androp×Creepy Nutsの“違い”が生む魅力ーーBUMP、女王蜂らロック界コラボの歴史から考える

ロックシーンで話題の“コラボ”を解説

 様々な場面で価値観の多様性が重視されるようになって久しい昨今。バンドによる他アーティストとのコラボレーションの中にも、驚きのタッグによって制作された楽曲が多く生まれている。そもそも、コラボ曲が「異なる価値観を持つアーティスト同士の共同作業」だと考えれば、相手との音楽性が遠ければ遠いほど、その結果が誰も予想のつかない魅力的なものになるのは当然のこと。つまり、コラボレーションとは、バンドが普段の音楽性から一歩踏み出して、新たな可能性を追求するための場所になるということだ。近年の日本のロック・シーンにもそうした楽曲は多数あり、バンドの新しい表情をリスナーに見せてくれる。

BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」

BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」

 たとえば、BUMP OF CHICKENにとって初のデュエット形式でのコラボ曲となった「ray」は、メンバーの演奏の記名性がダイレクトに反映される「バンド」と、無数のクリエイターがネット上でN次創作を繰り広げる「ボーカロイド」という、まさに正反対とも言える2組が手をとった楽曲だった。初音ミクのプログラミングはkz(livetune)が担当。一見水と油とも思える藤原基央と初音ミクの歌声の違いが、むしろコラボ曲ならではの魅力を生んでいる。ライブではスクリーンに投影した初音ミクと演奏を繰り広げる様子も印象的だった。

Base Ball Bear「The Cut -feat. RHYMESTER-」

Base Ball Bear「The Cut -feat. RHYMESTER-」

 バンドの音楽性を広げるという意味では、「The Cut -feat. RHYMESTER-」もその好例だろう。ここでは過去にも様々な形でラップの奥深さを多ジャンルに伝えてきたRHYMESTERを迎え、豊富な引出しを持つソングライター・小出祐介のリミッターをさらに取り払うような音楽性を実現。制作時にはともにスタジオに入りほぼゼロから組み立てていったそうで、両者の化学反応がリアルな形で収められている。以降のライブでは小出祐介がラップを担当するなど、パフォーマンス面でも可能性を広げた楽曲と言えるのではないだろうか。

女王蜂「金星 Feat. DAOKO」

 2017年の楽曲では「金星 Feat.DAOKO」も忘れられない。この楽曲は音源化前に、DAOKOのツアーに女王蜂がゲスト出演して披露された妖艶なディスコ・チューン。小島英也(ORESAMA)と浦本雅史(Soi Co.,Ltd)を迎えたトラックの上でリズム感も節回しも異なるアヴちゃんの艶やかな歌とDAOKOの言葉数の多いラップが融合し、妖しさの中にも普段の女王蜂にはないキュートさが加わった。DAOKOのメジャー・デビュー曲「水星」(tofubeatsのカバー)になぞらえて曲名が「金星」になっているのもコラボならではだ。

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