D'ERLANGER再結成から10年、今音楽へと向かう原動力を明かす「ただ魂を焦がすしかない」

D'ERLANGERが明かす、音楽へと向かう原動力

「このアルバムを聴いて何かを取り戻してもらえたら」

ーーヒリヒリ感があるものの、全体的にポジティブな空気に満ちている。すごくぴったりなタイトルだと思いますよ。このアルバムは頭3曲の流れが本当に気持ち良くて、これだけ聴いてまずガッツポーズを取ってしまったほどです。

CIPHER:ありがとうございます(笑)。せっかく取材していただいたのでお教えしますけど、オープニングのイントロダクション(1曲目の「Kilmister=Old NO.7」)があるじゃないですか。このタイトルの意味、なんのこっちゃわかります?

ーー「Kilmister」はMotörheadのレミーのことですよね?(※レミーのフルネームはLemmy Kilmister。)

CIPHER:おお、正解。でも、実はもっと深い意味があるんです。レミー=Old NO.7、Old NO.7とはいわゆるジャック・ダニエルのことなんです。

ーーなるほど! 確かに「Old NO.7」とジャック・ダニエルのラベルに書いてありますよね。

CIPHER: 「J'aime La Vie」に巡りあわせてくれた親友は、レミーが神様なんですね。で、レミーが星になって、あれからアーティストの訃報が続いて……いわゆる献杯を。ずっとジャックを飲み倒している日々の中、曲作りに没頭してて。そこから「ジャック・ダニエルのことを何か別の形でカッコ良く表現できないかな」と考えて、このタイトルを親友と導き出したんです。だから、ジャック・ダニエルを飲んでこのアルバムが生まれたと言っても過言ではないと。そういうのって、ロック好きからしたら楽しいでしょ?

ーー確かに。特に70年代のロックには、そういう隠されたエピソードやキーワードがたくさん散りばめられていましたしね。

CIPHER:そうですよ。酒だの女だの“草”だのヘロインだのですよ(笑)。それを後で意味を知って、ほくそ笑むというね。しかもこれ、44秒なんですよ。マグナム(44MAGNUM)に敬意を表して。

ーーおおっ!(※CIPHERはデビュー前、44MAGNUMのギタリストJIMMYのローディーをしていた時期があり、JIMMYを師と仰いでいる。)

CIPHER:「頼むから44秒にしてくれ!」と(笑)。そういうつまらないこだわりの積み重ねなんですよ。ロックって、そういうところまで楽しんだほうが絶対に面白いですし。

ーーここまで話を聞いていて、鳥肌が立ちました(笑)。ちょっと視点を変えますけど、ギタリストとしては今作とどのように向き合いましたか?

CIPHER:ギタリストねぇ……まいったなぁ(苦笑)。本作にはプロデューサーもいなければ、録音のときにサウンドプロデューサーもいないので、自分でセッティングしてやっているんですけど、気づいたらこうなっていたんですよ。自分で「こういうトーンが欲しい。この曲では絶対にギターがこのトーンで鳴ってなきゃあかんねん」っていう。だから、技術面よりもサウンドメイキングにこだわった1枚ですね。

ーーそれぞれの曲を最良の形で表現するためのこだわりってことですよね。

CIPHER:そう。トーンが変わったら曲の雰囲気がガラリと変わりますしね。

ーーその調整具合が絶妙だと思います。本作でもうひとつ気になるのが、通常盤のみラストに追加収録された「Loveanymore -J'aime La Vie version-」。インディーズ時代から演奏してきた「Loveanymore」の新バージョンですよね。

CIPHER:これはなんてことないですけどね(笑)。去年のクリスマスイブに毎年恒例のファンクラブライブをやったんですけど、そのアンコールでアコースティックというか、ちょっとしっぽりしたスタイルで「Loveanymore」をやったんです。そのときのフィーリングやトーンがすごく心に残っていたので、「あれを音に残そうよ」と。イブのライブでも都(啓一。SOPHIA、Rayflowerなどで活躍するキーボーディスト)がピアノを弾いていたので、レコーディングでも素敵なピアノソロを弾いてもらいました。あのピアノソロは最高ですよ。

ーー原曲とは違ったバラードアレンジで、同じ激情感でもタイプが違った表現だなと思いました。この「Loveanymore」で終わる構成もまた新鮮ですね。

CIPHER:アルバムラストというポジションですけど、本当はこのアルバムは「沈む」でピリオドなので。あくまでも、最後にちょっと……焼肉屋に行って「最後にアイスでもどうですか?」みたいなおもてなし感ですかね(笑)。

ーー改めて、80年代に誕生したD'ERLANGERが2017年現在も健在で、しかもこんなにも濃厚な作品を届けてくれた事実はすごいことだなと思うんです。

CIPHER:けど俺らは間にぽっかり、16年ほど空いてますから。俺らの上には各メンバーが、そしてバンドとしても可愛がっていただいているBUCK-TICK大先輩がいらっしゃるので。BUCK-TICKを前にしたら俺らぐうの音も出ないし、小僧感が半端ないですからね。あれだけ途切れずあの位置に君臨していらっしゃると、減らず口が何ひとつ出てこないです(笑)。だからこそ、俺たちはただただ魂を焦がすしかないんです。今回、群馬・高崎のスタジオでレコーディングしたんですけど、そこもTetsu(Dr)がBUCK-TICKのアニイ(ヤガミトール)さんとの付き合いから紹介していただいて。俺らの世代では群馬といえばBOØWYとBUCK-TICKという二大巨頭がいて、みんな大好きでしたし今でもリスペクトしている。そういう思いは、このアルバムにもいろんな形でオマージュが散りばめられているんですよ。

ーーそういうリスペクトが込められていると。そういう意味では、このアルバムは学生時代にD'ERLANGERを聴いていた人はもちろんのこと、BOØWYやBUCK-TICKが好きだったけど最近ロックを聴いてないという世代にも触れてほしいですね。

CIPHER:そうですね。このアルバムを聴いて何かを取り戻してもらえたらなと。そして、ちゃんと数字として結果を残せたら最高ですね。本当に売れてほしい(笑)。これは言霊ですからね。売れますよ。群馬のスタジオでもらった達磨にも目玉を入れないと。

(取材・文=西廣智一)

■リリース情報
『J’aime La Vie』(読み:ジェムラヴィ)
2017年5月3日(水・祝)発売

初回限定盤デラックス・エディション(CD+DVD):24Pフォト・ブックレット付き三方背BOX仕様
¥4,630(本体)+税

通常盤
¥3,000(本体)+税

<収録内容>
Ⅰ Kilmister=Old NO.7
Ⅱ Harlem Queen Complex
Ⅲ Harlem Queen Romance
Ⅳ LOVE is GHOST
Ⅴ バライロノセカイ-Le monde de la rose-    
Ⅵ Je t'aime
Ⅶ Vanilla
Ⅷ Mona Lisa
Ⅸ Everlasting Rose
Ⅹ 沈む
XI Loveanymore -J'aime La Vie version- ※通常盤のみ収録

<DVD収録内容>
『after the elapse of 10years...History of 2007~2016』ライブ映像10曲
・dummy blue(2007.12.24 SHIBUYA-AX)
・Sensual Dance(2008.12.24 SHIBUYA-AX)
・Angelic Poetry(2009.12.24 SHIBUYA-AX)
・ALONE(2010.12.24 SHIBUYA-AX)
・Singe et Insecte(2011.12.24 SHIBUYA-AX)
・MARIA(2012.12.24 SHIBUYA-AX)
・Beast in Me(2013.12.24 SHIBUYA-AX)
・Dance naked,
Under the moonlight.(2014.12.24 CLUB CITTA’)
・CRAZY4YOU(2015.12.24 TSUTAYA O-EAST)
・LA VIE EN ROSE(2016.12.24 TSUTAYA O-EAST)

『PHOTO SHOOTING 2017』D'ERLANGER最新フォト・セッション映像

■ライブ情報
『J’aime La Vie TOUR 2017』
2017年5月6日(土)岡山IMAGE
2017年5月7日(日) 岡山IMAGE
2017年5月13日(土)福岡DRUM Be-1
2017年5月14日(日)福岡DRUM Be-1
2017年5月20日(土)金沢EIGHT HALL
2017年5月21日(日)金沢EIGHT HALL
2017年5月27日(土)梅田クラブクアトロ
2017年5月28日(日)梅田クラブクアトロ
2017年6月3日(土)長野CLUB JUNK BOX
2017年6月4日(日)長野CLUB JUNK BOX
2017年6月10日(土)仙台darwin
2017年6月11日(日)仙台darwin
2017年6月17日(土)名古屋クラブクアトロ
2017年6月18日(日)名古屋クラブクアトロ
2017年6月24日(土)札幌cube garden
2017年6月25日(日)札幌cube garden
2017年6月30日(金)TSUTAYA O-EAST
2017年7月1日(土)TSUTAYA O-EAST

オフィシャルサイト
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ワーナーミュージック・ジャパンオフィシャルページ

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