福山雅治が語る、"音楽の源流”から辿りついた表現「いかに今日的な解釈として生み出すか」

福山雅治、ロングインタビュー

 福山雅治が、ニューシングル『聖域』を9月13日にリリースした。今作の表題曲「聖域」は、ドラマ『黒革の手帖』(テレビ朝日系)の主題歌であり、ガットギターとバンジョーのサウンドが大きなポイントとなった、これまでの作品の中でも挑戦的な一曲になっている。今回リアルサウンドでは、『聖域』の特設サイトでインタビューを担当している音楽ジャーナリスト・柴那典氏によるインタビューを掲載。2回に渡る特集でお届けする。

 前編のインタビューでは、「聖域」でガットギターとバンジョーを使用した経緯から、『SONGSスペシャル 福山雅治 SONGLINE ~歌い継ぐ者たち~』(NHK総合)での経験から得た音楽の背景に迫りつつ、カップリング曲を含めた今作についてじっくりと語ってもらった。そして話はデビュー27年の音楽キャリアに及び、自身の表現を振り返る貴重なインタビューとなっている。(編集部)

ガットギターがインスピレーションや創作意欲を刺激してくれた

――曲の感想を最初にお伝えしたいと思ったんですけれど、シンプルにすごく格好よかったです。2年ぶりというタイミングのドラマ主題歌というシングルで、すごく挑戦的な、かつバランス感のある曲が届いたと感じました。

福山雅治(以下、福山):ありがとうございます。

――この「聖域」という曲は、どういうきっかけから生まれたんでしょうか?

福山:まずドラマ『黒革の手帖』(テレビ朝日系)の主題歌というお話をいただきました。最初の打ち合わせでは「福山雅治の中にあるロックな感じでお願いします」というオファーだったんです。過去の曲で言うと「化身」のような、少し妖艶なロックの曲という。で、「わかりました、やってみます」と言ったものの、僕としては、今のマーケットや自分の立ち位置を含めて、正直、2017年の福山雅治の歌に求められるものはロック的なものじゃないんじゃないかな?と思ったんです。

――ほうほう。

福山:でも、せっかくオファーいただいたんだし、自分なりにやってみようと思って作り始めて。いつもギター1本で曲を作るんですけれど、今回はガットギターを使ってみたんです。いつも使っているアコースティックギターじゃなくて、一昨年にたまたま手に入れた1880年代のMartinのガットギターを。当時はPAシステムも全くない室内楽の時代だったので、サイズもすごく小さいもので。そのガットギターがことのほか自分のインスピレーションや創作意欲を刺激してくれたんです。弾いていたら、スパニッシュというか、フラメンコっぽい響きに聴こえてきた。そこからこの曲の土台ができたんですね。

――なるほど。それがスタート地点になったんですね。

福山:あとは、『SONGLINE』という番組(『SONGSスペシャル 福山雅治 SONGLINE ~歌い継ぐ者たち~』/NHK総合)でニューオーリンズでジャズの源流を取材して、現地でセッションしたことも、すごく大きかったです。ニューオーリンズジャズの編成って、ギターがいないんです。基本的に打楽器とブラスバンドで成立しています。

――なるほど。今の話の中でキーワードが沢山出てきたので、一つ一つお伺いしていきたいんですけれども。まずはガットギターについて。1880年代のギターということは、まだクラシック音楽の時代ですね。福山さんが仰ったとおり、スペインなどで室内楽のアンサンブルの一つとして使われていた楽器だった。今まで慣れ親しんできたアコースティックギターとは感触も違いました?

福山:全然違いました。これまで、いつも使っているアコースティックギターの鉄弦の倍音成分と僕自身が持つ声の帯域がちょっとぶつかるような感じがしていて。ボーカルが抜けてこないな、と。でも、ガットギターを使うと、それぞれの音の帯域がいい感じに分離して聴こえる。そのこともあって、この曲以外でも今作っている曲のほとんどでガットギターを使ってるんです。

――いわゆるアコースティックギターとガットギターは、弦の材質が金属かナイロンかという違いがありますよね。それによる音色の違いが大きかった。

福山:大きかったですね。その響きが新鮮だったんです。同じコードを弾いたとしても違った響きに聴こえてきて、メロディも浮かびやすかったんだと思います。

福山雅治「聖域」(short ver.)

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