女性ラッパーたちの勝負の行方は? HIPHOPの未来照らした『CINDERELLA MCBATTLE』を観た

CINDERELLA MCBATTLE第2回レポート

ベスト8では注目カードで番狂わせも

 そしてベスト8のバトルが始まる。前回涙をのんだワッショイサンバは独特のワッショイ節でCESIAを翻弄。優等生なお姉さんスタイルでアンサーをしながらも「but無理is良くない。新曲のMVが明日リリース! 本来バトルはこんな風にプロモーションに使っても良いんだよ!」と自身のユニット・もつ酢飯の曲のタイトルに繋ぐなどユニークな戦い方で勝利した。

 しかしここに来てまゆちゃむとCOMA-CHIという大激戦が始まる。高速ラップを得意とし、戦極女帝杯でも優勝した19歳のまゆちゃむと大御所COMA-CHIの接戦。「19歳なんて私にとって赤ちゃんみたいなもの。母乳飲みますか?」とCOMA-CHIがまゆちゃむに問えば、まゆちゃむは「おばさんって何で皆下ネタに走るの?」と若さアピールで反撃。なによりも二人ともスキルが高いので瞬きする暇も与えない熱い試合となったが、より勢いのあったまゆちゃむの勝利となった。優勝候補とも言われていたCOMA-CHIの敗北に衝撃が走ったが、今後の勝負の行方がますますわからなくなり、会場の空気は更に盛り上がった。

 そして椿とMC Mystieのバトルも見逃せない。筋の通った男らしさを見せつける椿に対し、アニミズムとフェミニズムを融合させた思想の持主のMC Mystie。本来であればMCバトルは自身の強さを誇示し、相手の弱みを叩くものであるが、この二人のバトルは愛に溢れたリスペクト合戦となった。「貴女と今日ここで当たって良かった」とお互いに語り合う姿は涙すら誘う。しかし勝利への深い執念を見せたのは椿だった。「女は男には勝てない、だからこそこのフリースタイルを用いて平和を願いたい」という独特なテーマでラップをして観客を魅了するMC Mystieに対し、「平和を願うスタイルはMystieさんに譲ります。でもバトルの勝ちは絶対譲れない」と強い意志を表した椿の勝利となった。

 CHARLESとぱっつんのバトルではCHARLESが培ってきた底力を見せたと同時に、彼女のもつスキルや母として得た強さでぱっつんを圧倒し、CHARLESの勝ちとなった。

(○)ワッショイサンバ VS (×)CESIA
(○)まゆちゃむ。 VS (×)COMA-CHI
(○)椿 VS (×)MC Mystie
(○)CHARLES VS (×)ぱっつん

そして優勝の行方は…… 

 準決勝となるベスト4。まゆちゃむとワッショイサンバのバトルではワッショイサンバが「そろそろ日が沈む時間。まゆちゃむ西に沈みますか?」とワッショイ節で関西出身のまゆちゃむに畳み掛けるも、まゆちゃむが機転の早さとラップのスキルを以って上手くアンサーする。2人共言葉遊びが上手い故に接戦となるもまゆちゃむの勝利となった。

 更に椿とCHARLESのバトル。ぐいぐい来るCHARLESに対して椿は「母親の顔になったお前を見た時に本当に嬉しかったんだよ」と姉御の余裕を見せる。CHARLESの勢いに対して揺らぐことのない芯の強さを見せつけた椿が勝ち、決勝へと進んだ。

(○)まゆちゃむ。 VS (×)ワッショイサンバ
(○)椿 VS (×)CHARLES

 そして決勝戦が始まる。HIPHOPシーンという男社会の中で冷遇されて泣きを見るも、リベンジを誓っていくつもの現場をこなし、CDもリリースした叩き上げの椿、19歳という若さと天性のスキルと頭の良さでミサイルのように突き進むまゆちゃむ、この二人がぶつかり合う。

 まゆちゃむが鋭利な高速ラップでいくら畳み掛けようが椿の芯の強さは揺るがない。それをわかっているのか、まゆちゃむも真剣な表情で椿の言葉を受け止めながら、がむしゃらにアンサーをする。しかし椿はぶれない強さを見せる。「どけないんだわ。10年間ここで叫び続けてる」。椿が10年かけて築いてきたものはあまりにも大きかった。激しいバトルの余韻が残る中、オーディエンスによる厳正なる審査の結果、『CINDERELLA MCBATTLE Vol.2』の優勝は椿に決まった。

ラストには、勝者・椿、ゲストのMARIAがパフォーマンス

椿

 長年、HIPHOPの現場で叩き上げられてきた椿が遂に日本一に輝いた。表彰式では「友達に子供が出来たんですけど、その子にこのティアラあげるって約束したんです。自分じゃ似合わないのわかってるので」と照れながら椿は語った。ステージ上では男前な彼女もマイクを置けばひとたび普通の女の子に戻る。

 今回は準決勝に終わったものの、まゆちゃむのスキルと頭の良さは群を抜いて秀でている。まだ19歳という若さの彼女が、更に現場経験を積んだ時、ライバル達の前に大きな壁となって立ちはだかることになるだろう。それはまゆちゃむに限った話ではない。若いチャレンジャーそれぞれに伸びしろを感じた。彼女たちには今回流した涙を糧に今後もがんばってもらいたい。

 バトルの後も熱気冷めやらぬままスペシャルゲストのライブが続く。

 優勝者となった椿のライブが元々予定されており、奇しくもウィニングライブを披露することとなった。近々アルバムをリリースする予定の椿だが、先だってMVが公開された「遺言」を熱唱。叩き上げで身に着けてきたラップスキルを見せつける。そして「I'm a Rapper」「福岡」の他、椿の代表作「LUNATIC」も披露。新しい女王の存在感を存分に感じさせる堂々とした歌いっぷりであった。

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