SuG Best Album『MIXTAPE』インタビュー
SuG、ベスト盤から振り返る10年の歩み「SuGというアートフォームの中でなら何でもあり」
今年、結成10周年という大きな節目を迎えるSuGが、その活動の軌跡を網羅したベストアルバム『MIXTAPE』を3月8日にリリースする。メンバー自ら選曲した全18曲が、まるでライブを意識したような絶妙な曲順で並べられた本作は、単に時系列で並べられたシングル集とは一線を画す、こだわりの1枚となっている。それにしても、こうして改めて聴くと、彼らのポップセンスやアレンジ能力の高さ、並外れた演奏能力が、10年前から終始一貫していることに驚かされる。彼らのストイックなまでの「美学」に、ようやく世間が気付き始めたということだろうか。
今回はアニバーサリー企画ということで、1曲ずつコメントをもらいながら当時を振り返ってもらった。メンバーたちの和気藹々とした雰囲気が伝われば幸いだ。(黒田隆憲)
「MISSING」は過酷なMV撮影の1位
ーー今回、SuGのデビュー10周年記念となるベストアルバム『MIXTAPE』がリリースされます。ここに収録された18曲はどのように選びましたか?
武瑠(Vo):選ぶのは本当に大変だったんですけど、通常盤に関しては、自分たちにとっての「ベスト・オブ・セットリスト」みたいな。なので、単に時系列で楽曲を並べていくのではなく。ライブのような流れを意識した曲順にしましたね。
ーーせっかくなので、今回は1曲ずつコメントをもらいたいのですが、まずはSuGのメジャーデビュー・シングル曲「gr8 story」(2010年1月27日)でアルバムは幕を開けます。
yuji(Gt):この曲は、アニメ『家庭教師ヒットマンREBORN!』(テレビ東京系)のエンディングテーマに起用されたんですけど、実際にテレビで流れた時にはメチャメチャ感激しました。
shinpei(Dr):あれは感動したね。
yuji:この頃が一番、希望に満ちていたかもしれない(笑)。てか、めちゃめちゃ忙しかった。毎日、このポニーキャニオンの会議室に来て、早朝から夜遅くまで取材や撮影をやってました。
masato(Gt):3日くらい通ってたよね。他にもラジオ局へ行ったり、レコード店を回ったり。
ーー「R. P. G.〜Rockin' Playing Game」(2010年9月1日)は、メジャー3枚目のシングル曲ですね。
Chiyu(Ba):アニメ『FAIRY TAIL』(テレビ東京系)のオープニングテーマに選ばれた曲です。ジャケットのアートワーク用ということで、原作者の真島ヒロ先生に、SuGのイラストを描き下ろしていただいたんですよ。あれはすごく嬉しかったですね。俺、めっちゃ足長く描いてくださってて(笑)。てか、レコーディングや制作のことってほとんど覚えていなくて、こういう楽曲にまつわる記憶が真っ先に蘇りますね。
shinpei:基本的にレコーディングって、毎回同じスタジオでやっているからね。なかなか記憶に残りづらい。シングルとかリリースされても、「あれ? これっていつレコーディングしたっけ?」って思うことが多いです。
yuji:特にシングル曲は、「これはシングルになりそう」という曲を、一日二日かけて一気にまとめてレコーディングしていた時期もあったんですよね。確かこの曲も、まとめて録ったデモのうちの一つだったと思う。それを聴いてみて、「『FAIRY TAIL』の世界観に合いそう」ということで選ばれた記憶が。
ーーじゃあ、楽曲を書くペースもこの頃は凄まじいものがあったんじゃないですか?
Chiyu:すごかったです。レコーディングして取材してリリースしてツアー、みたいな(笑)。それを延々と繰り返す日々でしたね。しかも、そうやって新曲がどんどん増えていくのにライブの本数が少なくて。「やらない曲が増えるのは、もったいないな」と思ってました。シングルのカップリング曲とか、一度も日の目を見ぬまま埋もれてたりするよね(笑)。1回だけライブでやって、それっきりとか。「一体、何のために作って録音してるんだろう」って思ったこともあった。
yuji:そのうち、「だったらもう、ライブでの再現とか一切考えずに作ろう」という話になったこともあったね。
ーーライブを想定しない曲作りも、それはそれで楽しかったりするんじゃないですか?
武瑠:メチャクチャ楽しかったですね。
ーーメジャー8枚目のシングル曲「不完全 Beautyfool Days」(2012年2月1日)はどうでしょう。
shinpei:MV撮影の時、Chiyuくん熱出さなかったっけ?
Chiyu:そんな気がする。撮影が進むにつれてどんどん熱が上がっていって、家に帰った時には39度くらい出してた。
shinpei:あと、yujiさんがギターのストラップが外れて床に落として、ギターが壊れて「もう帰る!」って言ってたのも覚えてる。
(一同笑)
Chiyu:MVの撮影のことも結構、印象に残っているよね。この曲は確か多摩川で撮影だったんだけど、待ち時間に『さや侍』(松本人志監督作:2011年公開)を、DVDで最後まで観たのを覚えてる。
shinpei:マジで? 全然覚えてない!
武瑠:MV撮影の待ち時間に観るなら、今は『ウォーキング・デッド』だよね(笑)。
ーー「MISSING」(2014年2月19日)は、活動休止を経ての復活第一弾シングル表題曲です。
masato:これこそMVの印象が強いですね。監督は二階健さんだったんですけど、撮影現場が群馬県高崎市の山の中で。寒い上にすごく長かった。朝8時に入って、実際の撮影は夕方から始まり、終わったのが翌日の昼12時くらいだったかな。
Chiyu:朝方が確か氷点下1度くらいだったんですよ。そんな中、衣装は上がTシャツ1枚。タンクトップのメンバーもいたよね。その格好で、廃車の中に1時間くらい座ってたんです。もうずーっとガタガタ震えてましたね。それでも「よーいスタート」の合図で、みんなちゃんと演技して。
武瑠:メンバーを廃車の中に残したまま、スタッフ全員車の中に避難してたよね。それでも文句言う余裕もなく....「このまま凍死もあり得るな」と思いました(笑)。しかも、それで体が完全に冷え切ったまま、帰宅したらガスが止まっててお湯が出なかった。その時に初めて「結婚願望」が芽生えました。「だれかが待つ、あったかい家に帰りたい...…」って。
shinpei:(笑)。間違いなく「過酷なMV撮影」の1位だったよね、あれは。
Chiyu:活休明け一発目の撮影がこれってすごいなと思うけど、活休明けで「よっしゃ、頑張るぞ!」っていう風に気合が入ってたから何とか乗り越えたのかもしれない。あの撮影が活休前だったら、「もう二度とSuGなんてやるか!」ってなってたよ。
(一同笑)