太田省一『ジャニーズとテレビ史』第二十七回:2016年番組に見るジャニーズの傾向
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この「ジャニーズ陸上部」もそうだが、今年はグループの枠を超えたジャニーズ同士の関係性に多く光が当たった年でもあった。
各局で定番化してきた夏や年末の大型音楽特番でのジャニーズメドレーにもそうした面があるだろう。普段はなかなかテレビで見ることのないグループの垣根を超えたコラボやシャッフルが毎回趣向を変えて企画され、ファンや視聴者にとって恒例の楽しみになった。
コラボと言えば、12月16日放送の『堂本兄弟もうすぐクリスマスSP』(フジテレビ系)でKinKi KidsがHey! Say! JUMP・山田涼介と「愛のかたまり」を歌ったシーンも印象的だった。同曲は堂本剛が作詞、堂本光一が作曲した二人の合作による楽曲としても知られているが、山田涼介がソロデビューシングルのカップリング曲としてカバーしたという縁もあった。
さらに同番組のトークパートでは、「事務所で一番面倒くさい先輩」などのお題で3人の口からエピソードが語られ、盛り上がった。こうした光景も、「ジャニーさん」話も含めていまやおなじみと言っていい。だが、そうした笑い話的エピソードに加え、過去の出来事や転機についてそのときのリアルな心境を本人が告白するようなものが増えてきたのが、今年目についた新たな傾向でもある。
『櫻井・有吉THE夜会』(TBS系)で、櫻井翔が滝沢秀明や岡田准一と繰り広げた対話などはその好例だろう。たとえば櫻井翔と滝沢秀明は、ともにジャニーズJr.だった時代に抱いていた互いへの複雑な思いなどを率直に語り合っていた。バラエティの枠のなかでの企画だが、そこにはこれまでの“ジャニーズ話”にはあまりなかったようなドキュメンタリー性が感じ取れる。あるいはNEWSの小山慶一郎がMCを務める『チカラウタ』(日本テレビ系)に出演したジャニーズアイドルが話す過去の苦悩などにも似た面があるだろう。
それはもしかすると、ジャニーズのバラエティ進出も年月を重ね、ジャニーズをめぐる新しい物語が世間から求められ始めているということなのかもしれない。ジャニーズについてのエピソードトークを耳にする機会も増え、ジャニーズについての知識もかなり世間に共有されるようになった。そうしたなかで、もう一段深くジャニーズのことを知りたいという欲求が視聴者のなかに芽生えつつあるのではなかろうか。
こうして見てくると、今年は個々のグループや個々人の活躍もさることながら、「ジャニーズ」という存在がさまざまなかたちでクローズアップされた年だったことに気づかされる。言い方を換えれば、2016年は「ジャニーズとはなにか?」ということを改めて考えてみたくなる、そんな年であった。
■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。