J-METALのDNAを継承、TSPが目指す理想のバンド像「媚びずに自分たちの音楽をアピールしたい」
「X JAPANの在り方ってやっぱり理想的だし一番すごい」(Shu)
ーー皆さんそれぞれ音楽的ルーツはあると思いますが、TSPに関して言えばそれこそTAIJIさんから始まり、44MAGNUMをはじめさまざまな日本のヘヴィメタルやロックの源流をうまく受け継ぎつつ、そこに現代的なエッセンスを加えてオリジナリティを追求した結果、今のスタイルにたどり着いたわけですよね。ではここから先、TSPはどう活動していくのが皆さんにとってベストだと思いますか?
Shu:今言っていただいたことで思い出したんですけど、例えばTAIJIがいたX (JAPAN)がすごいと思うのは、昔からのファンだけじゃなくて最近知った若いリスナーも多いこと。それは理想的だし、一番すごいことだと思うんですよ。バンドと一緒に、ずっとそのままファンも年を取っていくケースも多い中、あれだけ歴史があって若い人たちもみんな知っていて、ライブに行けば昔からのファンも若い人たちもいるのって一番素晴らしいことだなと思って。それってすなわち、自分たちのスタイルを貫いて自分たちのシーンをどんどん大きくしていったからできたことだと思いますし、その努力や苦悩は想像を絶することだったと思うんです。僕らは、ぜんぜん足元にも及ばないですが、そうやってTSPならではのシーンを築いていけたら最高だし、どこにも媚びずに自分たちの音楽をアピールして、ファン層をどんどん広げていくのが理想。もちろんどのバンドもそうでしょうし、一番難しいことなんですけどね。
ーーたまに10代の子がロックを聴かなくなってるなんて話も耳にしますが、と同時に野外フェスには10代の子たちがたくさん集まっていますし。
STEVIE:うん、実感としてはそんなことないですね。若い子も全然聴いてますし。今はラウドロックのシーンが盛り上がってると思うんですけど、そのちょっと前にはヴィジュアル系シーンがすごく盛り上がっていた。で、最近新たに盛り上がり始めているのは、昔もあったけどいわゆるスケーターパンクとかパーティロックみたいなもの。そういういろいろな時代の流れがあるだけで、そこに飛びつく世代は変わってないのかなと思います。きっと今は時代の変わり目で、そこが見えにくくなってるだけなのかも。大人たちがそこを気づいてないだけで、若い子たちはどんどん新しいロックを求めているんじゃないかな。
Shu:僕が中高生のときもそうだったんですけど、ロックとか洋楽が好きな人ってクラスに2人ぐらいしかいないんですよ。その計算でいくと、全国には10万人以上いる計算になるらしくて。
THUNDER:それと最近は、アーティスト自身も自らジャンルを名乗らなくなってきたことで、若い子がロックをロックだとわからずに聴いているんじゃないかなと思います。昔はメタルが好きな人は「これはヘヴィメタルです」というものに手を伸ばしていた。だから「こんなのメタルじゃねえ!」っていう論争もたくさんあったけど、今は関係ないですよね。アイドルにもメタル調の曲はいくらでもあるわけですしね。
「ジャンルというより、人と人とのコミュニケーション」(THUNDER)
ーー思えばジャンルのカテゴライズに一番こだわるのって、日本人なんですよね。海外に行ったときに驚いたのは、Metallicaもブルース・スプリングスティーンも“ロック”の一言で片付けられて、妙に納得したことをよく憶えています。
THUNDER:我々もジャンルがなんだとは名乗ってないですし、それによってちょっとでも受け皿が広くなったらいいなと思ってます。
Shu:Linkin Parkの新しいアルバム(『One More Light』)ってまったくロックのロの字もなくなってるんですけど、iTunesのジャンル名には「Metal」と入っている。海外はその受け皿もより大きいですよね。もしかしたら、それぐらいノンジャンルの時代になってるのかもしれませんね。
THUNDER:ジャンルというより、人と人とのコミュニケーション。実はそういうアナログな感じに戻ってるんじゃないかな。ライブにしても、やっぱり人と人とのコミュニケーションだなと思いますし。
STEVIE:絵画を楽しむ際も、別に写実系とかどうとか知ってる必要はないんですよね。それは音楽も一緒で、ジャンルがなんだろうがカッコ良ければそれでいいっていう。それを知っているべきなのは発信する側であって、受け手はそんなこと気にする必要がない。そういうところじゃないですかね。
Shu:そう言っておきながら44MAGNUMのメンバーだったりTAIJIがいたりとか、思いっきりそっち側のバンドなんですけどね(笑)。
STEVIE:とはいっても、僕も別にジャパメタとか気にしたことはないですからね。ただ自分が面白いからやりたいと思っていることをやってるだけなので。そもそも僕の名前はスティーヴィー・ワンダーが由来で、ブラックミュージックも大好きでずっと聴いてきたし、DJをするときはEDMも流すし。でも、歌うのはロックやメタル。さっきTHUNDERも言ってたけど、ミュージシャン側も自分はこうですと言ってないし、だから受け手もどうだとか気にしてない。昔ほどそういうことをいちいち気にする必要もなくなってきたんだと思います。
ーーそれだけ受けて側に委ねられるようになったということなんですかね。
STEVIE:かもしれない。だって今はリスナー側が発信できる時代ですしね。聴いた人がこれはこうだって、TwitterとかSNSを通じて発信することができる。ミュージシャンが作品を発表したあとは、その作品はもう受け手側のものだっていう感覚が、昔以上に強くなってきましたよね。それこそ曲のデータを使ってオリジナルリミックスを作るリスナーもいますし。自分のレコーディングした音の素材を全部バラバラにして配信して、リミックスを自由に作ってもらう外タレもいるぐらい。それくらい自由にやってもいいんじゃないかと思いますけどね。
ーー受け手側がそれだけ成熟してきたという表れですよね。さて、6月3日からは全国ツアーも始まりました。TSPのお客さんはどういう年代の方、どういう層が中心なんですか?
Shu:やっぱり基本的にはメタルが好きなお客さんが多いです。とはいえ、もっと若い層にもアピールしたいですし、そこでも勝負したいなとは常に思ってるんですけどね。
ーーそれこそ最初の話に戻ってしまいますが、TSPは王道メタルバンドから若い世代のバンドまで、どこに混じっても戦っていけると思いますし、ぜひそういうライブ活動を見せてほしいと思います。
Shu:そうですね。そこで戦っていけるような実力を付けなきゃいけないなと、常に思っているんですけどね。実力はあってどこに出ていっても恥ずかしくないバンドって、やっぱりそれなりにお客さんも付くし売れると思うので、そうなれるようにもっと努力をして頑張らないとなと思ってます。
(取材/文=西廣智一)
■リリース情報
『TRIBAL EVOLUTION』
発売:5月24日(水)
価格:¥1,500+税
<収録曲>
01. 陰陽LIFE
02. Departure
03. beLIEve
04. Killing Bites
■ライブ情報
『『TRIBAL EVOLUTION』発売記念ツアー ”美女と野獣と金髪 2017”』
6月10日(土) 厚木Thunder Snake
6月11日(日) 富士ANIMAL NEST
6月24日(土) 心斎橋paradigm
6月25日(日) 今池3star
7月1日(土) 新宿Zirco Tokyo