森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.66
RHYMESTER、AKLO×JAY'ED、LUCKY TAPES……快楽的な“ダンス感覚”持ち合わせた新作
ネオ・ソウル、ジャズ、ヒップホップ、エレクトロなどが有機的な融合を繰り返し、ジャンルの壁を超えた新しい音楽が生まれ続けている世界の音楽シーンとリアルタイムで同期しながら、ここ日本でも“踊れる”ポップミュージックが次々とリリースされている。今回は音楽的な質の高さと快楽的なダンス感覚を持ち合わせた新作を紹介したい。気持ち良く踊れるかどうかは、いまやポップスの大前提だと思う。
RHYMESTERの新アルバムのタイトルはずばり『ダンサブル』。70年代後半のディスコサウンドをアップデートさせたリードトラック「Future Is Born feat.mabanua」(ヒップホップの誕生と未来をテーマにしたリリックも最高)で示されていた通り、前作『Bitter, Sweet&Beautiful』以来約2年ぶりとなる新作は、RHYMESTERのキャリア史上、もっとも“踊れる”アルバムに仕上がった。KIRINJIとのコラボレーションによる未来的ファンクチューン「Diamonds feat. KIRINJI 」、サイプレス上野、HUNGER(GAGLE)とともに高度なラップスキルの応酬が楽しめる「爆発的 feat. サイプレス上野 & HUNGER (GAGLE)」など楽曲のバラエティはとても豊かだが、“ダンサブル”というテーマを貫くことで、現代的なダンスミュージック・アルバムとして成立しているのだ。トレンドの芯を捉え、自らの表現をアップデートさせた大充実作だと思う。
JAY'EDのアルバム『Here I Stand』に収録されていた「All I Did Is Grind feat.AKLO」も素晴らしかったが、まさかここまで本格的なAKLO×JAY'EDのコラボ作品が聴けるとは! レコーディング・スタジオでたまたま顔を合わせたAKLO、JAY'ED、プロデューサーのBACHLOGICがゼロの状態からセッションをスタート。そこで手応えを得た3人はさらにソングライティング・セッションを重ね、1st EP『Sorry...come back later』のリリースへ辿り着いた。制作ではBACHLOGICがトラック、JAY'EDがメロディ、AKLOがリリックを担当していたそうだが、海外のトレンドと強く重なったビート、ソウルネスを色濃く反映させたメロディとラップの融合は本当に刺激的。たとえばカルヴィン・ハリスの『Funk Wav Bounces Vol.1』と続けて聴いても何の違和感もないほどの快楽がここにある。
ロバート・グラスパー以降、カマシ・ワシントン、サンダーキャットといった現行のジャズ・アーティストとの親和性を感じさせてくれるサウンドによって、日本の音楽シーンの新たな潮流を生み出しつつあるWONKの新作は、ブラックミュージックの世界的な流れと共鳴するスムース&ダンサブルな『Castor』、エクスペリメントな側面を前面に押し出した『Pollux』の2枚同時リリース。AOR、シティポップのユーザーはもちろん、一般的なJ−POPファンにも十分に楽しめるポップアルバムと先鋭的なヒップホップを軸に実験的なサウンドを志向する作品を同時に体現できること自体がWONKの魅力であり、アイデンティティであると言ってもいいだろう。