D'ERLANGER再結成から10年、今音楽へと向かう原動力を明かす「ただ魂を焦がすしかない」

D'ERLANGERが明かす、音楽へと向かう原動力

 D'ERLANGERが、5月3日に8枚目のアルバム『J'aime La Vie』をリリースする。

 1983年に結成、1990年1月にメジャーデビューするも同年の11月に解散。それからおよそ16年の月日を挟み、2007年3月にアルバム『LAZZARO』を発表、4月22日に東京・日比谷野外大音楽堂でのライブ『薔薇色の視界』で復活を果たしたD'ERLANGER。今年、再結成から10年が経つことになるが、その間にもコンスタントに作品を発表し、ライブも精力的に行ってきた。

 今回、リアルサウンドでは曲作りの中枢を担うギタリスト、CIPHERにインタビューを行った。前述の復活ライブやそれ以降の作品、そして今作『J'aime La Vie』のテーマや各曲の中に隠された“オマージュ”について、じっくりと語ってもらった。(編集部)

「10年前の野音が終わったあとは負けた気満々で」

ーーD'ERLANGERは今年の4月22日で日比谷野音での復活ライブから10年が経ちました。もう10年経ったんだという現実に驚くと同時に、この10年本当にコンスタントに活動してきたという事実にも驚かされます。CIPHERさん自身、10年前の時点でここまで途切れずに活動を続けることを考えていましたか?

CIPHER:まず復活をするときは野音のことしか考えてなかったので、野音の次すらも考えてなくて。ただ『LAZZARO』(2007年3月リリースの、復活第1弾アルバム)を作って、それを持って野音のステージで復活するということだけで生きてましたね。でも僕は、野音が終わったあとは負けた気満々で。不満というか、やりきれてない感や悔しさしかなかったです。終わった瞬間は美酒に酔いしれましたけど、あとから自分にガックリという。それはすごく覚えてます。だから次があったんでしょうね。

ーーその“ガックリ”は、自身の中での基準値に達しなかったから?

CIPHER:なんて言うんでしょうね。僕、ギターをガキの頃からやってきて、いつからか事務所で面倒を見てもらうようになりました。それをプロと呼ぶのか、そういうフィールドでいろいろ切磋琢磨しながら何十年も過ごしてきて。それで新たに事務所も立ち上げました。それまではどこかに所属させていただいて、「ギタリストだけでいさせてくれよ」っていう感じだったと思うんですよ、僕のミュージシャンとしての日々は。でも、それじゃあもう無理だなということと直面したのが、D'ERLANGERを再びやろうと踏み出したときだったんです。知恵を授けてくれる方々、バックアップしてくれる方々がいて、そこで学ばせてもらっていたから歩んでいけたのに、急に右も左もわからなくなって。だから余計に野音が終わったあとにダメだったんでしょうね、これでは全然どうしようもなんないなっていう。悩むことと悔しさしかなくて、それに巻きつかれてましたね。

ーーでも、D'ERLANGERはそこからコンスタントにリリースとツアーを重ねていく。この10年でオリジナルアルバム6枚とリテイクアルバム1枚を発表しているんですよ。10年で7枚って、バンドとしてはとても勤勉だなという印象がありますが。

CIPHER:それは周りが出せと言うので(笑)。僕は5年出さなくてもいいと思ってるけど、シリアスな話をすると5年も出さないと食っていけない。だからケツを叩かれながらやってるところもあるのかな。本当は外タレみたいに、アルバムを1枚出したらツアーを2回も3回も行ったらええと思うんですけど、この国ではなかなかそうは問屋が卸さず。でもまぁ、あんまり世間のタイム感は気にしてないですけどね。

ーーそういう感覚なんですね。

CIPHER:そんなもんね、曲なんて簡単に書けませんよ(笑)。これまで何十曲と書いてきましたし、いわゆる方法論はわかってるけど、「俺はこの曲を書くために生まれてきたんちゃうか?」みたいな腹積もりで、身を刻む思いでひとつの曲を産み落としているんです。

ーーそうやって作ってきた楽曲やアルバムからは、毎回やりきった感や充足感は得ていたんでしょうか?

CIPHER:『LAZZARO』で復活して、次の『the price of being a rose is loneliness』(2008年4月発売)を俺、完全に「これでダメなら辞めてやる」ぐらいの気持ちで作ったんですよ。なのに、周りからは「ちょっとマニアックすぎる」とか言われて(苦笑)。もちろん自分の好きにやってますし、周りを気にして曲を作ったことはありませんから、そういう意味では……アルバムごとにやりきった感というのはそんなにないですよね。ないというか……やりきったというと、そこで行き止まりな感じがあるでしょ? それよりは、標高はわからないですけど山をひとつ越えた感じが近いかな。

ーーもちろんそこが最終的なゴールではないですしね。

CIPHER:ですね。だから、ときどき現れる山や壁、これを越えていかなあかんと。どこか回り道をしたって平坦な道が見つかるわけではない、これはもう正面突破いかなあかんねんなって感じですよ。

ーー僕、『LAZZARO』を最初に聴いたときに、復活したD'ERLANGERは当時の日本の音楽シーンよりも、海外の音楽シーンに近い音だなと思ったんです。

CIPHER:あの時期ってどんな音楽が流行ってましたっけ?

ーーMy Chemical Romanceみたいにゴシック調のエモというか、そういったバンドがアメリカでウケていた頃ですね。もちろんあのシーンを意識していたとは思いませんけど、そことの同時代性がすごく感じられて興味深いなと思った記憶があります。

CIPHER:そのへんは俺、全然通ってないし、好きじゃないですから。バンド名ぐらいはわかる程度。日本のV系なんかも全然気にかけてなかった。

ーーで、『LAZZARO』以降どんどん深化していき、ワーナーミュージック・ジャパン移籍第1弾の『#Sixx』(2013年5月発売)以降の作品はどんどん濃くなっている。特に『#Sixx』から今回の最新作『J'aime La Vie』までの3枚に共通しているのが、すごくコンパクトな作風ということなんですよね。

CIPHER:ああ、そうですか(笑)。そうなんですよ。今回は特にでしょ?

ーーはい。通常盤に追加された1曲(「Loveanymore -J'aime La Vie version-」)を除くと、トータル32分程度ですから。

CIPHER:例えばパンクバンドなんてそんなもんでしょ。長ければいいってもんでもないし、「えっ、もう終わり?」と思ったらもう一回聴いてくれたらいいんですよ。

ーーどの曲も2分台から4分台までで、アレンジも非常にタイトですし。

CIPHER:そういう長いのは以前やったので、今はもうええかなと。女を口説くのもそうでしょ? 四の五の言って口説くより、サーっといったほうがシンプルでいいかなって(笑)。また時間が流れれば何を思うのかはわからないですけど、ここ最近は確かにそういうベクトルですね。

ーーそれは今の音楽シーンをそこまで意識していないのもあるんですか?

CIPHER:意識してないですし、意識に入ってきた時点ですべてがムカつくんですよ。ほんま何なの? って。でもね、これでちゃんと数字で結果を叩き出したり、どえらいホールを埋めたりしないことには説得力がないし、ただの負け犬の遠吠えになってしまう。あんまり言うと炎上しますけど、大いに燃えてやろうと(笑)。正直、いまだに怒りというものが原動力のひとつですから。僕は49になりましたけど、それがまだふつふつとあって、自分やD'ERLANGERに向くんですよ。

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