえるようだ。