ニューシングル『ときめき/隣の女』インタビュー
チャットモンチーが明かす、デビュー10周年の現在地「やりたいことが進化しているのはすごく幸せ」
チャットモンチーが、3月4日にニューシングル『ときめき/隣の女』をリリースした。メンバーの橋本絵莉子(Gu,Vo)、福岡晃子(Ba,Vo,Cho)に、世武裕子(Piano, Synthesizer)、北野愛子(Dr. / DQS, nelca / ex. your gold, my pink)という2名をサポートに迎えた、全員女性の通称「乙女団」という編成でレコーディングされた本作は、ピアノを軸とする艶かしい演奏はもちろん、どこか毒気を感じさせる歌詞もまた魅力的だ。「いつだって恋がしたいよ/あなた以外と」と歌う「ときめき」は、どんな着想から生まれたのか。また、前作『こころとあたま/いたちごっこ』に続きサポートメンバーと作品を作り上げることによって生まれた、バンドサウンドの新局面とは。デビュー10周年を迎えた二人にじっくりと話を聞いた。
「みんなが日常だと思っているものも、いろんな選択肢の中から選ばれてそこにある」(福岡)
――今作『ときめき/隣の女』は、前作の恒岡章さん(Dr. / Hi-STANDARD、CUBISMO GRAFICO FIVE)、下村亮介さん(Key. & Cho. / the chef cooks me)をサポートメンバーとして迎えた『こころとあたま/いたちごっこ』の疾走感のあるロックサウンドともまた違って、生々しい重さ、張り詰めた空気を楽曲から感じました。「ときめき」は恋愛がひとつのテーマとなっている曲ですが、どんな経緯で生まれたのでしょうか。
福岡晃子(以下、福岡):昨年の夏くらいに歌詞から作っていった曲で、まず、恋愛の歌詞をしばらく書いていなかったので久しぶりに書こうと思ったんです。今、チャットモンチーで恋愛の曲を書いたらどうなるかなと思って。一番の歌詞が最初にできていて、昨年の夏に、徳島にえっちゃんと一緒に帰ったときに見せたら、「めっちゃいい」って言ってくれて、5分くらいで曲をつけてくれて。
橋本絵莉子(以下、橋本):歌詞がすごく素直でストレートで、ちゃんと重みもあって、すごく良いなって思って曲がすぐに浮かんだんです。歌詞が一番まであったのでそれにまず曲をつけて。そこまでは徳島で作って、あとは東京で作りました。
――ここで歌われる恋愛の風景というのは、ある種の倦怠も含んでいて、長く付き合ったカップルが特に感じるところじゃないかと思います。でも、音楽で表現するのは難しい感情かもしれません。
福岡:今、自分が、恋愛というよりは愛をテーマにした曲を書くとして、どういうことを書きたいだろうと考えた時に、まずサビのフレーズが浮かびました。入り口があのサビだと、「どんな曲?」ってなるじゃないですか、きっと。
――「いつだって恋がしたいよ/あなた以外と」というフレーズは確かに衝撃的です。
福岡:恋愛の曲に取ってもらっても良いという気持ちもあるんです。でも、書いている時の心理としては、みんなが日常だと思っているもの、普通だとしているものも、いろんな選択肢の中から選ばれてそこにあるんですよ、ということを恋愛の曲として書きたいと思っていました。あとは、やっぱり私が好きで書きたいことってどうしてもモテない恋愛の曲というか(笑)。あんまり、モテそうにない素の気持ちを書きたいなと思ったんです。えっちゃんは、この歌詞を見て「女からの警告だ」って言っていましたけど、まさにそういう感じで(笑)。「気をつけろ!」って感じの。
橋本:(笑)。
――相手への「気をつけろ」というメッセージでもあり、一方で「思うばかり/逃げられないのに」とも歌われているように、自分自身が相手を選んだことの重み、あなた以外の選択肢はなかったという思いの表現でもある。深い曲です、これは。
福岡:自分はあまり年齢を意識したことがなかったんですけど、こういうことを書けるようになったし、えっちゃんにも歌ってもらえるようになったっていう。いろんな準備が整って、それを女だけでやるという感じがすごく良いなと思いました。
――絵莉子さんはここで描かれている感情についてどう思いますか。愛情は溢れているけど、もちろん不満もあって、でもこれを選び取った、という。
橋本:もしかすると男の人にない感情なのかもしれないですよね、この気持ちって。だから乙女団(橋本絵莉子、福岡晃子に女性サポートの世武裕子(Piano, Synthesizer)、北野愛子(Dr. / DQS, nelca / ex. your gold, my pink)を加えた新編成の名称)でやれたのは本当に嬉しいです。