“振り付け”がロックに与える影響とは? フレデリック、KEYTALKらバンドの楽曲から分析
昨年、星野源がドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の主題歌として手掛けた「恋」が、MIKIKO氏による振り付けとエンディングに流れる新垣結衣らキャストのダンス映像によって話題になり、子どもから大人まで多くの人が“恋ダンス”として親しみを持って踊る、2016年の大ヒットソングになった。
近年、幅広い世代から親しまれたヒット曲には、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R .Y. U .S .E. I」やAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」などのような“踊る”という要素を持った楽曲が多い。全世界で話題になったピコ太郎の「PPAP」も然り、振り付けがある楽曲が、より広く世間に浸透している印象がある。
そして、この振り付けがある楽曲の流行は、ロックシーンにも見られる傾向だ。
楽曲の振り付けが話題を呼んだバンドの代表格ともいえる、フレデリック。彼らの「オドループ」のMVでは、美女2人が無表情で独特なポーズやダンスを披露している。フレデリックの楽曲とそのシュールな映像のコントラストに惹きつけられたリスナーが多く、彼らの代表曲として愛されている1曲だ。シンプルな振り付けは子どもも真似しやすく、フェス会場ではたくさんの人が踊りを楽しむ光景をよく目にする。
フレデリックが「オドループ」を発表したのは、2014年9月にリリースしたメジャーデビューミニアルバム『oddloop』。それから2年後、同曲は2016年10月から公開しているユニクロのweb CMに起用された。CMは、バンドメンバーとMVに出演していたアリスムカイデ、うちだゆうほなどが出演し、MVと同じ振り付けを披露するシーンで構成されている。キャスティングを担当したユニクロは、「フレデリックの自然でセンスが良く、一度聴けば、『誰もが口ずさむ』『体が自然に動き出す』クセになる独特な音楽性が、『みんながフリースを着て外で遊ぶ』テーマソングにぴったりだとラブコールを送って実現しました」と公開時にコメントを寄せていた。
「オドループ」が、若者をはじめ幅広い層をターゲットにしたCMに抜擢されるほどの影響力を持つ楽曲に成長したのは、“振り付け”を通して彼らの音楽の魅力を伝えることができたからだろう。音楽と振り付けが親しまれていくことで、リリースから日が経った今、“馴染みのある曲”へと育っていったのだ。
また、インディーズ時代から振り付けがある楽曲を数多く発表してきたのがKEYTALKだ。「a picture book」(2011年11月・2ndミニアルバム『SUGAR TITLE』収録)や「MABOROSHI SUMMER」(2012年5月・ミニアルバム『KTEP2』収録)は、メンバーが振り付けをレクチャーする動画を公開しており、ライブではファンが楽しそうにその振り付けを踊る姿を見ることができる。メジャーデビュー以降は、「MONSTER DANCE」や「Love me」など、MVで振り付けを確認できるものができて、より彼らのライブで踊るという楽しさが広まっていった。
キュウソネコカミは、ライブやフェス会場で演奏する前に簡単な振り付け講座を行うことがある。彼らは、どの楽曲にもオリジナルの“ノリ方”を提案し、仮装などの一芸も欠かさない。「DQNになりたい、40代で死にたい」「ビビった」「GALAXY」「mega shake it」などの変わった振り付けで、自らの音楽の最大限の楽しみ方を伝えている。