片平里菜、対バン企画でMy Hair is Badと初共演 同世代の2組がラブソングにこめる思い

片平里菜×マイヘア対バン企画レポ

 片平里菜が6月から開催していた『片平里菜 2マンツアー2017 “LOVE”ツアー』が、7月19、20日の渋谷クラブクアトロ公演をもってファイナルを迎えた。

 片平にとって初の対バン企画は、タイトルどおり片平里菜が“LOVE”なアーティストを招くというコンセプトでゲストを決定。大阪BIGCATはGoose house、福岡DRUM Be-1はOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND、名古屋SPADE BOXはGLIM SPANKYとソールドアウトでまわり、渋谷クラブクアトロでは、19日にMy Hair is Bad、20日にチャラン・ポ・ランタンを迎えた。本稿では、My Hair is Badを迎えた19日の様子から2組の初共演について記したい。

 前回片平のライブを観たのは、中野サンプラザでのワンマン公演だった。この日はライブハウスでの対バンライブ、しかも相手はライブバンドとしての活躍著しいMy Hair is Bad。そんな同世代の彼らに“ライブで負けたくない”という思いで挑んでいくような、片平の熱いステージを見ることができた。

 片平がMy Hair is Badの渾身のパフォーマンスを受けてステージに登場すると、一輪の花が咲いたようにステージが華やぐ。「Oh JANE」が始まると、華やかなだけではない、どこか強さも感じるハスキーな歌声で会場を包み込んだ。片平の恋愛ソングに登場するのは、「Oh JANE」「BAD GIRL」「女の子は泣かない」といった曲たちで表現される、少し奔放で強がりな女性。恋愛に翻弄されながらも前に進もうとするポジティブな言葉が、多くのリスナーを勇気づけてきた。一方で、先に登場したMy Hair is Badは、「真赤」や「元彼氏として」のように男性目線で未練や恋愛のやりきれなさを歌う。2組の楽曲は登場人物の性格や心情、情景が浮かびやすく、リスナーの深い共感を呼んでいる。

 この日の互いのMCやステージには注目すべき点があった。片平がマイクスタンドを使って歌いあげた「ラブソング」では、<ラブソングばかり独り歩きした>という一節があり、混沌とした都会のなかに溢れかえるラブソングに対しての思いが歌われている。それを意識したかのように、My Hair is Badのライブで椎木知仁(Vo/gt)は「ラブソングが独り歩きしないように、自分のラブソングを自分でお墓に入れられるように、自分のラブソングを自分で燃やせるように、この街の歌を歌います」と告げ、渋谷が舞台として描かれた「卒業」を歌った。その後に登場した片平も「マイヘアの曲を初めて聴いた時、ムカついた。才能と熱量に嫉妬した」と言い、「卒業」をカバー。お互いの存在と作品へのリスペクトが感じられた一幕だった。片平は同曲を歌い終えると、「ムカつくって言ったけど大好きです」と照れくさそうにつぶやく。My Hair is Badもライブ中「片平里菜」という“なまえ”を何度も叫び、この日のステージに招いてくれた片平への感謝の思いを伝えた。

 さらに、My Hair is Badがライブごとに言葉を変えて披露する「from now on」の中で椎木は、自分たちが愛や恋について歌うのは、今を生きていて、今起こっていることだからだと語る。一方で、片平里菜は「Love takes time」を歌う前にこう言う。「『LOVEツアー』をやってきたけど、愛とか恋とかわからないから……一緒に歌ってください」。“愛や恋しかわからない”と歌うMy Hair is Badと、“愛や恋とは何なのか”を探し求めるように歌う片平里菜。当たり前ではあるが、同じラブソングであっても、それぞれのアーティストによって視点も歌う意味も変わってくるということだ。

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