アルバム『Electric Trim』インタビュー
Sonic Youthのリー・ラナルド、新アプローチで挑んだソロ作を語る「一番興味があるのが歌うこと」
「Grateful Deadに再びインスパイアされている」
ーー以前のソロアルバムはギターを中心にした実験的な作品でしたが、ここ最近の作品はボーカルアルバムですね。ボーカルに関して、今あなたはどんなところに興味を感じているのでしょうか。
リー:いま、僕がいちばん興味があるのが歌うことなんだ。歌うことが大好きで、最近のライブではギターはリズムパートを弾いて歌うことに集中してる。ハーモニーも好きで、ライブでハーモニーを歌うことは僕にとってすごくスペシャルでスリリングな体験でもあるんだ。実は僕の歌声を聴いたことがきっかけで、ラウルが一緒にアルバムを作る気になってくれたんだ。だから、この作品はボーカルに集中しようって決めていた。その結果、今まででいちばん良いボーカルになったと思う。
ーー今回、歌詞の面でもユニークな試みをしていますね。6曲で作家のジョナサン・レセムとコラボレートしていますが、これはどういった経緯で?
リー:ラウルと音楽でコラボレートしたように、言葉に関しても誰かとコラボレートしたかったんだ。違った視線を歌詞に取り入れたいと思ってね。というのも、ここ数年、70年代によく聴いていたGrateful Deadに再びインスパイアされているんだ。Grateful Deadがユニークな理由のひとつは、ロバート・ハンターっていう歌詞だけを書いているメンバーがいたことで、それで自分でもやってみようと思った。ジョナサンとは付き合いが長かったから、彼に頼むことにしたんだ。
ーージョナサンとは、どんな風に作業を進めていったのでしょうか。
リー:まず僕から曲のアイデアと頭の中にあった歌詞のアイデアをジョナサンに送って、そこから何度も彼とやり取りをして言葉を組み立てていったんだ。時には、ジョナサンが日頃思いついた言葉を書き溜めているアイデアシートを送ってきてくれて、そこから歌詞を拾ったりもした。ある曲では、なかなか良い歌詞が思いつかなくて、アルバム制作が終わりに近づいてきたころ、ラウルが「歌詞が書けないならその曲はボツにしなきゃいけない」って言った時に、ジョナサンのアイデアシートから歌詞を選んでみたら驚くことにピッタリはまって、すごくいい歌詞が仕上がったんだ。あとで気がついたことなんだけど、アイデアシートには、ジョナサンが当時、執筆をしていた小説に関連したものもあった。ラウル同様、ジョナサンとのコラボレーションもとてもうまくいったから、彼ともまたコラボレートしたいね。
ーー言葉という点では『Electric Trim』というタイトルもユニークですね。
リー:このタイトルは、ちょっとしたアクシデントから生まれたんだ。「Human Love」という仮タイトルの曲のデモがあって、アコースティックのデモだったんだけど、そこにエレキギターを足したんでファイル名を「Electric」にしたんだ。そして、その後、そのデモを短くエディットしたから、またファイル名を変更して、「Electric」の後にトリミングしたという意味で「Trim」とつけて『Electric Trim』にしたんだ。それで、その曲の歌詞をジョナサンと書いていたんだけど、「Human Love」っていうタイトルがしっくりこなくてね。それでデモにつけていたタイトル、『Electric Trim』のまま採用することにしたんだ。なんの意味もないし、歌詞とも直接的な関連はないんだけど、なんとなく詩的にフィットする気がしてね。しばらくして、「Trim」が女性の下半身を示すスラングだということを知って大爆笑したよ。それでますます気に入ったんだ。だって、「エレクトリシティー」と「セックス」はロックの重要な要素だからね(笑)。だから、アルバムタイトルにもしたんだ。
ーー今となっては、これ以上ないタイトルですね。このアルバムを聴くと、Sonic Youthが活動休止をしているなかで、あなたがソロミュージシャンとして充実した時期を迎えていることが伝わってきます。今後の目標などはありますか。
リー:まず、来年にかけてできるだけライブをやりたい。このアルバムの曲はライブでやるのがすごく楽しんだ。だから、バンドメンバーのスケジュールと予算が許す限りライブをやる予定だよ。それから、僕とラウルとジョナサンでまた新しい音楽を作り始めたい。新しいデモも溜まってきたから、あとは時間を見つけるだけなんだ!
(取材・文=村尾泰郎)
■リリース情報
『Electric Trim』
発売日:2017年9月15日(金)
価格: 2,200円(税抜)
・ボーナス・トラック収録
・解説:村尾泰郎 / 歌詞対訳付
<Tracklist>
1. Moroccan Mountains
2. Uncle Skeleton
3. Let’s Start Again
4. Last Looks
5. Circular (Right as Rain)
6. Electric Trim
7. Purloined
8. Thrown Over the Wall
9. New Thing
10. 日本盤ボーナス・トラック
<参加アーティスト>
Lee Ranaldo – acoustic & electric guitars, vox, keyboards, electronics, drums,
Raul Refree Fernandez – acoustic & electric guitars, vox, keyboards, bass, drums
Sharon Van Etten - vox
Alan Licht - guitars
Nels Cline - guitars
Steve Shelley - drums
Kid Millions - drums
Tim Luntzel - bajo
Xavi de la Salud - horns
Cody Ranaldo – electronics
Mar Girona – backing vox
amazon
iTunes/ Apple Music
Spotify
Tower Records
HMV