ONE OK ROCK『Ambitions』は衝撃的な挑戦作だ! 国内外シーンに与える影響を読む

ワンオク新作は衝撃的な“挑戦作”だ

 1月11日にリリースされるONE OK ROCKのニューアルバム『Ambitions』は、日本の音楽シーンのみならず、海外のロックシーンに大きな衝撃を与える1枚になることは間違いない。ご存知のとおり、彼らは2015年にアメリカの<Warner Bros. Records>と契約を結び、2月に国内リリースした7thアルバム『35xxxv』をすべて英語詞で歌い直し、新たに『35xxxv Deluxe Edition』と題して同年9月に北米で発表。昨年にはその<Warner Bros. Records>から<Fueled By Ramen>への移籍を発表し、今回の『Ambitions』は日米同時発売が予定されている。

 洋楽ロックから強い影響を受けバンドをスタートさせたONE OK ROCKは、結成以降国内を中心に活動を続けてきたが、2012年の『"Start Walking The World Tour"』を皮切りに海外でのライブも展開。2014年にはアメリカのサーキット型フェス『Warped Tour』に参加したほか、2016年にかけてはオーストラリア出身の人気バンド、ファイブ・セカンズ・オブ・サマーの北米ツアーに帯同するなど、その活動はどんどんと世界中に拡大している。

 ONE OK ROCKの海外リリースは、先に挙げた『35xxxv Deluxe Edition』まで実現していなかった。にも関わらず、彼らは海外での成功を夢見て精力的なツアーを重ねてきたわけだ。ところが、彼らの音楽はYouTubeなどインターネットを通じて海外の音楽ファンにも少しずつ拡大。Taka(Vo.)の持つ唯一無二の個性的な歌声、そして海外の流行を察知しつつ同時代性を常に持ち合わせた楽曲&サウンドが一部の海外ファンから支持されていったのだ。そこに海外での地道なライブ活動が後押しして、その人気を確かなものにしていったと推測する。

 日本国内では近年、アリーナ規模でのライブが常となっている彼らも、海外では新人。実のところ、これだけ大会場でのライブ経験が多い新人はなかなかいない。そんな百戦錬磨のONE OK ROCKが海外で、国内の何分の1、あるいは10数分の1の規模の会場で本気のライブをしたらどうなるか……答えはおわかりいただけるはずだ。

 バンドの持つポテンシャルがダイレクトに伝わり、その人気を確かなものにしたこのタイミングに放たれるニューアルバム『Ambitions』。1年数カ月前に海外リリースされた『35xxxv Deluxe Edition』とは違った反応が得られることは間違いない。と同時に、このニューアルバムは「それまでのONE OK ROCKからの脱却」も強く感じられる内容なだけに、日本国内でもどういう反応を得られるのかが非常に興味深いところだ。

 「それまでのONE OK ROCKからの脱却」は、少なからず前作『35xxxv』からも断片的に感じ取ることができた。2010年発売の4thアルバム『Nicheシンドローム』以降、エモを軸にした楽曲の強度をより高めていき、2013年の6thアルバム『人生×僕=』あたりからはより海外を意識したサウンドメイキングが目立ちはじめ、そのひとつの完成系が『35xxxv』だったと言っても過言ではない。スピード感のある楽曲と大陸的で大きなノリを持つミドルチューン、そして繊細さを前面に打ち出すバラード。これが『35xxxv』までのONE OK ROCKの魅力であり、個性であったと言える。そして、その中にほんの少しだけ見え隠れした「この先」を示唆するサウンド。それが同作のラストナンバー「Fight the night」だったのではないかと、最新作を聴いてから改めて感じる。とはいえ、「Fight the night」は『Ambitions』で見せたほどの大胆さは感じられず、あくまで『35xxxv』の枠内で最大限の「新しいONE OK ROCK」を見せているにすぎない。

 『35xxxv』から約2年を経て届けられた8枚目のオリジナルアルバム『Ambitions』では、ここ数作で均衡を保っていた3要素のバランスが一気に崩れ去った。アルバムのオープニングを飾ることが多かったスピードナンバーは減退し、ミドルテンポ、もしくはミドルアッパーの楽曲を軸にアルバムは進行するのだ。しかも、サウンドメイキング面でも新たなチャレンジがそこかしこに散りばめられている。各楽曲ではTakaのボーカルが前面に打ち出されているのだが、その歌声を盛り上げるためのサウンド……ここでは「Fight the night」で見せたモダンなエモやR&Bなどの要素がさらにスケールアップ。具体的にいうと、ここ数年のシーンを代表するサウンド……例えばフォール・アウト・ボーイが再始動後に発表したアルバム『セイヴ・ロックンロール −FOBのロックンロール宣言!』『アメリカン・ビューティー/アメリカン・サイコ』、英米で大成功を収めたブリング・ミー・ザ・ホライズンの最新作『ザッツ・ザ・スピリット』、そして昨年全米1位を獲得したパニック!アット・ザ・ディスコのアルバム『DEATH OF A BACHELOR / ある独身男の死』にも匹敵する新たなオリジナリティが確立されつつある。

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