Base Ball Bearは“2周目の青春”で新フェーズへ! 『光源』のサウンドと詩世界の変化を読む

ベボベは“2周目の青春”で新たなフェーズへ

 こうして見てきたように、Base Ball Bearというバンドは、今、間違いなく「2周目」を迎えている。正確に言うならば「やり直しの2周目」だ。

 メジャーデビューアルバム『C』に対比させたタイトルが象徴しているように、前作アルバム『C2』も「2周目」を強く意識させる作品だった。ただし、それは歌詞のロジックや言葉のイメージ喚起力を介して「バンドがこれから2周目に入っていく」ということを、ある種の作家的な表現として伝える作品でもあった。

 しかし、『光源』の「やり直しの2周目」は原理が違う。『C2』の先に進むはずだった「2周目」のストーリーは、湯浅将平の脱退によってすでに途切れている。4人でずっとバンドを続けてきたという絆は失われた。否応なしに「別のレールの上の2周目」を歩まざるを得なくなったわけだ。

 それを象徴するのが2曲目「逆バタフライ・エフェクト」の歌詞だ。

また あの日あの時ああしてたらって
ifや畏怖が尽きなくても
あの日あの時ああしてたことが鳴り響いて
決められたパラレルワールドへ

まだ あの日あの時ああしてたらって
祈り呪いが尽きなくても
いま、この時こうしてること「も」鳴り響いて
決められたパラレルワールドへ
決められた並行世界へ

 この歌詞にある通り、曲のテーマは「並行世界」だ。かつての何気ない選択肢、「あの時ああしてたら」を思い浮かべることで、無数のパラレルワールドが現れる。

 そういう「並行世界」をテーマにした楽曲という意味では、先日に当サイトで記したとおり、小沢健二「流動体について」やcero「ロープウェー」とリンクする曲であるとも言える。(参考:小沢健二からギリシャラブまで……“言葉の魔法”でつながるアート・ポップ6選

 新作『光源』のテーマは「青春」なのだという。たとえば「すべては君のせいで」の歌詞にはこんなフレーズがある。

自転車通学の
ヘルメットありの
君が橋の向こうからやってくる
一生、着かないと
一生、すれ違わないと
わかってた僕の頬を撫でてく光のリボン

 小出祐介という作家にとって「青春」はずっと執着の対象だった。バンド初期からずっとそれをモチーフにした楽曲を作り続けてきた。ただ、『光源』で描かれる青春は、単なるノスタルジーや思春期の慕情だけでなく、どことなく「すでに失われてしまった」ものを眩しく描写するような手つきが見られる。たとえば「SHINE」にしてもそうだ。

青春は3,2,1 ブレイクダウン ほら、閉じていく
人生の可能性が無限の代わりに
君がゆらゆら 時と踊る
姿を見た 気のせいだった

 様々な曲に「すでに閉じてしまった可能性の分岐」のモチーフがうっすらと影を落としている。それは、いわば「リスタートのリスタート」を経てきたバンドの今と結びつくものでもあるはずだ。

 サウンド面においても、詩世界においても、新体制の「身体性」が鮮やかに昇華している。そういうところに、新作『光源』の面白さがあると言えるだろう。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

「すべては君のせいで」short ver. + アルバム『光源』ティザー映像
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Base Ball Bear『光源』

■リリース情報
7th Full Album 『光源』
発売:2017年4月12日(水)
価格:初回生産限定盤CD+DVD¥3,500+税(税込¥3,780)
通常盤CDのみ¥2,778+税(税込¥3,000)

1. すべては君のせいで
2. 逆バタフライ・エフェクト
3. Low way
4. (LIKE A)TRANSFER GIRL
5. 寛解
6. SHINE
7. リアリティーズ
8. Darling
全8曲収録

<初回生産限定盤DVD収録内容>
”COUNTDOWN JAPAN 16/17” at GALAXY STAGE 2016.12.31
& Tour「バンドBのすべて 2016-2017」ドキュメント

<Base Ball Bearモバイルサイト『ベボ部』予約受付>
『ベボ部』会員でアルバム『光源』を予約すると、オリジナル特典(特典内容:近日発表)をプレゼント。
詳しくは『ベボ部』(スマホ)にて
※申し込みには『ベボ部』への会員登録(月額300円+税)が必要

GYAO!「すべては君のせいで」Full ver.

■ライブ情報
Base Ball Bear Tour『光源』
<2017年>
6月11日(日)静岡県 浜松窓枠
開場16:30/開演17:00

6月13日(火)三重県 四日市Club Chaos
開場18:30/開演19:00

6月15日(木)京都府 京都磔磔
開場18:00/開演18:30

6月17日(土)石川県 金沢AZ
開場16:30/開演17:00

6月25日(日)宮城県 仙台Rensa
開場16:15/開演17:00

Base Ball Bear Tour『日比谷ノンフィクションⅥ~光源~』
9月30日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂
開場17:00/開演18:00

Base Ball Bear Tour『光源』
10月6日(金)北海道 旭川CASINO DRIVE
開場18:30/開演19:00

10月7日(土)北海道 札幌PENNY LANE 24
開場16:30/開演17:00

10月9日(祝・月)北海道 函館club COCOA
開場16:30/開演17:00

10月14日(土)青森県 青森Quarter
開場16:30/開演17:00

10月15日(日)岩手県 盛岡CLUB CHANGE WAVE
開場16:30/開演17:00

10月21日(土)山口県 LIVE rise SHUNAN
開場16:30/開演17:00

10月22日(日)広島県 広島CAVE-BE
開場16:30/開演17:00

10月27日(金)千葉県 千葉LOOK
開場18:30/開演19:00

10月28日(土)茨城県 水戸LIGHT HOUSE
開場16:30/開演17:00

11月3日(祝・金)山梨県 甲府CONVICTION
開場16:30/開演17:00

11月23日(祝・木)鳥取県 米子AZTiC laughs
開場16:30/開演17:00

11月25日(土)岡山県 岡山IMAGE
開場16:30/開演17:00

12月2日(土)群馬県 高崎club FLEEZ
開場16:30/開演17:00

12月3日(日)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
開場16:30/開演17:00

12月9日(土)新潟県 新潟LOTS
開場16:30/開演17:00

12月10日(日)長野県 松本Sound Hall a.C
開場16:30/開演17:00

12月16日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
開場16:30/開演17:00

12月17日(日)神奈川県 横浜BAY HALL
開場16:00/開演17:00

12月23日(祝・土)香川県 高松MONSTER
開場16:30/開演17:00

12月24日(日)高知県 高知X-pt.
開場16:30/開演17:00

<2018年>
1月6日(土)大阪府 なんばHatch
開場16:00/開演17:00

1月14日(日)愛知県 名古屋DIAMOND HALL
開場16:00/開演17:00

1月20日(土)宮崎県 宮崎SR-BOX
開場16:30/開演17:00

1月21日(日)福岡県 福岡DRUM LOGOS
開場16:00/開演17:00

料金:9月30日(土)日比谷公演 指定¥4,700(税込/D無し)
その他全公演 スタンディング ¥4,500(税込/1D代別)

チケット一般発売日
6月11日(日)浜松~6月25日(日)仙台 5月13日(土)AM10:00~
9月30日(土)日比谷 7月29日(土)AM10:00~
10月6日(金)旭川~11月25日(土)岡山 9月2日(土)AM10:00~
12月2日(土)高崎~1月21日(日)福岡 10月14日(土)AM10:00~

※全公演サポートギター:弓木英梨乃(KIRINJI)
※3歳以上チケット必要

Base Ball Bearオフィシャルサイト

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