J-METALのDNAを継承、TSPが目指す理想のバンド像「媚びずに自分たちの音楽をアピールしたい」
元X JAPANのTAIJI(Ba)とShu(Gt)によるCloud Nineの二人によって結成され、2010年から正式始動したTSP。TAIJIの死後もライブを中心に精力的に活動してきた彼らが、44MAGNUMのSTEVIE(Vo)を迎えた新体制で5月24日にアルバム『TRIBAL EVOLUTION』をリリースした。今回のインタビューでは、同作のことはもちろん、バンド結成から現在に至るまでの経緯、さらには音楽シーン全体でのバンドの立ち位置、求める理想の音楽像などについてメンバーにじっくりと話を聞いた。インタビュアーはライターの西廣智一氏。(編集部)
「プロジェクトから『ちゃんとバンドにしたい』」(Shu)
ーーTSPのスタートは、そもそもShu(Gt)さんとTAIJI(Ba)さんの出会いから始まるわけですよね。TSPの前にはCloud Nineというバンドで一緒でしたし。
Shu:そうですね。でも出会い自体はもっと前で、彼がX(のちのX JAPAN)をやる前のバンド……DEMENTIAっていうバンドの次で、PROWLERというバンドなんですけど、そのときのドラムが僕の同級生で、そこでTAIJIと知り合って。10代の頃、20歳前ぐらいの話ですね。ただ、彼がその後Xで有名になりすぎちゃったので、それからはあんまり付き合いがなくて。LOUDNESSに入ったぐらい(1992年加入)からまた絡みだしたんです。
ーーそれまでバンドを一緒にやることは?
Shu:なかったですね。その同級生のバンドにも、彼がいたのはほんの一瞬で。ライブはやってないんじゃないかな。
ーーではCloud Nineで初めて一緒に音楽活動を始めたと。
Shu:はい。確か2000年ぐらいかな。出会ってから相当時間が経ってますね(笑)。
ーーそこでも一緒に活動することは短期間で、さらに10年近く経ってからこのTSPがスタートするわけですが、どういう経緯だったんですか?
Shu:Cloud Nineのベースがアメリカに行ってしまって、TAIJIが「俺、弾くよ」って言ってくれたんですけど、彼は……ひとつのバンドが長続きしない傾向があったので(笑)。だったら別の場を作ろうとことで、HINA(Ds)を呼んで3人でセッションすることになったんです。
HINA:私はもともとX JAPANが大好きで、それがきっかけでドラムを始めたので、TAIJIさんと会うってこと自体が「え?」って感じで。スタジオに入る前にごはんを一緒に食べたんですけど、そのときに興味を持ってもらえて、ファンだった自分からすると夢のような話でした。そこからスタジオに入ったら、いきなりTSPが始まっちゃったみたいな感じで、ちょっと信じられなかったです。だって、テレビで観てた人と一緒にセッションしてるんですから。嬉しいよりも「大丈夫か?」って戸惑いのほうが大きかったかもしれないですね。
ーー最初のセッションの時点で、こういう音楽をやりたいというビジョンはありましたか?
Shu:いえ、特に何も決めないでスタジオ入ったので。TAIJIと僕ができる曲を何曲かHINAに渡して、「叩けるようにしておいて」と伝えてからスタジオに入ったんですけど、まあおそらくその曲はやらないだろうなと思っていたので(笑)。案の定、いきなり「Shu、何かいいリフある?」「こんなのどう?」って曲作りを始めましたし。
HINA:結局、練習してきた曲を1曲もやらなかったんですよ(笑)。
Shu:予感はしてましたけど、いつもそんな感じで作り出すことから始めるので。で、最初は「TAIJI & Shu PROJECT」という、文字どおりプロジェクトとして動いていたんですけど、そのうちライブをやるようになると「ちゃんとバンドにしたい」ということになって、新たにボーカルを迎えてどんどん進んでいった感じです。
「TAIJIがレコーディングした音源を世に出さないことには」(Shu)
ーー2010年後半からTSPの活動が本格化していきますが、2011年7月にTAIJIさんが亡くなってしまいます。そこから活動を継続することを決断するまでに、かなりの覚悟が必要だったと思いますが?
Shu:その頃はレコーディングもしていて4、5曲録ってたのかな。そのTAIJIが最後にレコーディングした音源を、とにかく世に出さないことにはとまず思ったんです。彼が必死にやっていたのも見てますし、それなりに自慢できる曲でもあったので。
ーーまず続けるというよりも、アルバムを世に出すことが先だったと。そこから今日まで、メンバーチェンジをしつつ活動が続いています。TSPは日本のロックシーンの中で、どういったものを表現しようと考えてきましたか?
Shu:音楽的にはすごくヘヴィですけど、あとは聴いてくれた人が判断すればいいかなみたいなところがあって。ただ、僕は育ちがTAIJIと同じで日本のヘヴィメタルからも影響を受けていて、なるべくそっち側に寄り過ぎない音楽をやろうとCloud Nine時代から話してたので、モダンなスタイルをベースに、その中にどうやって2人の個性を入れていくかにこだわっていました。
ーーそんなTSPの楽曲において、HINAさんの存在がひとつ大きな鍵になっていると思って。男性のリードボーカルの中にHINAさんの声が加わると、印象がガラッと変わりますもんね。
HINA:確かに変わりますね。
Shu:他と違う個性を出すには、それしかないかなというのはありました。
ーーそして2015年4月にTHUNDER(Ba)さんが加わり、2016年10月にはSTEVIE(Vo)さんが加わります。
THUNDER:僕の知ってるベーシストがTSPのサポートをやっていて、その人のスケジュールが合わなくなったタイミングに、また別の人から「こういうバンドがベースを募集しているんだけど」と言われて「あ、その人たち知ってます!」と。それがきっかけでした。
ーーサウンド自体はどう感じてましたか?
THUNDER:荒々しくてヘヴィでダーク、だけど一言では言い表せない。例えばメタルとかハードコアとかそういう言葉で括れない難しさがあるというか。興味がそそられたのは、そういう一発でわからない部分があったからですかね。
STEVIE:僕はたまたまTAIJIさんの付き人だった方と仲が良くて、あるバンドがボーカルを探してると聞いて。じゃあ試しにちょっと会ってみて、いい感じだったら面白いんじゃないかということで、一緒にスタジオに入ってみたんです。音を聴いたときに、44MAGNUMとは違うことができそうだなと。どうせやるんだったら同じことをやっても面白くないしっていう、チャレンジですよね。そこで今回のEPに入ってる曲とか、いろいろ生まれたんです。
Shu:最初にSTEVIEを勧められたときは、僕の中でTSPのイメージとは全然違うと思って。でも、それで拒否してしまったら前に進めないし、僕はなんでも試してみたい派なので「とにかく1回スタジオ入ってみない? その前に会って話してみたい」と。僕が知ってる44MAGNUMの歌唱スタイルとうちのバンドはまったく違うところにあるし、とにかくスタジオに入ってみないとわからない。たとえSTEVIEがうちのバンド寄りの声じゃないとしても、しっくりくるものがあるんだったら、うちらがSTEVIE寄りに音を変えていけばいいんじゃないの?と。それで一緒にやることになったんです。