マリアンヌ東雲が語る、キノコホテル創業10年の軌跡「どこをどう切ってもキノコホテルでしかない」

文・取材＝もりひでゆき、写真＝石川真魚

「今回はアルバム自体がパロディというかギャグなんです」

ーーリード曲となる「あたしのスナイパー」はスパイ映画を想起させる仕上がりですね。加藤マニさんが監督を務めたミュージックビデオもその世界観に沿った内容になっています。

東雲：この曲はほんとにわかりやすい感じにしたかったんですよね。元々、世界観をイメージしやすい楽曲ではあるので、映像に関しても加藤マニさんに曲を聴いていただいて、そこでのひらめきに委ねた感じです。今までのMVではわりと細かく口出しさせてもらってましたけど、今回は積極的な意味でおまかせしました。そういうことができるようになったのも、私が大人になったからかなと（笑）。またたくスピードで出来上がったMVですけど、非常に狙い通りの内容になりましたね。“007”と“プレイガール”な雰囲気で。

ーーその雰囲気はアルバムタイトルやジャケットのアートワークにも反映されていますね。

東雲：そこにあまり繋がりはなく結果的にそうなった感じではあるんですけど、いい仕上がりになったと思いますね。このわかりやすさ、胞子たちにとってみたら「待ってました」って感じなのかもしれないですわね。ふふふふ。

ーー昭和のEPをイメージさせるジャケットって、意外と今までやってきていないですよね。そこはあえてそうしてきたんですか？

東雲：それはありますよね。「昭和レトロだなんて言わないで」って言いながらも、アートワークがモロにそっちだと矛盾が生じてしまう訳で、だからキノコホテルを一つのジャンルだけで括られたくない、という意識が特に強かった時期はそういう方向性は避けて頂くようにデザイナーさんにお願いしてたところはありました。でも今回はアルバム自体がパロディというかギャグなんですよ、私なりの。本気でおちゃらけてみました、というか。で、それを「あなたたち結局、こういうの好きなのよね？」「待ってたんでしょ？」って堂々と見せてしまうという。そういう気持ちがあるんですよね。

ーー払拭しようとしてきたパブリックイメージに自ら乗っちゃう余裕も今のタイミングだからこそなのかもしれないですね。

東雲：うん。私の心境やバンドのスキル、かかわってくれる人達の協力も含めて、色々なことがタイミングよく合わさったからこそ、今これを出せたんじゃないかなとは思います。

ーーそして本作には未発表曲の「惑星マンドラゴラ」も収録されています。アイドル然としたポップソングでアルバムの幕を閉じるあたり、やはり一筋縄ではいかないバンドだなと思いましたけども。

東雲：ふふふふ。以前から私はアイドルに曲を提供したいってあちこちでわめき散らしてるんですけど、なかなか実現にいたらず。なので、この曲は自分で歌ってはいますけれども、マリアンヌさんがもしアイドルに楽曲を提供したらっていう“もしもシリーズ”“ごっこ遊び”なんです。今のアイドルソングというよりは、80年代……82年組っぽい雰囲気になりましたけど、こういう曲を可愛く歌ってくれるピンのトップアイドルの出現を待望しているのですよ、私はね。

ーーこのサビメロは最強。純粋にめちゃくちゃいい曲ですからね。

東雲：そうでしょ！？。ギャグとして斜に構えて書いてたのに、意外といい曲できちゃったんです。エンジニアさんにもお褒め頂いて。「嬉しいけれど、いやーん恥ずかしい！」なんて感じで柄になく照れましたけど（笑）。『大魔境』を聴いてこの曲に興味を持ってくれたアイドルの方がいらっしゃったら、ぜひキングレコードにお問い合わせくださいませ。

ーー本作リリース後には『サロン・ド・キノコ～飼い慣らされない女たち』と題された実演会が東名阪で開催されます。どんな内容になりそうですか？

東雲：『プレイガール大魔境』を引っ提げてというよりも、10周年の祝賀パーティのような意味合いの強い実演会になると思います。とは言え、このアルバムもいい具合に絡ませていこうといろいろ考えているので楽しみにしていただきたいですね。今年はキノコホテルにとって本当に特別な年なので、沢山の方にお祝いしていただけたら嬉しい限りです。

ーーこの10年の軌跡も体感できそうですかね。

東雲：そうですね。必然的にそういう流れも押さえつつ、今後の可能性もそれとなく提示できるといいですね。

ーーここからの夢を語っちゃったり。

東雲：それはないわね（笑）それとも何？　「みんなでいい景色見ようぜ！」って？　勝手なイメージですけど、最近の若手バンドマン達が判で押したように言ってるわよね。あれ流行ってるのかしら。キノコホテルはこれからも斜に構え続けてマイペースに頑張りますよ。