3rdアルバム『生まれてから初めて見た夢』リリースインタビュー(その2)
乃木坂46 久保史緒里と山下美月が考える3期生の現在地 「フレッシュさ以外の武器を持ちたい」
「アイアの公演を終えて、多少の気持ちの変化や自信がついた」(久保)
――『プリンシパル』が終わるとすぐに、乃木坂46の『5th YEAR BIRTHDAY LIVE』でさいたまスーパーアリーナに立ちました。1期生、2期生と同じセットリストの中に入って大きなステージ立った感想を教えてください。
山下:私たちが参加させていただけると思っていなかったし、歌わせていただいたのも「ハルジオンが咲く頃」「強がる蕾」といった深川(麻衣・2016年にグループを卒業)さんのセンター曲やソロ曲でした。なぜ私たちがこの曲を歌わせていただくのか、その意味をすごく考えました。それから、先輩方と一緒に活動するのも初めてだったんですよ。先輩方の偉大さや仕事に対する熱意も感じられたし、3期生はまだ全然できていないなって思うこともいっぱいありました。
久保:3期生だけで披露する時間を大事なイベントの中でいただけたんですけど、あの場で3期生を知らない方って多かったと思うんですよ。そんな中で温かく迎え入れていただいて、あんなに素敵な景色を見させていただいた。あの景色が見られたのは先輩方がいてくださったからなので、そのことを忘れちゃいけないなって、あの場に立った瞬間に感じました。この景色をもう一度見るために、乃木坂46に貢献できるように頑張ろうって強く思うきっかけになった日でした。
――そして5月には3期生単独ライブが全8公演の日程で行なわれて、今度は自分たちだけでライブを披露することになりました。
山下:お金を払っていろんな地方から観に来てくださる方もいるし、3期生に会いたいって気持ちを持って来てくださるので、私は全席を“神席”にしたいと思っていたんです。一番後ろや端の席でも、「ああ、この席はずれだったな」って思わせたくなくて。会場のアイア(AiiA 2.5 Theater Tokyo)は、お客さんとの距離がすごく近いんですよ。こんなに近くでお客さんとコミュニケーションをとれるライブもなかなかないから、来てくださった方々全員に「3期生最高!」って思って帰ってもらいたいって気持ちがありました。でも、そのためには3期生だけで盛り上げていかなきゃいけない。今まで先輩方やスタッフさんに助けてもらってばかりで、自分たちじゃまだまだそんな力がないんだなっていうことも痛感したし、そのためにもっと頑張らなきゃなって思った公演でした。
久保:単独ライブが始まる前、北野日奈子さんに「アイアはお客さんとの距離が近くて、メンバーが胸に秘めている熱量の差が伝わりやすいから、みんなで気持ちを揃えていかないとだめだよ」ってアドバイスをいただいていました。プレッシャーを感じていた子も結構多かったし体調を崩しちゃう子もいたので、やっぱりそれぞれの気の持ち方に差が出るのではという怖さはずっとありました。気持ちを揃えていくことは、個人的に意識していたポイントでした。
――近さということでいえば、久保さんは乃木坂46加入前、昨年春の乃木坂46アンダーライブ山形公演に観客として行かれてますよね。
久保:その時のアンダーライブが私にとって人生初のライブでもあり、初めて乃木坂46を生で見た経験でした。アンコールの「乃木坂の詩」の時に、私は振付を知らなくて踊れないのに、知らない間に客席で体が動いてたんですよね。3期生ライブ中にその記憶がよみがえってきたんです。「今度は自分が皆さんの心を動かせてるのかな」って思って、嬉しさも感じました。
――3期生としての楽曲は「三番目の風」「思い出ファースト」の2曲なので、セットリスト中のほとんどの楽曲は1期生や2期生が歌ってきた楽曲でした。プレッシャーなどはありましたか?
山下:3期生単独ライブではセットリストの二曲目、先輩方の楽曲を最初に披露するのが「ガールズルール」なんですが、私は昨年12月の『お見立て会』の時からこの曲で白石(麻衣)さんのポジションをやらせていただいていて。そのこともあって、「ガールズルール」は自分にとって大事な曲なんです。白石さんと秋元(真夏)さんが観に来てくださったときに、自分のポジションに他の誰かがいるってどう見えるんだろうということをすごく考えました。自分の代わりに入った子が失敗したりおどおどしたり、堂々とパフォーマンスしてなかったら、やっぱり「えっ?」って思うじゃないですか。絶対にそう思われたくなかったし、この子に私のポジションを任せてあげたいって思っていただけるくらいのパフォーマンスをしなきゃと思って、めっちゃぎりぎりまで練習してました。やっぱり、一曲一曲にいろんな先輩方の思い入れが詰まってると思うんですよ。だからこそ私たちも本気で先輩たちの魂を受け継いでかなきゃと思って、毎回大切に歌わせていただいてます。
――少しのミスでもすぐ気づかれるような近さの会場で、生演奏に合わせて「悲しみの忘れ方」「きっかけ」などを歌い、それぞれがソロで歌唱するパートもありました。この経験値も大きかったと思います。
久保:たぶん、どのメンバーも生演奏に合わせるコーナーはすごく緊張していたと思いますし、あのコーナーを通して強くさせていただいたなって感じます。ソロパートはそれぞれの役目を果たしてつないでいく難しさも知りました。それを成功させることによって得られるものも知ったので、やってよかったなって心から思えるパートでした。
山下:「きっかけ」で一人一人がソロパートを分担してつないでいくんですけど、私が担当させていただいたのが高いキーの部分だったんです。練習で何回やっても全然出なくて、やればやるほど出なくなっちゃって……。でも、自分の苦手な部分から逃げずに正面からお客さんに見せられるものを作ろうと思えたのは、やっぱりメンバーのみんながいたからだと思います。桃ちゃん(大園桃子)のピアノ演奏もあったし。
――「きっかけ」の次に歌った「君の名は希望」では大園さんがピアノの生演奏を担当しました。
山下:朝早くレッスンの前に来て練習したり、レッスンが終わってからも夜遅くまで練習している桃ちゃんをずっと見てたから。リハの時も最初は音が止まっちゃって、それを見て私たちまで悔しくなっちゃって。みんなボロボロ泣きながら最終リハーサルとかやってたんですけど。でも、たとえピアノで失敗しちゃったり音が止まっちゃったりしても、私たち全員が歌ってつなげるから大丈夫だよっていう気持ちで「君の名は希望」を歌っていました。桃ちゃんの頑張りがあったから3期生ライブが成功したって、みんなわかってる。ありがとうっていう気持ちでいっぱいです。
――AiiA 2.5 Theater Tokyoでの公演を完走したのち、日比谷野外音楽堂でも3期生の単独公演がありました。8公演のライブを経たあと、日比谷ではライブに対する意識は変わっていましたか?
山下:3期生ライブが始まったばかりの時は、もちろん全員で頑張ってはいたけれど、たとえばここが自分のアピールポイントだから頑張ろうとか、この曲だけは絶対に誰よりも輝きたいとか、いろんな思いがあってみんなの意識がバラバラでした。でも一週間ライブをやって、みんなの思いが同じ場所に向かってきたことをすごく感じました。それから、3期生の武器はフレッシュさだと言われるんですけど、フレッシュさしかないんだなって、アイアでのライブの時に少し感じてしまって。もしこの先、4期生や5期生が入ってきたら、私たちのフレッシュさってなくなるわけじゃないですか。その時に、「3期生には何があるの?」って言われたくない。だから、フレッシュさ以外の武器を持ちたいって、個人的にすごく感じていました。日比谷ではみんな、盛り上げ方もすごく意欲的になって全力で煽ったり、MCも梅ちゃん(梅澤美波)と(伊藤)理々杏が2人でずっと回してくれました。日比谷直前の三日間は地方でイベントをやっていたので、全員で集まることができなかったんですよ。でも、当日に集まって短いリハの中だけでちゃんとできていた。そういうところを3期生の強みにしていけたらと思いました。
久保:アイアで出し切ったという思いはあったんですけど、それでも日比谷で感じたのは「アイアの時よりも楽しめてるな」ということでした。ほんの少しだけど、アイアの公演を終えて、多少の気持ちの変化や自信がついたし、気持ちに余裕ができたのかなあと。日比谷では「8公演重ねてきてよかった」と改めて思いました。
――日比谷のステージに立ったところから見える景色ってどんな感じでした?
山下:すっごい綺麗でした!
久保:すごい綺麗。時間が経つにつれてだんだん暗くなって、景色がまた変わってくるんですよ。明るい時と暗い時、それぞれに良さがあって。最初は遠くのお客さんまで一人一人、楽しんでくださってる顔が見える。暗くなってくると、サイリウムのカラーがすごく綺麗で、自分のファンの方があそこにいるんだって見つけられたりもするし。「乃木坂の詩」の時に見た一面紫の景色は忘れないです。
山下:「何度目の青空か?」を、空の下で歌えたというのがすごく気持ちよかったです。屋外だから声もよく響くし、生演奏の音も綺麗に聴こえてくる。「空、きれいだなあ……」って思いながら「何度目の青空か?」を歌ってました(笑)。