中森明菜がカバー曲で聴かせる“名演” 最新作『Belie』を栗本斉が聴く

 加えて、後半のバラード楽曲ではまた違うイメージを作り上げているのも面白い。薬師丸ひろ子の「ステキな恋の忘れ方」は得意のマイナー歌謡として完璧な仕上がりだし、山崎まさよしの「One more time, One more chance」におけるせつなさと深みは、本家を上回るほど。そして、ラストを飾る小田和正の名曲「たしかなこと」では、これまでにないほど慈しみに溢れた優しい明菜の歌が聴ける。いずれもカバーとはいえ、まるでオリジナルのように歌いこなしているのはさすがだ。

 今さら中森明菜の歌の上手さや表現力の凄さを語るのは野暮ではあるが、『Belie』を聴くと改めて彼女の実力に圧倒されてしまう。そして、これまで多数のカバー・アルバムを発表してきたが、そのなかでも屈指の出来栄え。もはや原曲と聴き比べすることがバカバカしいほどに、中森明菜にしか生み出せない作品となっている。もし、彼女に少しでもなんらかの先入観を持っている人がいたら、ぜひ気持ちを新たに聴いていただきたいアルバムだ。

■栗本 斉
旅&音楽ライターとして活躍するかたわら、選曲家やDJ、ビルボードライブのブッキング・プランナーとしても活躍。著書に『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)、共著に『Light Mellow 和モノ Special -more 160 item-』(ラトルズ)がある。

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