會田茂一の“裏番長”的な仕事ぶり……『ぼくらの勇気 未満都市』を機に多彩なキャリアを辿る

 また、『ぼくらの勇気 未満都市』のほか『池袋ウエストゲートパーク』、『けものがれ、俺らの猿と』、『スクラップヘブン』といったドラマや映画のサウンドトラック、CM音楽なども手がけている。ちょっと変わったところでは、デスメタルを題材にした人気コミック『デトロイトメタルシティ』が映画化された際、KISSのジーン・シモンズが歌った劇中曲「ファッキンガム宮殿」を作曲してもいた。

 そうした彼の代表的な仕事が、木村カエラ「リルラ リルハ」(2005年)だろう。會田が作編曲とプロデュースを担当したこの曲は、ギターリフが印象的なロック・アレンジになっており、木村カエラの陽性で元気なキャラクターによく似合っていた。それまでのモデル活動のイメージが強かった彼女は、メジャー3作目のこのシングルでボーカリストとして認知されたといってよい。楽曲提供やプロデュースだけでなく彼女のツアーにも参加した會田は、木村カエラがロックフェスに出るのが当たり前のことになる過程で、大きな役割を果たしていた。

 會田のプロデュースや編曲は、本人がギタリストであるだけにギターにポイントを置いたものが多いが、幅広いジャンルでの経験、教養を背景にしてポップな方向にもエレクトロニックな方向にもしなやかに対応している。自身の音楽活動では骨太で男くさいロックが一つの軸としてあるが、女性アーティストに関連したものの割合が意外に大きい。ベイビーレイズの編曲、チームしゃちほこでの演奏参加などアイドル方面でも働いている。相手の元気さを引き出したり、優しさに寄り添ったり、場面ごとに感覚を切り換える。

 知る人ぞ知る、信頼できる仕事人というのが、會田茂一なのだ。その意味で彼は、かつてとはまた違った形で「裏番長」的な存在になっている。

■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。

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