『ONE OK ROCK 2017 “Ambitions” JAPAN TOUR』レポート
ONE OK ROCK『Ambitions』ツアーに見た、“人間臭いカリスマ”の魅力
そして、これまでのツアーにはなかった試みとして、メンバー全員による長尺のMCコーナーも設けられた。『Ambitions』を機にONE OK ROCKを知ったファンも多いなか、4人のキャラクターを知れる貴重な時間でもある。中盤では約15分間にわたるMCが行なわれた。Toruの髪色をイジったことをきっかけに全員が髪色の話で楽屋トークのような雰囲気を作ったり、Takaが最近ハマっている芸人の話をしたり、Tomoya・Ryota・Toruによる関西弁トークにTakaが茶々を入れるという独特のグルーヴ感も微笑ましい。彼らは今回「距離を近くしたい」というテーマを持ってこのツアーに臨んだようだ。だとすると先述のように全国の都市をくまなく回ったことにも納得がいく。そんなトークのあとは、過去の楽曲ながらCM起用で大きな人気を獲得した「Wherever you are」が、Tomoyaのピアノ演奏を含むアコースティックバージョンで披露された。Taka曰く「結婚式でかけてもらうことも多くなった」というこの曲が、さらにメロディアスなサウンドでパフォーマンスされたことも、バンドの器の大きさを証明する一つの要素だろう。
そんなフレンドリーな雰囲気は、彼らの決意表明ともいえる「I was King」後のMCで一変する。10年が経過したことを「簡単に説明できない年月」としたTakaは、「今回のアルバムを作る前に色々考えました。今までの、これからのONE OK ROCKはなんなのか。ONE OK ROCKはどうあるべきか。昔から知っている人からすれば『海外にかぶれちゃった』と思うかもしれない。このアルバムを聴いて好きになってくれた人もいるだろうし、このアルバムを聴いたことで嫌いになった人もいるかもしれない。そんなことは承知で作ってるし、止まっちゃいけないと思ってる」と、『Ambitions』制作にあたっての葛藤を明かした。そのうえで「ONE OK ROCKは自分たちのキャパを超えて色んな人が知ってくれるバンドになっちゃって、正直自由に発言ができなかったりもする。そういう環境がとても窮屈です。ただ歌が歌いたくて、みんなと同じ空間で幸せに過ごしていたいと思う30歳手前の人間なのに」と、自分もまた一人の繊細な人間であることを覗かせる。
上記の発言のあと、Takaは観客にこう語りかける。
「これからは、1曲1曲に背中を押されるというのではなく、ONE OK ROCKが今の夢を追いかけている姿を見て『自分たちも頑張らなきゃ』と思ってほしい。だから、ONE OK ROCKがいないと生きていけないというのは、ONE OK ROCKのファンとして今後一切やめていただきたいと思います。僕たちはアイドルでもボーイズバンドでもなくロックバンドです。そしてロックバンドにすがって自分から逃げる時代は終わりました。僕たちがこのステージで歌ってさいたまスーパーアリーナを埋め尽くす時代がきたということは、音楽を受け取る側も何かしら変わらなければ行けないと思う」
ONE OK ROCKは、近年まれに見るカリスマ性を持ったバンドだ。それは楽曲にも、ステージングにも顕著に表れている。ただ、どこまでステージが大きくなっても、自分たちのキャパシティを超えても、彼らが元来持つ人間臭さ、人懐っこさは決して消えることはない。このMCの後に披露された「The Beginning」も「Mighty Long Fall」も、18歳のために作った本編最後の「We are」も、一方的に価値観を押し付けるのではなく、観客と一緒に叫び、戦い、鼓舞する楽曲だ。サウンドの質感は変われども、その根本にあるスタンスが揺らぐことはない。
「僕はこれからも正直に生きて行くし、あなたたちのことを心から愛しています。こんな僕らですが、共に戦い、自分たちの夢に向けてしっかり走っていけるように、これからもONE OK ROCKを末永くよろしくお願いします」(Taka)
ONE OK ROCKはこのあとも、先述したワールドツアーやLinkin Parkとのライブを行なうほか、8月には世界的な音楽フェスティバル『Reading and Leeds Festival』にも出演する。Spotifyでの再生数も一億回を超えるなど、2017年は彼らにとってもう一段階ギアを上げる一年といえるだろう。そんななかで、距離感の近さと人間臭さ、そしてカリスマ性を見せつけてくれたこのツアーは、バンドとファンの絆をさらに強固なものとした大事なものとして、この先の大きなポイントになったのではないか。
(文=中村拓海/メイン写真撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER))
■セットリスト
1.Bombs away
2.ONION!
3.Deeper Deeper
4.Taking Off
5.20/20
6.Cry out
7.Clock Strikes
8.Bedrooom Warfare
9.69
10.Always coming back
11.Wherever you are
12.Lister
13.Bon Voyage
14.Start Again
15.I was King
16.Take what you want
17.The Beginning
18.Mighty Long Fall
19.We are
En1.One Way Ticket
En2.完全感覚Dreamer